公爵令嬢は結婚したくない!
暗躍する海賊の末裔(6)
「けほっ、けほっ。泥水が口の中に入ってじゃりじゃりする……」
ミトンの町を襲ってきた兵士さん達は、私が妖精さんに命じた方法により無力化され、ミトンの外壁外に縄で縛られている。
私は、その兵士さんたちを見ながら溜息をつく。
まさか、私ごと妖精さんが穴の中に落とすなんて想像もできなかった。
さっき、妖精さんもといブラウニーさんに、どうして私ごと穴に落としたのか聞いたところ、特に指示されなかったからと言い訳をしてきた。
まるで新人社員が、何も聞かずに問題を起こして言い訳をしてきたような。
つい、「仕事がきちんとできない子には、報酬はあげられないですね?」と、言ったらレイルさんにとても怒られた。
私が、採掘範囲をキチンと指定、指示しなかったのが悪いと――。
察する気持ちを持って対応してくれれば、というより、分からなかったらきちんと聞いてくればいいのに……。
そんな風に思ったけど、言うと怒られそうだったから約束の白色魔宝石の粉をブラウニーさんに渡しておいた。
「それにしても――」
私は縄で縛られている遠征してきた兵士の皆さんを見る。
彼らは私を見ると、すぐに頬を赤く染めて目を逸らしたり、逆に私を凝視してきたりと千差万別の対応を取っている。
「こっちは終わったぞ? そっちは――って!? お前、何て格好をしているんだ!」
レイルさんが私の格好を見るなり、怒鳴り声を上げてきた。
はて? 生活魔法で水を作りだし頭からかぶって泥水を洗い流したあと、口を漱いでるだけで何も問題ある行動を取った覚えはないんですけど……。
レイルさんの言葉に私は、「何て格好?」と呟きながら自分自身の服装を確認する。
泥水に落ちたときについていた泥や、泥水を吸って茶色く染まっていた布地が元の白い色合いに戻っていて、肌に張り付いていた。
もちろん、ミトンの町には下着が売っているようなところはないわけで……。
気がつけばレイルさんの頬を引っ叩いていた。
「ティア、お前な……」
商工会議の一室で私は椅子に座りながら、目の前でソファーに座っているレイルさんをチラッと見る。
良く見ると、私に引っ叩かれた頬が赤く紅葉色に染まっているのが見て取れる。
「すいません……」
私は、すぐに謝る。
彼を引っ叩いたのは勢いというか、何と言うか気がついたら条件反射的という感じで考えるよりも先に手が出ていた。
まるで、反応が本当の女性のようで――。
溜息しかでない。
普段、女性よりの話し方で考えているのは、あくまでも頭の中で男性よりの思考をしていたらつい男口調で言葉に出てしまうから。
だから、小さい頃に直したのに……。
それが、思考回路まで女性寄りになっている原因としたら、ゾッとしない。
あくまでも私の前世は、中年サラリーマンだったのだから。
「もういい。ああいうときはマントでも塗れた体を隠すべきだったからな」
「……本当にすいません」
別にレイルさんが悪いわけではない。
私の不注意で起きたことであって、彼は忠告してくれたに過ぎない。
なのに、手が出てしまうなんて……。
「もういい。それより攻めてきた連中はどうするんだ? 攻めてきた人間の数は200人。そのうちの7割が奴隷らしいからな。残り3割のうちも2割が傭兵だろ? あとの一割が仕官らしいが……」
「そうですね……」
私はレイルさんの言葉に頷きながらも、着ている藍色のチュニックと白いスカートをチラッと見てからレイルさんのほうへと視線を向ける。
「透けてないから大丈夫だぞ?」
「――!? そういう意味で確認したわけではありません!」
信じられない。
私が気にしていたことに突っ込みを入れてくるなんて。
もっとデリカシーを持って発言してほしい。
「ならいいけどな」
「……レイルさんは最低です!」
「最低で結構だ。それよりも、どうするんだ?」
どうするのか? と聞かれても困る。
本当は、中世の戦争のように、貴族出身の仕官を捕まえたら身代金をもらって開放する予定であった。
それが、仕官の人間も一般人で身代金を払えそうなのがスメラギ総督府の娘であるエメラスしかいないという。
これでは当初の計画が大幅に狂ってしまう。
さらには、防具や武器類も自前ではなく貸付らしく無くしたら借金になるらしく、まだ仕官なら一般人でもお金はありそうだし、傭兵なら多少の蓄えはありそう。
問題は、200人の7割にあたる140人が奴隷という点で……。
彼らが装備していた武器や防具が無くなった場合、彼らの借金に加算されるらしく苦境に晒されてしまうみたいで……。
「どうしましょうか? もっと、こう簡単にサクッと稼げるような感じだと思っていたんですけど……」
なまじ地球の常識を持っているばかりに、どうしたらいいのか今一、判断がつかない。
装備とお金だけもらってさよなら! とかすると飢え死にが出そうだし。
「とりあえず……敵将と話をするのが先決ですね」
私は深く溜息をつきながらレイルさんの問いかけに答えた。
ミトンの町を襲ってきた兵士さん達は、私が妖精さんに命じた方法により無力化され、ミトンの外壁外に縄で縛られている。
私は、その兵士さんたちを見ながら溜息をつく。
まさか、私ごと妖精さんが穴の中に落とすなんて想像もできなかった。
さっき、妖精さんもといブラウニーさんに、どうして私ごと穴に落としたのか聞いたところ、特に指示されなかったからと言い訳をしてきた。
まるで新人社員が、何も聞かずに問題を起こして言い訳をしてきたような。
つい、「仕事がきちんとできない子には、報酬はあげられないですね?」と、言ったらレイルさんにとても怒られた。
私が、採掘範囲をキチンと指定、指示しなかったのが悪いと――。
察する気持ちを持って対応してくれれば、というより、分からなかったらきちんと聞いてくればいいのに……。
そんな風に思ったけど、言うと怒られそうだったから約束の白色魔宝石の粉をブラウニーさんに渡しておいた。
「それにしても――」
私は縄で縛られている遠征してきた兵士の皆さんを見る。
彼らは私を見ると、すぐに頬を赤く染めて目を逸らしたり、逆に私を凝視してきたりと千差万別の対応を取っている。
「こっちは終わったぞ? そっちは――って!? お前、何て格好をしているんだ!」
レイルさんが私の格好を見るなり、怒鳴り声を上げてきた。
はて? 生活魔法で水を作りだし頭からかぶって泥水を洗い流したあと、口を漱いでるだけで何も問題ある行動を取った覚えはないんですけど……。
レイルさんの言葉に私は、「何て格好?」と呟きながら自分自身の服装を確認する。
泥水に落ちたときについていた泥や、泥水を吸って茶色く染まっていた布地が元の白い色合いに戻っていて、肌に張り付いていた。
もちろん、ミトンの町には下着が売っているようなところはないわけで……。
気がつけばレイルさんの頬を引っ叩いていた。
「ティア、お前な……」
商工会議の一室で私は椅子に座りながら、目の前でソファーに座っているレイルさんをチラッと見る。
良く見ると、私に引っ叩かれた頬が赤く紅葉色に染まっているのが見て取れる。
「すいません……」
私は、すぐに謝る。
彼を引っ叩いたのは勢いというか、何と言うか気がついたら条件反射的という感じで考えるよりも先に手が出ていた。
まるで、反応が本当の女性のようで――。
溜息しかでない。
普段、女性よりの話し方で考えているのは、あくまでも頭の中で男性よりの思考をしていたらつい男口調で言葉に出てしまうから。
だから、小さい頃に直したのに……。
それが、思考回路まで女性寄りになっている原因としたら、ゾッとしない。
あくまでも私の前世は、中年サラリーマンだったのだから。
「もういい。ああいうときはマントでも塗れた体を隠すべきだったからな」
「……本当にすいません」
別にレイルさんが悪いわけではない。
私の不注意で起きたことであって、彼は忠告してくれたに過ぎない。
なのに、手が出てしまうなんて……。
「もういい。それより攻めてきた連中はどうするんだ? 攻めてきた人間の数は200人。そのうちの7割が奴隷らしいからな。残り3割のうちも2割が傭兵だろ? あとの一割が仕官らしいが……」
「そうですね……」
私はレイルさんの言葉に頷きながらも、着ている藍色のチュニックと白いスカートをチラッと見てからレイルさんのほうへと視線を向ける。
「透けてないから大丈夫だぞ?」
「――!? そういう意味で確認したわけではありません!」
信じられない。
私が気にしていたことに突っ込みを入れてくるなんて。
もっとデリカシーを持って発言してほしい。
「ならいいけどな」
「……レイルさんは最低です!」
「最低で結構だ。それよりも、どうするんだ?」
どうするのか? と聞かれても困る。
本当は、中世の戦争のように、貴族出身の仕官を捕まえたら身代金をもらって開放する予定であった。
それが、仕官の人間も一般人で身代金を払えそうなのがスメラギ総督府の娘であるエメラスしかいないという。
これでは当初の計画が大幅に狂ってしまう。
さらには、防具や武器類も自前ではなく貸付らしく無くしたら借金になるらしく、まだ仕官なら一般人でもお金はありそうだし、傭兵なら多少の蓄えはありそう。
問題は、200人の7割にあたる140人が奴隷という点で……。
彼らが装備していた武器や防具が無くなった場合、彼らの借金に加算されるらしく苦境に晒されてしまうみたいで……。
「どうしましょうか? もっと、こう簡単にサクッと稼げるような感じだと思っていたんですけど……」
なまじ地球の常識を持っているばかりに、どうしたらいいのか今一、判断がつかない。
装備とお金だけもらってさよなら! とかすると飢え死にが出そうだし。
「とりあえず……敵将と話をするのが先決ですね」
私は深く溜息をつきながらレイルさんの問いかけに答えた。
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