公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議を設立しましょう!(6)

 夕暮れ時のミトンの町を夜の記憶を頼りに歩いているけど、まったく辿りつかない――と、いうか道を正確に覚えてなくて辿りつかない。
 私は、路地裏の細い道で立ち止まり思案に明け暮れる。

「ここは一旦、屋根の上に乗って見晴らしのいい所から移動した方がいいでしょうか?」
「それは止めたがいいんじゃないのか? 目立つぞ?」
「そうですよね――えっ?」

 私は声がした方を振り向くと、そこにはレイルさんが両手を組んで私を見てきていた。
 おかしいです。
 市場につくまで何度も後ろを振り返って誰にも気がつかれない事を確認していたのに……どうして、ここにレイルさんがいるんでしょう?

「あの……これは……その……」

 一応、私は力で町を支配しているという設定にしているので、料理のためのパンや野菜にお肉、フライパンに木の器やコップを両手に持った籠に入れたまま歩いているのは不自然だと思う。
 ここをどうやって切り抜けていいのか――。

「……」
「……」

 二人して無言で見つめ合いながら、私は良い事を思いつく。

「レ……レイル!」
「何だ?」

 不機嫌そうな声で私に答えてくるレイルさんが少し怖い。

「えっと――ですね……そうです! 寝具一式が欲しいんです! 20人分くらい!」
「何に使うんだ?」

 何に使うと聞かれても……子供達が床にそのまま寝ていたから、そのために欲しいなんて直接言えないし……。
 何て言えばいいのかな。
 うーんと。
 ハッ! ここは支配者らしく公爵家の大貴族らしく少し嫌みに言えばいいのでは?

「決まっています! 私はこの町で一番偉いんですよ? つまり兵士を指先で動かしているのは必然であり権力の象徴なんです」
「ほう……それで?」

 あの……そこで納得してくれないと私としては、そこまでは強く出られないんですけど……。

「――で、ですから! 私の命令を聞いてください! ちゃっちゃっと20人分の寝具を用意してください!」 
「わかった……」

 レイルさんが溜息を吐きながら、しぶしぶ私の命令に頷いてきた。
 ふふっ、どうやら私の命令を聞かないといけないと言うのは理解してるようで何よりです。

「さあ、急いで用意してください!」

 私は高らかにさっさと用意してくださいと命令をする。

「――で、どこに持っていけばいいんだ?」
「……」

 どこに? さあ? どこでしょう? ちょっと、行く予定の建物が見つからなくて配達場所が上手く説明できないですね。
 でも、ここで配達先が分からないとか言ったら、私の支配者としてのイメージが崩壊しかねないし、困ったものです。

「ば、場所は!」
「場所は?」
「着いてくればわかります!」
「ほう?」

 私は、すぐに歩きだす。
 まずいです。非常にまずいです。
 どこに建物があったのか子供達に案内されたので、帰りも夜だったので場所を覚えていなかったりする。
 こんな状態で、場所を聞いたりしたら私の威厳が台無しになる。

 5分歩き、10分歩き、20分歩いても目当ての場所に着きません。
 私って、こんなに方向音痴だったっけ?

「なあ、さっきから同じところを何度も行ったり来たりしているんだが?」

 レイルさんが私の自尊心に止めを刺してきた。
 さすがに必死に取り繕っている状態で、そんな事を言われるとイライラしたりする。

「ふっ……支配者たる者、庶民の通る道なんて覚えている訳がないのです! レイル! 貴女には小さな子供達が寄り合って暮らしている建物までの道案内を命令します!」 
「……お前、道が分からないなら最初から見栄張るなよな」

 レイルさんが私に正論を言ってくる。
 正論すぎて何もいえない。

「ここでいいのか?」

 しばらく歩くと、夜に見たあの家というか崩れかけのお家が目に入った。
 お家に近づくと、昨日の夜に作ったお墓があり、私達の気配に気がついたのか子供達がお家から出てくると「お姉ちゃん?」と、夜に私を案内してきた子供が近づいてくる。

 私は、しゃがんで目線の高さを同じにしてから女の子の頭を撫でながら「少し遅くなったけどご飯にしましょう」とやさしくほほ笑みかける。
 子供達は、大切な人を亡くしたばかりなのだから、きっと心が不安定だから、優しく接して上げないといけないから。

 そこで私は、籠からブラウニーさん達を取りだすと、ブラウニーさん達は疲れているのかグッタリとしていた。

 仕方無く、私は近くの小石を手にとり白色魔宝石を作り出すと妖精さん10人に近づける。
 すると妖精さん達は、すぐに活力を取り戻すと私の周囲を飛びまわり始めた。

「これを上げるから、お家の掃除と修繕をお願いね」

 私は、小石から作りだした10個の白色魔宝石をブラウニーさん達に見せると全員、目を輝かせてお家の方へ飛んでいき、掃除と修繕を始めた。
 子供達は、飛んでいるブラウニーさん達が物珍しいのか遠くから見ている。
 男の子に至っては触ろうとするけど、すり抜けている。
 まぁ基本、妖精は魔法を上手く扱えないと、妖精の許可がないと触れないからね。
 そこまでで、私はハッ!とする。

 後ろを振り向くとレイルさんが難しそうな表情で私を見てきている。
 きっと私が、どういう人物なのか考えているのだろう。

「くくくっ――こうやって私は小さい頃から子供達を洗脳しているのだよ! 小さい頃に受けた恩というのは中々にどうして――さて、レイル! 貴様には、子供達が寝られる寝具一式を20人分もってきてもらいたい! 時間は日が暮れるまでだ! もちろん、設置も兵士の者どもにやってもらおうとしようか!」

 限りなく悪者口調でレイルさんに私は頼む。
 お願いだから頷いてくださいと……私は心の中で祈りながら返事を待つ。

「分かった……すぐに手配しよう」

 良かったです!
 これで、子供達にベッドを支給できます。

「だが、すぐにベッドは持ってこられない。もってこられるのはベッド以外の寝具一式だな。それでもいいのか?」
「仕方ありませんね。まったく使えない兵士ですね」

 私の嫌みな演技にレイルさんの眉元がピクッと動く。

「――! あ、ご……ごめんなさ――じゃなくて! 早くもってきてください!」

 あぶないです。つい謝るところでした。
 本当に、どうして兵士の人達は顔が怖いんでしょうか。
 私は、寝具一式を用意をしてくるというレイルさんの背中を見送った後、食材と調理器具が入った籠を両手で持ったまま、お家に足を踏み入れた。



「公爵令嬢は結婚したくない!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く