公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議を設立しましょう!(13)

「初めまして、ミューラー・ジェネレートさんでよろしかったかしら?」

 私は、目の前で驚いて視線をトーマスに向けているミューラさんを見ながら……おや?と思った。
 ミューラさんは、蹲ったトーマスさんに近づき屈むと「トーマスさん、大丈夫ですか?」と話しかけている。
 まるで、私の存在などなかったように2人の空間を作っている。
 浅く息遣いをしながら、トーマスさんの顔色が良くなっていくと、ミューラさんは座ったまま私を睨みつけてきた。

「あなた! 私に見えない位置でトーマスさんに何かしたでしょう!」
「えっとー……」

 私が何て答えていいか迷っているとミューラさんが「きっと私が見えない位置でトーマスさんに肘打ちか何かしたんでしょう!」と、問いかけてきた。

「ごめんなさい。わ、私……ミューラさんが、トーマスさんに何かされたんじゃないかなって……」
「はぁ……わかったわ。でもね、きちんと話を聞かずに暴力をふるうなんて最低だと思うわ!」
「はい」

 私は肩を落としてミューラさんの言葉に力なく答えていると「ミューラさん、ユウティーシアさんは事情を知らなかった。そこまで攻めるのはダメだと思う」と、トーマスさんが私とミューラさんの間に入ると擁護してきた。けど……ちょっとまって! いまの状態でそんな言い方したら――。

「貴女がユウティーシアさん? 私を呼んだユウティーシアさんなの?」
「は、はい……」

 トーマスさんの背中から顔を出して私はミューラーさんの問いかけに答える。

「そう……貴女がトーマスさんが……くっ!」
「ひっ!?」

 思わず私はミューラさんを言葉を聞いた瞬間、トーマスさんに寄り掛かって小さく悲鳴を上げてしまった。
 ミューラさんは、とても怒っていた。

「そう、つまり……そういう事なのね……」
「え?」

 何が、つまりそういうことなのか意味がわからない。
 ミューラーさんは勝手に自分で話を進めて勝手に決めてしまっている。
 そこで私は、はっ! と理解した。

「あ、あの……」 
「なに!?」

 かなり強い口調で私の問いかけに答えてきたミューラさんに、私は「もしかして、ミューラさんはトーマスさんが好きなんですか?」と、問いかえた。その瞬間、ミューラーさんは顔を真っ赤に染める。

「あ、あな、貴女は……な、何を言ってるの?」
「え? だって……私に対抗意識を燃やして文句を言ってきたんですよね?」

 私の言葉に、まずます顔を赤くしていくミューラさん。
 そして、未だに事態を理解しないトーマスさん。

「ど、どういうこと? え?」

 トーマスさんが、目の前のミューラさんを注視しようとしたところで、ミューラさんは走り出してしまう。

「お! おい!」

 トーマスさんがミューラさんを追いかけようとするのを私は手を掴んで止める。

「トーマスさん、ここは私に任せてください! 女同士で話をした方が良いこともありますし……」

 まぁ中身は男だけど! と、言う事はいわずに私はミューラさんを追いかける。

「思ったより早い……」

 私は一人呟きながら【身体強化】の魔法を発動し、前を走っていたミューラさんの腕を掴んだ。
 ミューラさんは、腕を掴まれて表情を歪めると「痛い」と告げてきたので、私は少しだけ力を抜くと彼女は走るのを止めて私を見てきた。

「……何で追いかけてきたのよ?」
「あの……ごめんなさい」

 私は、思わず謝ってしまった。
 すると、ミューラさんは一瞬、驚いた顔をして小さく笑って見せた。

「貴女、おかしな人ね。それで……どうして追いかけてきたの?」
「ミューラさん、私とトーマスさんは、ミューラさんが思ってるような関係ではありません」
「どういうことなの? トーマスさんの貴女を見る目は……」
「えっと……」

 なんて答えればいいのかな?
 ミューラさんに何と答えれば納得するのかな? 

「私は……男性より女性の方が好きですから!」

 よし、これなら問題ないはず。
 以前は、アレクさんを好きになったと言って問題になったから、女性が好きだと言えば問題ないはず。
 私の作戦は完璧なはず!
 私はチラッてミューラさんを見るとミューラさんは顔を青くして私から距離を取っていた。
 あれ? おかしいな?

 「ご、ごめんなさい……私、そういう趣味はないから! 私が好きなのは男性だから!」とミューラーさんは、走って逃げてしまった。「待ってください!」と追いかけても、まったく待ってくれない!? ミューラーさんは誤解してしまっている。ここは追いかけて宿屋に連れて行って静かにしてもらって話を聞いてもらうしかないかも……。




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