公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

暗躍する海賊の末裔(17)

「話をするか――」

 私の言葉を反芻するように、レイルさんは顎に手を当てながら天井に視線を向けたあと、私を見て。

「まぁ……いいか……わかった。俺の方で面会時間の調整を取っておくがいいか?」
「はい。なるべく……そうですね、早めに時間調整を取っていただけますか?」
「ん? 商談なのだろう? 会うのに早めというのは足元を見られるのではないのか?」
「それは――」

 私は、レイルさんの問いかけに口ごもる。
 おそらくだけど――。
 きっと、間違いなく奴隷商人は陸路で商品を持ってきている。
 商品は言わずともれず人であり奴隷。

 ミトンの町では、奴隷関係については殆ど触れられていなかったこともあり、今回の貴族との決闘ごときで奴隷商人が来るとは予想していなかったこともあり、どう対処したらいいか分からないけど――。

 シュトロハイム公爵家で、アプリコット先生から教えてもらった奴隷の扱いが本当なら、時間が過ぎれば過ぎるほど、彼らの扱いは酷くなると思って間違いはない。
 ただ、この国では、それが普通でありきっと言っても理解してもらえない。

「――それは、商人同士の取引というのは迅速が一番ですから」
「……そうか……」

 レイルさんは、少しだけ肩を落として頷いてきた。
 どうやら、私の答えが気にいらないようではあったけど、それは仕方ない。
 私の感覚は、あくまでも日本人としての感覚であって、この世界の感覚とはずれている。
 そして、私はそれを自覚してるし生来の育てられた考えというのは、どうしても変えることは出来ない。

「それじゃ俺は、話をしてくるから」

 それだけ言うと、私が返事する間もなく、彼は部屋から出ていった。



 ミトンの町――その総督府。
 立地的には、東西南北から伸びてくる道の交差路に建物が建てられている。
 その建物は、近くの岩場から切り出された石を組み合わせて作られている。
 そんな建物の一室。
 総督府の代官が執務室を利用していた部屋の中で、私は椅子に座りながら、テーブルに頬を当てながらだらけていた。

「はぁー……」
「おい! 仕事をしないと書類が増えていくぞ?」

 レイルさんの言葉に、私は机に手を置きながら立ちあがる。
 もう、決裁書にサインをたくさん書いてたことで、肉体的には問題ないけど……。

「もう! いっぱいいっぱいです! エメラスさんは何をしているんですか!?」
「お前が2日間、書類を回して、呆けていたから倒れて寝ている」
「……おかしいですね……」

 ボソッと言いながら私は椅子に座って羽ペンを持ち書類に名前を書いていく。
 そして考える。
 どうして、女神さま宣言したら、書類が増えるのかレイルさんに小一時間、突っ込みを入れたいところですけど……もう2日間徹夜してることもあって、とっても眠い――。

「とても、眠いです。もう寝たいです」

 このままだと間違いなく死んじゃう。
 元気が出るような飲み物とかないですか?
 ないですよね?

「それよりも奴隷商人から明日には、話をしたいと連絡があったがどうする?」
「え!? 明日ですか? 思っていたよりも……行動が遅いですね」
「そうだな……おそらくだが……」
「何かしら根回しをしたという可能性もあるということですか……」
「ああ。……で、どうする?」
「どうすると言われても、こちらが許可を出した以上、一度話合いの場を持つしかないでしょうね」


 

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