公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

暗躍する海賊の末裔(7)

 敵将であるエメラス・フォン・ルグニカという王女様。
 その王女様は、現在、私が住んでいる建物に軟禁していた。
 レイルさん曰く、どうせ孤児院に通ってないのだから暇だろうという事らしいけど……正直、物流関係の書類などに目を通すこともあるし、インフラや町の周辺で塩害でも育ちそうな食料なども考えると、暇なんてまったくない。

 それに、レイルさんが「同じ女性同士なら話もしやすいし、打ち解けることも出来るだろう」と言っていたけど……。

 正直、私が一般の女性と同じ感性を持っているとしたら、それは大きな間違いであるといわざるえない。

「はぁー……。気が重いです」
「気が重くてもお前がやる仕事だろ? それに……」
「レイルさんに言われなくても分かっています。相手は一応、衛星都市スメラギを中心に、ここら辺りを治める領主の娘で、海洋国家ルグニカの王女ですものね。特産物や使えそうな鉱物資源に、商隊のルート、そして奴隷制の詳細確認も出来るかもしれません。それによっては、今の現状を少しでも改善できるかも知れませんからね」
「そうだな」

 私の言葉にレイルさんは短く頷いてくるのを溜息交じりに確認すると、私は階段を折り始める。
 階段は、建物の屋上まで木材で作られていて体重を乗せると軋む音が周囲に鳴り響く。
 何度か、木が軋む音が辺りに響き渡ったあと、エメラス・フォン・ルグニカを軟禁している階へと辿り着いた。

「それじゃ、俺は、ここに居るから何かあったら大声で叫ぶなりしてくれ」
「え? レイルさんは着いてこないんですか?」
「俺が着いていったら、お前が行く意味がないだろう?」
「そうですか」

 レイルさんの言葉に小さく頷きながら答えたあと、応接室であった部屋の前へと向かって扉の前に立つと数度ノックをする。

「エメラスさん。少しお話をしたいんですけど……」
「その声は、ユウティーシアですか!?」
「はい。そうですけど……」
「貴女みたいに! 貴族の口上途中で攻撃を仕掛けてくるような! 恥知らずと話す言葉なんてありません!」
「…………」

 どうやら、エメラスさんは前回、私の罪状をツラツラと言っていたときに、私が攻撃を仕掛けたことを恨んでいるようで――。

 私の話をまったく聞いてくれない。 

 大変困ってしまう。
 このままでは、無駄に時間だけが過ぎてしまう。
 まだ、余裕がある程度あるとは言え200人分の人間を追加で食べさせるほどの余力はミトンにはない。
 なるべく、さっさと身代金だけ払って帰ってほしい。
 あと武器や鎧も置いていってほしい。
 貴金属は、農業器具とか馬車とか、いろいろなインフラに使えるから。
 そのためには、ある程度は有益な情報がほしかったりする。

 扉越しに文句を言ってくるエメラス王女を無視しながら扉を開けて中に入る。
 部屋の中は荒れてはいなかったけど……。

 一目でエメラス王女の機嫌が悪いのは分かった。
 だって、私の事を睨み付けてきているから。

 私は、エメラス王女の睨みという目力をスルーしながら近くの椅子に腰を下ろす。

「あの……口上途中で攻撃されたって言われても……そもそも、そちらから軍を連れてきたわけですから、いきなり攻撃されても仕方ないと思うのですけど……」

 私の正論に、「なんですって!」と、叫びながらエメラス王女が椅子から立ち上がった。
 もちろん額には青筋とか出来たりしていて、とっても怒っているのがわかってしまう。

「あなたには貴族としての……世界1古い国家と言われていたリースノット王国の王家に連なる矜持と言うものはありませんの? 貴族なら前口上を大事にするくらい常識ですのに!」
「え? 海洋国家ルグニカってたしか……元、海賊だったような……」
「な、なにを……」
「何をと言われても、だって……元海賊ですよね? 元海賊の子孫の方に貴族の流儀がどうのこうのと言われても、ピンとこないですよね?」
「な、な、な――」
「大体ですね、たいしたお金も持たずに食料も持たずに200人の兵士だけで遠征してくるとか本当にやめてほしいんですよね! おかげで、戦いに勝っても持ち出しの方が多くなるかも知れないんですよ? もっと、きちんとしていただかないと!」
「あなた! ルグニカ王家を馬鹿にしていますの!?」
「えっと……」

 どうしたのかな?
 私、何か間違ったこと言ったかな?
 うーん。
 考えても間違ったことを言ってないよね?

「――馬鹿にはしていませんけど……」
「してませんけど?」
「もう少し、戦いには覚悟を持って望んで欲しかったなって!」

 そう言うと、エメラス王女は顔を真っ赤にして「決闘ですわ!」と私に人差し指を向けて宣言してきた。




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