公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

出張手当はつきますか?(3)

「でも、この世界にも冒険者ギルドみたいなのがあるんですね……」
「この世界?」

 私の言葉に、反応したレイルさんに私は両手を振りながら「なんでもないです!」と答えた。
 私が別の世界。
 つまり地球から来たことが分かったら大問題になってしまう。
 まぁ、問題になったら、最悪、話し合い(物理)でなんとかすればいいけど……。

「レイルさん、冒険者ギルドというのは、派遣会社じゃなくて――登録した冒険者が依頼を受けて仕事をして報酬をもらう国家間を超えた超法規的組織でいいんですか?」
「お前は何を言っているんだ? 国家間を超えた組織が兵隊を持っていたらいつでも侵略戦争の火付け役になりかねないだろ?」
「……」

 まぁたしかに、国家間を超えた組織が兵隊を持っていたら大問題ですよね……。
 でも私の知ってる小説などでは、そういう超法規的組織が存在したりするわけで……、たしかに今、考えると、少しおかしいかな? と思わなくもないわけで……。

「そうすると、冒険者ギルドはどこがスポンサーになって運用しているんですか?」
「スポンサー?」
「えーと、出資者みたいな……」
「そりゃ国に決まっているだろう?」
「国というのは海洋国家ルグニカがメインで! ということですか?」
「まぁ、海洋国家ルグニカの王都も絡んでいるが基本の自治は、各州の総督府に任されているからな」
「……なるほど……」

 そう考えてしまうと、ますます分からない。
 どうして、スメラギの総督府と仲が非常に悪い私宛に手紙が届くのか。

「えーと、古代遺跡から出現する魔物を沈めてほしいと書かれていますね」
「ふむ……」

 レイルさんが私の言葉を聞いて羽ペンを置き考えこんでしまう。
 あの……「レイルさんの仕事が止まると、私にも仕事が回ってくるのでさっさとしてほしいんですけど……」とは言えない私は小さく溜息をつく。
 そして目の前に詰まれている書類にハンコを押していく。

 もう中身を見なくもいいんじゃないかな? と思うくらい書類が積み重なっている。
 それでも何かあったら困るので書類を確認しながらハンコを押していく。

「もしかしたらエルノの南に存在するダンジョンから魔物が出てきていることを言っているのかもしれないな」
「――! ダンジョン!? ダンジョンなんてあるんですか?」
「――ん? あるが……珍しいこ――そういえば、リースノット王国にはダンジョンは無かったんだよな?」
「はい! ダンジョンと言えば探求の華ですよね? ドラゴンとか経験地がたくさんもらえるスライムとか、逃げ足が速いスライムとか、宝石をたくさんもっている袋の魔物とか出てきたりするんですよね?」
「ドラゴンは聞いたことはあるが……普通の人間だと、そこに行く前に死ぬぞ?」
「なるほど……」

 私は何度も頷く。
 これは、転生してきた手前、ぜひダンジョンとやらにいくのもいいかもしれないです。
 もしかしたら、性転換するような薬が手に入って、元の男の姿になれるかもしれないし……。
 そんな薬があればだけど……。

「ダメだぞ? お前は、この町の最大の防衛力であり抑止力なんだからな? ミトンの町から出るのを許可できないぞ? それにお前が居なくなってスメラギの兵士が攻めてきたら、子ども達だって――」
「――ッ! 分かっています……」

 ……そうでした。
 今の私は、この町の防衛の要であり経済の要でもあって、もし戦いが起こるようなことになれば相手を倒してでも、住んでいる人を守らないといけない。
 それが、商工会議の長たる私の役目であり役割……あれ? なんだか……王様とやってることが変わらないような……。

「はぁ……」
「どうしたんだ?」
「いえ、ちょっと……」

 男の人と結婚するのが嫌だから、国や貴族籍まで捨てて他国に来たというのに。
 やっていることが貴族や王族と何も変わらないことに、私は溜息をつくことしかできなかった。

 でも、私はすでにミトンの町の1万人近い住民の生活と安全を守る義務もあるし、ここから離れた村に住んでいるティアも、ミトンの町を安定させておかないと被害が及びかねない。
 それに……。
 私が面倒を見ていた子ども達だって、洋服や、きちんとした食事に寝床も用意してあげたいし、将来、立派になるために勉学が出来る場所も整えたい。

「なんだが――知らないうちに、たくさん守る物が増えたと実感してしまったんです」
「そうだな……」

 レイルさんは私の言葉に同意してくれたけど、これがリースノット王国全域だったら、どうなんだろう? と私は考えられずには居られない。

 もし、私がグルガード王の立場なら、自分の国を守るために優秀な魔法師が欲しいなら、私を王子の后にして、外交を上手く取りまとめられるように計ったかもしれない。
 ううん、間違いなくしてたと思う。
 そう考えると……。

 リースノット王国グルガード国王陛下が、私を王子の妻にと考えたのも納得できてしまう。
 それと同時に、私は自分が育てられた国を捨てたということは、自分自身を産んでくれた両親や育んでくれた国に対して不義理を働いてしまったのではないのかと考えずにはいられなかった。






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