公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

魔法で治療を施しましょう(後編)

――治療を始めてから2日が経過。

「シュトロハイム令嬢、大丈夫なのか?」

 私はフェリスさんの宿屋の2階の部屋を借りて怪我をした方の治療をしていて、もうすぐ夕方に差しかかろうとしていた。
 そして、私に話しかけてきたのはレイルさん。
 私が寝ずに治療を施しているのを見て心配になったのか話しかけてきた。

「大丈夫です。このくらい問題ありません。次の方の治療を致しますので、次の方を呼んで来て頂けますか?」
「……」

 私の言葉を聞いたレイルさんは、眉元を顰めて私を見ながら。

「分かった……それと、町の有力者と話しをしたいという要望だったが、有力者は昨日のうちに町から逃げ出したとの事だ」
「なっ!?」

 思わず、私は驚いてしまっていた。
 そんな私の表情を見たレイルさんは、口元に手を当てると部屋から出ていった。

 レイルさんが出ていったのを確認すると、私は溜息をつく。
 どうしよう……。
 この町に縁が無い兵士の方や関係ない人が町から出ていくのは予想はついていたけど……まさか町の有力者が出ていくなんて予想外。
 町の有力者には、私が危害を加えないことを伝え、町を今までどおり経営して頂ければと思っていただけに、これは想定外です。

 思わず両手を頭に手を宛てて、声を出さずに叫ぶモノマネをした所で若い男性の方が部屋に入ってきて私を見てきた。
 思わず私と若い男性の方は目が合ってしまい気まずい雰囲気が流れる。

「あ、ああ、あの……どのような怪我をされたのですか?」
「はい――実は妻が……」


「これで終わりですね……」

 全ての治療が終わったのは3時間後。
 実質60時間近くぶっ通しで治療系回復魔法で怪我人を治療していた。

 ううん。治療はもう終わったの。

「ひさしぶりのお布団です。もう寝るのです」

 私はベッドの上にダイブして横になる。
 一気に睡魔が襲ってきて――ってこない!?
 そ、そういえば……たしか、あまりにも眠くなりすぎてピークを超えると眠くならなくなる時間が存在すると聞いた事がある! きっと、そんな感じの状態に! 今の! 私は! って……だめ、どうも今の私は疲れと眠気から精神的に落ち着かず眠れない。

 しかたなく私は部屋の窓を開けて換気を行うと宿屋の前で、数人の子供達と兵士の方が押し問答している姿が目に入った。
 私は気になって部屋から出て階段を下りる。
 1階は食堂になっているけど、まだフェリスさんは体調が完全には戻っていないらしく、フェリスさんの姿は見られない。
 変わりに1階には数人の兵士とレイルさんがいた。
 私の姿を見たレイルさんは、椅子から立ち上がると私に近づいてくる。

「シュトロハイム令嬢、どうかしたので?」
「はい、実は宿の前で子供達の姿が見えたので……」

 私の言葉を聞いたレイルさんの顔色が少しだけ変化する。

「たしかに子供達はいますが、彼らはシュトロハイム令嬢の件とは関係の無い事で怪我をした者達です」
「そうですか……」

 私は、仕方無く部屋に戻る。
 そして窓から子供達を見ていると、子供達は泣きながら宿屋の前から離れていく。
 どうしても、その様子が私には気になって仕方ない。

 私は、【身体強化】の魔法を発動させ宿の窓から別の建物の屋根上に音を立てずに飛び移る。
 そして、子供達の跡を、音を立てずに追っていき宿から十分離れたところで子供達の前に屋根から飛び降り降り立った。

「ひいい――」
「お姉ちゃん!」

 6歳から9歳くらいの少女達が目の前に突然、現れた私に驚いて腰を抜かしてしまっている。
 私は、魔法陣を空中に描き詠唱を行い、魔力を制御する。
 そして光の球の魔法を発動。
 光の球は周囲に3個ほど生まれて周囲と私を照らしだした。  
 そしてなるべく子供達を刺激しないようにやさしく諭すように話かけることを心がけて。

「初めまして、私の名前はユウティーシアと言うの。あなた達、宿屋に何か用事でもあったの?」

 私は地面に膝をつけながら話しかける。
 すると、恐る恐る6歳くらいと思われる女の子が「お姉ちゃんが病気になったの……でもお金がなくて薬が買えなくて……そしたら、どんな怪我も病気も無料で直してくれる人がいるって教えてもらって……」と、何度も言葉に詰まりながら女の子が私に話してきてくれた。

「そう……」

 どうしましょうか。
 一応、いまは私が原因で怪我をした方の治療をする形をとっている。
 だから、兵士の方も町の方も最悪、何かあれば全部、私が悪いと言う形を取ってくれればたぶん被害はいかないと思う。

 でも、もし無償で助けたりしたら……そしたら罪に問われる可能性だってある。
 だけど……。

 私の名前を聞いて希望を持って話してくれた子供達を無碍にするなんて出来ない。
 私はつくづく自分勝手ですね。
 かわいそうだから、見捨てられないからって理由だけで助けようとしてる。
 助けたら後で、この子達が疑われるかも酷い目に会うかもしれないのに。
 最後まで面倒を見る事もできないのに。
 助けようとしている。
 偽善もいい所。
 私は6歳の女の子の頭を撫でながら決心する。

「えっと……案内してもらえる? どんな病気かみないと治せるかどうか分からないからね」

 私はやさしく女の子達に伝えた。

 レイルさんに聞いた。
 私のせいで町の有力者の方が私のせいで居なくなったと。
 でしたら、私が全力を持ってして、この町の住人の守る責任があるでしょう。

 問題はその手段ですね……。





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