公爵令嬢は結婚したくない!
商工会議を設立しましょう!(23)
 私の返しにフィンデル大公は、まっすぐに視線を向けてくると。「そうだな……人一人が一年間で消費する麦の量と白色魔宝石1個の交換でどうかな?」と、提案してきた。
私は、フィンデル大公からの提案を聞きながら考える。
人間一人が消費する麦の量……。
たしか、中世の時代だと一日あたりの小麦の消費量は大人一人だと一日700グラム前後だったはず。
ミトンの町の人口は8000人程と聞いている。
そこから計算すると、町全体で必要な小麦の数は一日で5600キログラムにもなる。
余剰を含めるなら6トン。
そして年間を通すなら365日と400日と余裕をもって計算するなら2400トン。
2400トンもの白色魔宝石――用意することは可能だけど……。
9600個もの白色魔法石を提供したら、アルドーラ公国の魔法師の数はとてつもない数になる。
今まで、魔法が使えない人や初期の魔法しか使えなかった人間が、いきなり戦争に出せるほどの実力を身に着けてしまう。
潜在的国力がリースノット王国と比べて20倍以上あるアルドーラ公国が、それだけの力を入れたら隣国間での情勢が一変する可能性だってありえる。
そう考えると、白色魔宝石の価値としては――アルドーラ公国フィンデル大公が値付けした価格は安いと思えない。
「そうですか、それでは白色魔法石1個で小麦10トンと交換で如何でしょうか?」
「――な!?」
そこでようやく、フィンデル大公の表情に焦りの色が見えた。
どうやら、フィンデル大公の想定よりも高い価格を付けてしまったらしい。
だけど、私としてはこれでも安いくらいだと思っている。
祖国のリースノット王国では、私が生産して渡した白色魔宝石は10万個近いけど、その殆どが製造やインフラに使われてるはず――。
報告書が正しければだけど。
「ユウティーシア嬢、我がアルドーラ公国から海洋国家ルグニカの間には、巨大な山脈が存在している。物資というのは、そのまま引き渡せる物ではないということを理解して頂きたいのだが?」
「存じております。そこで――私から提案がございます」
「提案?」
怪訝な表情で私を見てくるフィンデル大公に私は微笑み返す。
そして――。
「物資の運搬については、私が全て行いましょう。決してアルドーラ公国に負担が掛かるような真似は致しません」
「ふむ――それは、船舶や運搬をすべてそちらで行うと言うことかな?」
「そうなります」
私の即答にフィンデル大公はしばらく考えたあと。
「あまり大規模な取引は、南方の国家であるリースノット王国に危機感を抱かせる事になるのだが?」
「はい、そのくらいは存じております」
2400トンもの小麦の運搬路を機械の知識も借りずに行うなんて普通は不可能。
行おうとすれば、必ず目につく。
そうすれば、すぐに国外へと情報が漏れることとなる。
「――ですので……私は、ブラウニーさんの空間転移魔法により小麦を運ぼうと思っています。生物の移動は行えませんが、小麦ですので砕いてしまったものなら粉ですから、問題ありませんので。ブラウニーさんたちには人海戦術で運んでもらう予定です」
「妖精を運搬係りに使う……だ……と!?」
フィンデル大公の隣に座っていたスペンサーが、驚嘆な表情で言葉を紡いできた。
そんな彼とは対照的に「なるほど……それなら山を越える必要もなく人的資金もカットできるか」とフィンデル大公は頷いている。
「小麦の運搬方法については、それで良しとしよう」
「なら!」
フィンデル大公の色よい言葉に、私は肩の荷が少しだけ軽くなるのを感じたところで。
「これまでの話から、リースノット王国とユウティーシア嬢との関係性は良好ではないように見受けられたが?」
良好どころか、公爵家の血筋で白色魔宝石を作る技術というか特異性は私しか持ってないのに国国から出帆した私は、リースノット王国にとっては裏切り者? みたいな形で関係性については最悪と言っていいはず。
それでも、国にいたら結婚させられていたかもしれないんだし。
国から逃げ出しても仕方ないと思う。
「あまり詮索されると困りますが――」
「ふむ……だが、さすがに白色魔宝石1個で小麦10トンの提案を受け入れる事はできない」
まぁ、さすがに10トンは無理ですか……。
ですが――。
「リースノット王国から輸入してる塩のうち50%を、私が提供すると言ったらどうですか?」
「塩を? ――なるほど! そういう……」
「父上?」
さすがは、国を運営されているトップの大公なだけはある。
妖精が運ぶのは小麦の粉だけはない。
塩も転移させても問題ないのだ。
そもそも、塩などはナトリウムの塊なのだから生物ですらない。
「なるほど……つまり、ユウティーシア嬢は――」
「はい、リースノット王国頼みになっている人が生きていく上で必要不可欠な塩を、こちらが提供することにより」
「結果的にリースノット王国が、我が国に与えている影響力を減らす事が出来るということか?」
私は、続けて話してきたフィンデル大公のお言葉に頷く。
問題は、軍事的優位性の問題だけど――。
「今回、数日間という時間で私との話し合いに応じて頂けることになったのは、やはり――国内の情勢が危ぶまれたと私は考えておりますが如何でしょうか?」
 私の言葉に、フィンデル大公はゆっくりと頷いてきた。
私は、フィンデル大公からの提案を聞きながら考える。
人間一人が消費する麦の量……。
たしか、中世の時代だと一日あたりの小麦の消費量は大人一人だと一日700グラム前後だったはず。
ミトンの町の人口は8000人程と聞いている。
そこから計算すると、町全体で必要な小麦の数は一日で5600キログラムにもなる。
余剰を含めるなら6トン。
そして年間を通すなら365日と400日と余裕をもって計算するなら2400トン。
2400トンもの白色魔宝石――用意することは可能だけど……。
9600個もの白色魔法石を提供したら、アルドーラ公国の魔法師の数はとてつもない数になる。
今まで、魔法が使えない人や初期の魔法しか使えなかった人間が、いきなり戦争に出せるほどの実力を身に着けてしまう。
潜在的国力がリースノット王国と比べて20倍以上あるアルドーラ公国が、それだけの力を入れたら隣国間での情勢が一変する可能性だってありえる。
そう考えると、白色魔宝石の価値としては――アルドーラ公国フィンデル大公が値付けした価格は安いと思えない。
「そうですか、それでは白色魔法石1個で小麦10トンと交換で如何でしょうか?」
「――な!?」
そこでようやく、フィンデル大公の表情に焦りの色が見えた。
どうやら、フィンデル大公の想定よりも高い価格を付けてしまったらしい。
だけど、私としてはこれでも安いくらいだと思っている。
祖国のリースノット王国では、私が生産して渡した白色魔宝石は10万個近いけど、その殆どが製造やインフラに使われてるはず――。
報告書が正しければだけど。
「ユウティーシア嬢、我がアルドーラ公国から海洋国家ルグニカの間には、巨大な山脈が存在している。物資というのは、そのまま引き渡せる物ではないということを理解して頂きたいのだが?」
「存じております。そこで――私から提案がございます」
「提案?」
怪訝な表情で私を見てくるフィンデル大公に私は微笑み返す。
そして――。
「物資の運搬については、私が全て行いましょう。決してアルドーラ公国に負担が掛かるような真似は致しません」
「ふむ――それは、船舶や運搬をすべてそちらで行うと言うことかな?」
「そうなります」
私の即答にフィンデル大公はしばらく考えたあと。
「あまり大規模な取引は、南方の国家であるリースノット王国に危機感を抱かせる事になるのだが?」
「はい、そのくらいは存じております」
2400トンもの小麦の運搬路を機械の知識も借りずに行うなんて普通は不可能。
行おうとすれば、必ず目につく。
そうすれば、すぐに国外へと情報が漏れることとなる。
「――ですので……私は、ブラウニーさんの空間転移魔法により小麦を運ぼうと思っています。生物の移動は行えませんが、小麦ですので砕いてしまったものなら粉ですから、問題ありませんので。ブラウニーさんたちには人海戦術で運んでもらう予定です」
「妖精を運搬係りに使う……だ……と!?」
フィンデル大公の隣に座っていたスペンサーが、驚嘆な表情で言葉を紡いできた。
そんな彼とは対照的に「なるほど……それなら山を越える必要もなく人的資金もカットできるか」とフィンデル大公は頷いている。
「小麦の運搬方法については、それで良しとしよう」
「なら!」
フィンデル大公の色よい言葉に、私は肩の荷が少しだけ軽くなるのを感じたところで。
「これまでの話から、リースノット王国とユウティーシア嬢との関係性は良好ではないように見受けられたが?」
良好どころか、公爵家の血筋で白色魔宝石を作る技術というか特異性は私しか持ってないのに国国から出帆した私は、リースノット王国にとっては裏切り者? みたいな形で関係性については最悪と言っていいはず。
それでも、国にいたら結婚させられていたかもしれないんだし。
国から逃げ出しても仕方ないと思う。
「あまり詮索されると困りますが――」
「ふむ……だが、さすがに白色魔宝石1個で小麦10トンの提案を受け入れる事はできない」
まぁ、さすがに10トンは無理ですか……。
ですが――。
「リースノット王国から輸入してる塩のうち50%を、私が提供すると言ったらどうですか?」
「塩を? ――なるほど! そういう……」
「父上?」
さすがは、国を運営されているトップの大公なだけはある。
妖精が運ぶのは小麦の粉だけはない。
塩も転移させても問題ないのだ。
そもそも、塩などはナトリウムの塊なのだから生物ですらない。
「なるほど……つまり、ユウティーシア嬢は――」
「はい、リースノット王国頼みになっている人が生きていく上で必要不可欠な塩を、こちらが提供することにより」
「結果的にリースノット王国が、我が国に与えている影響力を減らす事が出来るということか?」
私は、続けて話してきたフィンデル大公のお言葉に頷く。
問題は、軍事的優位性の問題だけど――。
「今回、数日間という時間で私との話し合いに応じて頂けることになったのは、やはり――国内の情勢が危ぶまれたと私は考えておりますが如何でしょうか?」
 私の言葉に、フィンデル大公はゆっくりと頷いてきた。
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