公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

暗躍する海賊の末裔(5)

 兵士の方に案内されミトンの町の東門に案内された時と同じくして相手方の兵士姿を見ることができた。

「かなりの大部隊だな」

 レイルさんの言葉に私は「そうですね」と相槌を打ちながら正面を見て確認していく。
 もちろん、まだ距離があることもあり、身体強化の魔法を発動しながら確認するという念を入れた手法は忘れずに利用している。
 この体のスペックは身長が150センチほどで、細身だけど出るところは出ている。
 そして、たぶん、きっと世の中の平均とも言える女性的な体型をしていると私は思っている。
 なので、普通の人よりも筋肉が無かったりする。
 ただ、そこは膨大な魔力に物を言わせて身体強化の魔法を発動させることで、成人男性顔負けの筋力を発揮するに至っていたりするのだ。

 だいたい、ざっと見た限り鎧を着てる方が200人ほどで、9割の兵士が槍を手に持っている。

「海賊が建国した国家とは思えないほど、しっかりとした武装をしていますね」
「お前は、いつの話をしているんだ? 海洋国家ルグニカが建国したのは200年ほど前の事だぞ?」
「そういえば、そうですね……」

 たしかアプリコット先生が、そんなことを言っていた気がする。
 ただ、隣国の歴史背景までは考えていなかったし、自国の経済を立て直すのに精一杯でそこまで頭が回らないこともあり、きちんと覚えていなかったり……。

「それで、どうするんだ? この町の兵士数は、そんなに多くないぞ?」
「そうですね……。とりあえず、例の作戦を取りますか?」
「……」

 レイルさんが、私が立てた作戦という言葉に、大きな溜息をついてたけど、どうして呆れた態度を取ったのか分かりませんね。

「さあ、きなさい! ブラウニー!」

 私は指をパチンと景気よく鳴らそうとして親指と中指に力を入れる。
 そして、もろに「パスッ」と言う音と共に不発した。

「…………」 
「ナンデスカー、ご主人さま!」

 不発といえど、ブラウニーさんはきちんとその姿を現してくれたけど、格好よく決めようとした手前、なんだが、とっても微妙なナイーブな感じを……。

「よく来てくれました!」
「あい!」

 ブラウニーさんが、敬礼するような仕草で直立し答えてくる。
 もう、こうなったら失敗したことは忘れて勢いで捲くし立てるしかありません!

「ティア、お前、今……」
「なんですか? 何か問題でも?」

 レイルさんが、含み笑いをしながら私に話しかけてくるけど、そんなことはスルーです。

「いや、お前、指をならそ……いや、なんでもない……」

 しつこく聞こうとしてきたレイルさんの首筋に、氷の魔法で作り出した細長い槍――アイスランスを向けながら、いまは無駄な会話をしてる場合ではないと! きちんと! 手順を踏んで! 注意をした。
 もちろんレイルさんは、両手を挙げて頷いてくれた。
 まったく、仕事中に余計な会話は職務怠慢と言わざるえない。
 さて、レイルさんも納得してくれたことですし、話を進めるとしましょう。

「ブラウニーさん、例の作戦決行をお願いします」
「わかったでち!」

 私の命令にブラウニーさんは答えると、空間転移でその場から姿を消した。
 さて、ブラウニーさんが行動に移す前にこちらも対処をさせてもらうとしましょう。

「門を開けてください!」

 作戦を知らない方々は、「ええー……?」と、一様に驚いた声を上げてくる。
 まぁ、私が、前に戦ってた場面を知らない兵士の方は、疑問に抱くこともあると思う。
 まさか、女性が一人で200人以上もの兵士の前に姿を見せるなんて! と――。

「大丈夫だ、開けてやれ」
「わ、わかりました」

 レイルさんの命令により町の両開き東門が少しずつ開いていき、一人が通れるくらいまでの隙間が出来たところで私は扉から町の外へと出る。

「食料とか物資を運んでいる兵士の方とかいないのかな?」

 私は独り言を呟きながら身体強化魔法で強化された視力で、相手方の兵装と、特に食料を運んでいると思われる部隊を確認するために近づく。
 すると――。

「そこで止まれ! 貴様が、スメラギの総督府の許しを受けずにミトンを不当に占領しているというユウティーシア・フォン・シュトロハイムで間違いないか!?」

 声がした方へと視線を向けると、そこには肌色成分が多い女性用の騎士甲冑を見につけた緑色の髪に瞳をした女性が馬に乗っていた。

「はい、えっと……」
「私は、エメラス・ド・ルグニカだ! 他国への不法入国並びに、他国の町占領と……」

 エメラスさんは、私を見ながら眉を上げて次々と罪状を述べてくる、
 まるで私が悪いことをしてるような言い方。

「いまです!」

 私の命令と共に、周辺の地面を支えていた支柱が妖精さんたちの手により空間転移され巨大な落とし穴が出来上がる。
 そして、その中に私ごと兵士が全員落ちた。
 泥水の中に落ちたことで、白いワンピースが泥水を吸って大変なことになって――。

 おかしい。
 私の計画は完璧だったはずなのに……。
 どうして、私が立っている地面まで陥没するのか。

 仕事をした妖精さんには後できちんと言う必要がぶくぶく……。



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