公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

暗躍する海賊の末裔(1)第三者side

 海洋国家ルグニカの8つに分かたれている州のひとつ。
 総督府が存在する衛星都市スメラギを中心にした州内で、独立を宣言した町が存在した。
 その名も衛星都市ミトン。
 その都市の動向に、州を治めていたスメラギにおく総督府は不自然なほど沈黙を貫いているかのように見えた。

「お父様! どういうことですの? どうして地方の都市を攻め落とす許可がいただけませんの?」

 衛星都市スメラギの総督府。
 その執務室の扉を蹴破るがごとく入ってきた金髪の髪をロールにした強い青い眼差しをした18歳ほどの女性は、執務室内のテーブル上で寝ていた父親に向けて大声で怒鳴った。
 男は、怒鳴られたことで椅子から転げ落ちてしまう。

「エメラスか……? 一体、どうしたというのだ?」

 頭を打ち付けたのか男は、何度か頭を摩ると目の前に立っていた愛娘であるエメラスを見た。

「どうしたというのだ? ではありません! 我がスメラギの領内で独立した都市国家があると聞きました!」
「――う、うむ……」
「どうして! 放置したままでいらっしゃるのですか? 独立を許したままでいれば他の町や村などにも示しがつきません!」
「だ、だが……」
「だが? だが、なんですか!?」
「いや、その……あれでだな……」

 エメラスの父親であり、海洋国家ルグニカのスメラギ州を当地しているイテル海爵は、言い淀む。
 はっきりとしない物言いに生来、短期な性格をしているエメラスは待つことができず。

「お父様! はっきりと言ってください! 今年は、私が住まう領内が開催する予定だったはずの王位簒奪レースも延期されて、さらには地方の都市まで独立宣言されて放置しておくなんて、貴族としてのほかの州を治めている海爵に示しがつかないとは思わないのですか?」
「じつはだな……」

 エメラスのハッキリとした物言いに、イテル海爵は大きくため息をつきながら。

「リースノット王国が絡んできていて派兵させることができない」
「はあ?」

 イテル海爵の言葉に、素で返してしまうエメラス。
 そんな様子を見て、イテル海爵は僅かながら口元を弛ませる。

「どうして、リースノット王国みたいな大国が口を出してくるのですか? それは間違いなく内政干渉ですわ!」
「分かっているが……」

 苦しそうな表情を作りながらもイテル海爵は、一通の書簡をエメラスへと差し出した。
 書簡を受け取ったエメラスは、中を一瞥し――。

「どういうことですの? ミトンの町には一切、手を出すな? 手を出せば火傷どころでは済まない損害を受ける可能性がある? ……わけがわかりません!」
「私も分からないが……兵士たちの話だと魔法師が常駐していると報告があがってきているのだ」

 父親であるイテル海爵の言葉にエメラスの眉が少しだけ動く。
 それはリースノット王国で魔法師と言えば、ハンサムで有名なクラウス殿下しか考えられないからだ。
 それほど、周辺国ではクラウスの魔法師としての腕前は評価されている。

「分かりました! 私、クラウス殿下に会いにではなくてミトンの町を支配している者に素直に町を受け渡すように話をしてきます!」
「――!? なんだと? いや、まて! リースノット王国が、わざわざ書簡で干渉しないほうがいいと言ってきているのだぞ? ――って!? ちょっと、まてええええええ」

 イテル海爵の言葉を聞かずに部屋を飛び出すエメラス。
 そして諦め雰囲気で椅子に座った後、イテルは大きく溜息を気をつく。

「だれかいるか?」
「はっ! ここに!」

 部屋に入ってきたのは一人の執事であったが眼光は鋭く立ち振る舞いに隙が見当たらない。

「娘の護衛をしてくれ」
「それは、ミトンの町に居る魔法師が危害を加えてくる場合は――」
「そのときは殺せ。娘はああ言っているが……。為政者にとって邪魔者を排除するのは、当たり前であるからな」

 先ほどまでエメラスと話していた顔が嘘のような表情をしたイテル海爵の指示に、執事服を着た男は頭を下げると執務室から出ていった。



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