公爵令嬢は結婚したくない!
暗躍する海賊の末裔(12)
レイルさんの言葉が、響き渡った東門に臨時的に作られた決闘場。
耳が痛くなるほど静かになった場所で――。
「――ど、どどど、どうしましょう? 何か、すごくジッと見られているような気がします!」
八百長だ! とか、こんなのは決闘じゃない! とか言われて暴動に発展したら、治める方法なんて思いつかない。
そもそも、今はミトンの町の人口が倍くらいに膨れ上がっていて治安が維持できてるだけで奇跡のような物なのに、それが崩壊したら目を当てられなくなってしまう。
もっと事前に、どうやって勝てばいいか考えておくべきでした!
「お、おお、落ち着け! 何かあれば、魔法で黙らせれば大丈夫だ!」
「レイルさんも、実は予定外だったり?」
「当たり前だ! こんな風な決闘の決着方法が予想できるわけがないだろ? いや、ユウティーシアだから、こんな非常識な勝ち方の可能性もあったか……くっ! 事前に注意されていたのに! 俺のミスだ!」
「ええ? 誰に注意されていたんですか?」
私の言葉にハッ! としたような表情を向けてきたレイルさんだったけど、彼は一瞬、躊躇したあと。
「なんでもない、それよりも! 今は! この状況をどうにかする方が先決だろう?」
「そうですけど……どうしましょうか?」
「考えもつかない……」
どうやら、レイルさんもどうすればいいのか判断がつかない模様。
すると、誰か一人が拍手を始めた。
それが次から次へと伝播していき――。
「さすがは、小麦の女神様だ!」
「首を刺されて無傷なんて! 神様だ!」
「ミトンの町に女神様が光臨なされた!」
……などなど、声が聞こえてきた。
「レイルさん、これって……?」
私は辺りから響き渡る拍手と私を女神様! と称える声に驚きながらもレイルさんのほうを見ると彼は一瞬、思案した表情を見せたあと――。
「どうやら、非常識な勝ち方をしたことで、お前を神様か何かと思ってしまったようだな」
「ええー……」
それは、とっても困るんですけど! 私は至って普通の生活を送ろうとして考えていただけなのに……。
神様扱いなんてされたら、スローライフが遅れなくなるじゃないですか!
「そ、それは困ります……」
「どうしてだ? 神様扱いされれば頼ってくる人間も増えるし、スメラギの領主も簡単には手を出せなくなるだろう?」
「――で、でも……」
「それに、仕事をしなくても済むぞ?」
「――!?」
仕事をしなくていい? つまりニートで引きこもりでいい? つまり……。
「皆さん!」
私は声を張り上げる。
もちろん周囲に集まっている衆人観衆に向けて視線を向ける。
「私は、皆さんの生活を良くするために遣わされた女神です! 私の眷属である妖精と共に皆様の生活を少しでも豊かにすることを誓いましょう!」
私の言葉に「おおおおー」という大歓声が聞こえてくる。
ふっ、これで女神認定というか女神みたいな事を言っておけば、大量な書類に没頭することも無くなりますし、いい事尽くめですね!
それに女神様ってことにしておけば、女神は古来より結婚もしなくていい! みたいなところが……。
「それはないですね」
私は、一人ごとを呟きながら、北欧新話では、たしか女神でも結婚していたはず。
まあ、それでも! この世界では違うかもしれないし!
とにかく、書類地獄から抜け出せれば、なんちゃて女神様くらいの振りはしても良いかもしれない。
「ブツブツと何を言ってるのか聞こえないが、お前――本当にいいのか? そんなことをしたらって……もう遅いが、自分が神様だと言うってことは……」
「え?」
何やらレイルさんの声色が沈んでるように感じられるのですが、私、何かしちゃいましたか? 何かしちゃてますか?
「よく理解してないようだから言っておくが、お前自身が自分の事を女神だと言うなら、それは、ローレンシア大陸全土に影響を持つ一神教であるリメイラール教会に喧嘩を売ったことになるんだぞ?」
「ええ? 本当ですか? リメイラール教会って……」
「ああ、全ての国に影響力を持つ組織だな」
あ、ああ……。
なんということでしょう。
一時の私の仕事はしたくないでござる! という考えで大変なことに……。
――-私は、違う意味で力尽きて、その場にガクッと膝をついた。
耳が痛くなるほど静かになった場所で――。
「――ど、どどど、どうしましょう? 何か、すごくジッと見られているような気がします!」
八百長だ! とか、こんなのは決闘じゃない! とか言われて暴動に発展したら、治める方法なんて思いつかない。
そもそも、今はミトンの町の人口が倍くらいに膨れ上がっていて治安が維持できてるだけで奇跡のような物なのに、それが崩壊したら目を当てられなくなってしまう。
もっと事前に、どうやって勝てばいいか考えておくべきでした!
「お、おお、落ち着け! 何かあれば、魔法で黙らせれば大丈夫だ!」
「レイルさんも、実は予定外だったり?」
「当たり前だ! こんな風な決闘の決着方法が予想できるわけがないだろ? いや、ユウティーシアだから、こんな非常識な勝ち方の可能性もあったか……くっ! 事前に注意されていたのに! 俺のミスだ!」
「ええ? 誰に注意されていたんですか?」
私の言葉にハッ! としたような表情を向けてきたレイルさんだったけど、彼は一瞬、躊躇したあと。
「なんでもない、それよりも! 今は! この状況をどうにかする方が先決だろう?」
「そうですけど……どうしましょうか?」
「考えもつかない……」
どうやら、レイルさんもどうすればいいのか判断がつかない模様。
すると、誰か一人が拍手を始めた。
それが次から次へと伝播していき――。
「さすがは、小麦の女神様だ!」
「首を刺されて無傷なんて! 神様だ!」
「ミトンの町に女神様が光臨なされた!」
……などなど、声が聞こえてきた。
「レイルさん、これって……?」
私は辺りから響き渡る拍手と私を女神様! と称える声に驚きながらもレイルさんのほうを見ると彼は一瞬、思案した表情を見せたあと――。
「どうやら、非常識な勝ち方をしたことで、お前を神様か何かと思ってしまったようだな」
「ええー……」
それは、とっても困るんですけど! 私は至って普通の生活を送ろうとして考えていただけなのに……。
神様扱いなんてされたら、スローライフが遅れなくなるじゃないですか!
「そ、それは困ります……」
「どうしてだ? 神様扱いされれば頼ってくる人間も増えるし、スメラギの領主も簡単には手を出せなくなるだろう?」
「――で、でも……」
「それに、仕事をしなくても済むぞ?」
「――!?」
仕事をしなくていい? つまりニートで引きこもりでいい? つまり……。
「皆さん!」
私は声を張り上げる。
もちろん周囲に集まっている衆人観衆に向けて視線を向ける。
「私は、皆さんの生活を良くするために遣わされた女神です! 私の眷属である妖精と共に皆様の生活を少しでも豊かにすることを誓いましょう!」
私の言葉に「おおおおー」という大歓声が聞こえてくる。
ふっ、これで女神認定というか女神みたいな事を言っておけば、大量な書類に没頭することも無くなりますし、いい事尽くめですね!
それに女神様ってことにしておけば、女神は古来より結婚もしなくていい! みたいなところが……。
「それはないですね」
私は、一人ごとを呟きながら、北欧新話では、たしか女神でも結婚していたはず。
まあ、それでも! この世界では違うかもしれないし!
とにかく、書類地獄から抜け出せれば、なんちゃて女神様くらいの振りはしても良いかもしれない。
「ブツブツと何を言ってるのか聞こえないが、お前――本当にいいのか? そんなことをしたらって……もう遅いが、自分が神様だと言うってことは……」
「え?」
何やらレイルさんの声色が沈んでるように感じられるのですが、私、何かしちゃいましたか? 何かしちゃてますか?
「よく理解してないようだから言っておくが、お前自身が自分の事を女神だと言うなら、それは、ローレンシア大陸全土に影響を持つ一神教であるリメイラール教会に喧嘩を売ったことになるんだぞ?」
「ええ? 本当ですか? リメイラール教会って……」
「ああ、全ての国に影響力を持つ組織だな」
あ、ああ……。
なんということでしょう。
一時の私の仕事はしたくないでござる! という考えで大変なことに……。
――-私は、違う意味で力尽きて、その場にガクッと膝をついた。
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