公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議設立です!(3)




 さて、如何様に説明すればいいでしょうか?
 現代、日本というか地球の経済理論を持ち込んだところで異世界の方には理解されないよりも悪用される可能性の方が高くなる気がします。
 そう考えてしまうと、簡単に権利内容だけを説明した方がいいかも知れません。

「まず、株式会社と言うのは、一つの権利を多くの人間が共有すると言う形です」
「どういうことだ?」

 私の言葉に、ドワーフのような体格をした男性が首を傾げながら問いかけてくる。
 他の方々もみなさん首を傾げているような状況。

「そうですね……。まずお集まり頂いた皆様は、全員が何かしらの商会もしくは元締めをされていらっしゃる方かと存じます」
「そうね」

 お集まりいただいた中で、齢30代後半と思われる女性が頷いてきたあと、女性は私の事をじろじろと見ながら「でも、それがどういう理由に?」と、話しかけてくる。
 私は女性を一目見たあと、席についている男性達へと視線を向けた。

「その運営は、ご自身の裁量でされる時と部下にやらせる場合がありますよね?」
「そうだな――だが、下の者を使うのは当たり前ではないか? それが出来なければ商いは大きくならない」
「はい、ですが……それは賃金のみを払ってという形をとってるかと思われます」
「ふむ……何が言いたい?」

 私は自身が作成した書類をテーブルの中央に置く。
 
「こちらを御一人一枚お取りください?」
「ふむ……」

 男性が羊皮紙を取った事を皮切りに他の方々も羊皮紙を手に、その内容を見たあと私に視線を向けてきた。
 その表情は、自分が見たモノが何なのか分からないと言ったものであり、当然と言えば当然なのか「これは、一体何なのですかな?」と初老の男性が私を見ながら話しかけてくる。

「簡単に申しますと、今から作ります商工会議の権利書になります」
「――権利書?」
「はい」

 私は男性の言葉に頷く。

「一体どういう――」

 男性は困惑した表情のまま、私に話しかけてきようとしたところで私は、一度、言葉を区切るとレイルさんには別の羊皮紙を渡す。
 するとレイルさんは若干、困った顔をしながら受け取ると羊皮紙の中を見て溜息をついていた。

「これ、俺がもらっていいものなのか?」
「はい! 兵士の方にこそ持っていてもらわないと困りますので」

 私が渡した商工会議株式会社設立にあたっての書類をレイルさんは目を通しながらため息をついていた。
 そこには、商工会議株式会社の25%の株式、つまり運営権利権を保障しますと書かれている。
 もちろん、参加して頂いた方には2.5%ずつ。
 合計して25%。
 そして、アルドーラ公国の公室には25%。
 最後に私が25%を保有する事になっている。
 中世時代なら100%でも誰からも異論はないと思うけど、それだと何かあったときに責任感というか自分たちは、ただ関与してるだけだからと頑張ってくれない可能性もある。
 それなら、IT企業のように上場前の株を持株会という形で社員に配布して頑張ってもらえるようにするのと同じように、有力者に経営に携わっているという意識を持ってもらったほうがいい。
 そうすれば、ずっと考えて行動してくれるはず。
 それに、この町で暮らしているのはレイルさんと有力者さんたちで、その人たちが町の運営方針について過半数の権力を有しているということは、それだけでアルドーラ公国もめったな事では干渉できない。

 それに、もし10名の有力者が問題を起こしても私とレイルさんが権利を行使すれば下手な事は出来ないし……。

「これは簡単に言いますと、町全体の商いを支える役目を持つ商工会議の権利を全員が持つことでより良い方向へとミトンの町を進ませる方法です。自分も町を豊にするための一員と考えれば変な事はできませんし――」
「だが、ユウティーシア嬢。この羊皮紙を他の者に売った場合どうする?」
「販売した場合ですか……その時には町の運営方針については口を出せない形になりますね」
「な!?」
「皆様、勘違いをされていたら困りますので、はっきりと申し上げます。まず、今回、お集まり頂いた方の選定は、あくまでも町の有力者であるという点です。私としては、別に仕事さえきちんとしてもらえれば町の有力者でなくとも問題ないのです」
「な、なんだと!?」
 
 席についていた男性達が立ち上がると私を睨みつけてきた。
 そう、私としては権力に笠を着るような人間は、ハッキリ言って仕事を任せるに値しないのだ。
 なら最初から仕事をきちんとこなしてくれる人間だけ残ってくれればいい。
 たしかに有力者の協力は必要不可欠だし、楽にはなるかもしれないけど……。
 結果的に、それが権力の横行に繋がるならば良くはない結果を招くのは必然ともいえるから。

「――それで、あんたの言う仕事ってのは何なんだい?」

 先ほど、私に話しかけてきた女性が手に持っていた羊皮紙をテーブルの上に置いたあと話しかけてくる。

「はい、簡単に言うと住民の生活維持のための組織運営を考えています」
「生活維持のための組織運営?」

 私の言葉に相槌をうつかのように話しかけてくる女性に頷きながら、何と説明していいか考えていき――。

「人間というのは、衣食住の3つの要素があれば生きていくことはできます。現在、ミトンの町では、ミトンの町を管理していたスメラギの町と貿易が途絶えてる状況にあります」
「それは、あんたがやったからじゃないのか?」

 はい、その通りですね……。
 ぐうの音も出ません……。



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コメント

  • ノベルバユーザー282941

    レイルさんが対英気という未知の力を発しています!正しくは ため息 では?

    0
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