公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議設立です!(6)

「はい? 何か問題でもありましたでしょうか?」

 私は首を傾げながら、さも何も問題はありませんよね? という態度をとる。
 すると、疑問を呈してきた男性が私を睨みつけながら「それではおかしくないだろう! 残りの75%の分配はどこに行ったのだ!」と、質問してくる。
 まぁ、この反応はあらかじめ予想はしていましたし、利益に聡い方でしたら見過ごせない点でありましょう。

「株式の75%ですが、私が25%……町を警備して頂いているレイルさんたち警備の方が25%、そして命綱とも言える食糧の取引を行って頂くアルドーラ公国フィンデル大公に25%お渡しする予定です」
「な! なん……だ……と!?」

 私に質問を投げかけてきた男性は、私の言葉を聞いて驚きの声を上げた。
 ただし――。

「立案者である私が25%の株式を有するのは、ご理解頂けるモノと思っております。正直に申しますと断られた場合、他の方に株式2.5%をお渡ししてお仕事をしてもらう事も考えておりますので、別に断られても問題あはありません」
「ぐぬぬぬぬ……」

 正直、手伝ってもらわないと色々と調整とかも増えるから困るけど、邪魔されるくらいなら1から販促路を作ったほうがいいし、現在のミトンの町は、他の町と交流が無い事から近いうちに食糧物資が干上がるのは目に見えている。
 食糧物資が干上がり、そこに豊富な食料を持つ私が居れば、間違いなく私中心の町運営が行えると思うけど……メンドイからやりたくない。
 最悪、やらないといけない事も考えないといけないけど、まぁ、ダメならダメで諦めて頑張るしかないでしょうね。

「わ、わかりましたわ。それで手を打ちましょう」

 年若い女性が、私の説明で納得したのかしてないのか分からないけど、同意してきた。
 理知的な青い瞳がまっすぐに私を見ているけど――彼女は肩で切り揃えられた灰色の髪を少しだけ弄ると両手を組んで――。

「それにしても、ユウティーシアさん」
「はい? 何でしょうか?」
「あなた……かなりエグイですわね」
「そうでしょうか?」
「ええ――。だって、権利を寄越す代わりに仕事をシッカリとしてほしいと言うことですわよね?」
「そうですね。ですけど。権利を持つと言うことは義務を負って頂かないと……それが社会人としては当然かと存じております」
「そうね……どうも、あなたは商人のような考えをしてるように見えるわ。本当に貴族なの? 今一、信用できないわね?」
「そうですね。よく言われます」

 私の言葉に、彼女は薄っすらと微笑みを見せると黙りこんでしまう。
 そして、彼女の同意である言葉を皮切りに全員の同意を得る事ができた。
 あと、最後に付け加える事がある。

「えっと言い忘れていましたが町の運営が軌道に乗るまでは、いろいろと大変な事があると思います。それでも、町の運営が上手く行きましたら利益はでますし、その分、分配金の量も増えますので頑張っていきましょう! 目標とか色々と設定したり休まずに仕事したり残業したり休日出勤したりすると仕事の進みが早くなります!」
「「「い、いや……そこまで仕事したいとは思わっていないんだが……」」」

 私の言葉に全員の意見が一致したのかハモって聞こえてくる。
 まったくだらしないですね。
 日本の正社員の男性なんて、公務員じゃない人は定時上がりなんてまず無理ですからね! 定時が終わってから本格的な仕事ですし!

「さて、それでは皆様の同意を得られたと言うこともあり、お渡ししてお手元に御座います書類……株式の権利というか誓約書にサインをお願いします」

 全員がサインをしたのを確認した後、小刀で軽く指先を切て血で拇印を行い、書類を全部確認していくが、特に問題があるような箇所は見られない。
 私は書類を全員に返す。

「それでは、今後の事に関して説明させていただきます」
「まずは、アルドーラ公国との今後の取引に関してでございますが――」



 町の有力者である方々の最後の一人――色町を仕切っている女性が部屋から出て行ったあと、私は席に座ったまま背伸びしてから冷めてしまった紅茶に手をつける。
 冷めてしまったことで渋みが増している紅茶を口に含んでから呑み込むと「行儀が悪いな」と、部屋の中に入ってきたレイルさんが話しかけてきた。
 私が「これが私の国で紅茶を飲むときの作法です」と伝えたところ、「そんな作法が有る訳がないだろう!」と怒られた。

「それよりも、アルドーラ公国との取引に関して話してしまってよかったのか?」
「え? そうですね。今後の事を踏まえると、先に説明しておいた方がいいと思いますし……レイルさんは、もう事前に説明していたのではないですか?」
「どうして、そう思う?」
「だって……話しが簡単に進みすぎていましたから――」

 私が説明した時の有力者の反応を見るに、私がどのような話をするのか既に知っていたかのような反応だった。
 慌てた様子が一切無かったから……。

「そうか……」
「はい、それと……」

 私は自身の所有してる権利書をレイルさんへ差し出す。

「これは?」
「はい、それは私が所有しているミトン商工会議の株式の権利書になります」
「どうして、これを?」
「町を守っていらっしゃる方が権利を持っていた方がいいと思いますので――それに、利益に聡い商人の方や利権を目当てにしていらっしゃる方は、ある程度は信頼できますが、それはある程度に過ぎません。ですので、町を実際に守っていらっしゃる兵士の方――その上司が、運営権を持っていた方がいいと思っています」
「ユウティーシア――君は、それでいいのか?」
「はい。私は権力などには興味はありませんから……それに何かあった時に自身の身を守れる方に持って頂いた方がいいと思いますし――」
「何か…………あった……時に?」

 途切れ途切れレイルさんが疑問形で問いかけてくるけど、そんなに私はおかしな事を言ったでしょうか?

「でも、すぐに忙しくなると思います」

 私はレイルさんの問いかけに答える。
 だって、他国との貿易を勝手に地方都市がするということは、それはすなわち……。
 自国の領土を売り渡した事に近いから。
 間違いなく、スメラギは行動を起こしてくると思う。

 


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