公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

罪の償い(前編)

 ミトンの町の城壁を潜ると、ティアだった頃の記憶とはまったく違った街並みが広がっている。
 なんというか……。

「レイルさん?」
「は、はい!」

 私は、後ろを振り向きながら総督府スメラギの兵士レイルさんに話しかける。

「この町の様子を見て、どう思いますか?」

 いきなりどこどこが駄目! とか悪い! とかは指摘しない。
 まずは、自覚してもらわないといけないから。

「い、いえ……こ、これは……命令で仕方なく……」

 でも、答えが返ってくることはない。
 私は深く溜息をつく。
 彼らは分かっているのだ。
 自分達が何をしたのか、それを誰かのせいにして自分は悪くないと思いこむことで罪から逃れようとしている。
 それは、よくないこと。

「レイル、まずは町の方々の治療を致しましょう。貴方達が接収していた建物に案内していただけますか?」
「……はい」

 レイルは暗い顔をしたまま私の言葉に従ってくれた。
 案内された場所は一軒の宿屋。
 宿屋の中に入って、宿の雰囲気で空気で分かってしまった、理解出来てしまった。

「レイル……ここの宿の主はどちらに?」
「はい?」
「ここの宿の主はどちらにいるのか? と聞いているのですが?」

 私を案内してきたレイルを見上げながら睨みつける。

「2階の……2階の部屋に閉じ込めてあります」
「怪我はさせてないでしょうね?」

 私の言葉にレイルは何も言葉を返してこない。

「もう一度、聞きます。怪我はさせていないでしょうね?」
「い……いえ……」
「あ、あなたは……民を市民を守る兵士でありながら、権力者の言いなりになってあまつさえ力無い者に手を上げたのですか!? 恥を知りなさい!」

 私は怒りのあまりにレイルを怒鳴ると宿の中を走り、階段を上がっていく。
 すると兵士が一人扉の前で立っていて、私が近づいていくと。

「とまれ! そこの娘! ここは……「だまりなさい、そしてすぐに1階にいるレイルを連れてきなさい。よろしいですね?」」

 兵士は私の言葉を聞いて、掴み掛かってくる。
 私は掴みかかってきた手を払うと、首元の服を握りしめ相手の体のバランスを崩しながら足を払う。
 そして兵士を床に叩きつけた後に、腹を踏みつける。
 それだけで兵士は動かなくなった。

 私は動かなくなった兵士が死んでないのを確認する。
 そして部屋の扉を開けようとすると金属製の南京錠のような物がついていた。

 私は、【肉体強化】の魔術を発動させ南京錠らしき物ごと扉を破壊する。
 破壊された音が辺り一帯に響き渡り、何十人もの兵士達が扉を開けて通路に出てくるけど、それらを無視して私は部屋の中に入った。

「これは……なんで……ひどい……」

 ベッドの上で寝かされているのは左腕を無くしたフェリスさんであった。
 まだ血が止まっていないのか左腕を覆っている包帯の代わりをしている布は真っ赤に染まっている。

「扉が壊れているぞ! 何者だ!」

 何十人もの兵士が通路を走ってきて、フェリスさんが寝ている部屋に踏み込んできようと。

「入ったら殺す!」

 俺は兵士達に視線を向けながら告げる。

「殺す? 何を言って……ぎゃああああああ」

 俺はファイアーランスを瞬時に展開して男の両足を消し飛ばす。
 その様子を見ていた兵士達は一斉に狭い通路で武器を構えて俺を見てくる。

「き、貴様……い、一体何者……」

 兵士達は、魔法詠唱無しで発動した俺の魔法を見てかなり動揺しているようだ。
 ただ、今の俺は彼らに細かい事を説明する余裕もやさしさも持ち合わせてはいない。

「うるさい、黙れ! それ以上、囀るようなら近づくようなら貴様らを全員殺すぞ?」

 俺はフェリスさんの左腕を覆っていた包帯の代わりをしていた布を取りながら、兵士達へ告げる。
 布をとるたびに新しい血が零れてベッドのシーツを赤く染め上げていく。
 おそらく、ティアを守るために……。

 頭の中で人の骨格を思い浮かべる。
 そして傷口に手をあてて【回復魔法】を発動。
 細胞増殖に利用した回復魔法により、フェリスさんの左肩部分が盛り上がると同時に左腕が一瞬で生えてくる。

 左腕の脈を測ると脈も正常。

「よかった……これでフェリスさんが死んでたらティアやアレクが悲しむから……」

 私はティアさんの体全体に【回復魔法】をかけると、立ち上がり扉から出る。
 すると一斉に兵士達も後方に下がり距離を取ってきた。

「申し訳ありません」

 私は謝罪しながら、両足を消し飛ばした兵士の足を治療を施す
 新しい足が形成されていくのを確認した後、私は内心溜息をつく。
 いくらなんでも、感情の隆起が激しすぎるように感じる。

 以前の私なら、ここまで感情が揺れる事はなかった。
 でも、今はそれよりも……。

「もう大丈夫ですね?」

 先ほどまでの私を見ていたからかなのか足を治療された兵士と私を取り囲んでいる兵士達はどうしたらいいのか分からない表情をしていた。

「お前達、その方はユウティーシア・フォン・シュトロハイム公爵令嬢様だ。手を上げては駄目だ!」

 階段を上がってきたレイルが私と兵士を見て顔を青くすると仲裁に入ってきてくれた。
 これで何とか、事態の収拾は出来そうですね。

「レイルさん! お願いがあります。今回の件で怪我をしてる方を、1階のロビーまで集めてきては頂けませんか? 治療を施したいと思いますので……」

 そう、今回の事の発端は私にもあるのだ。
 きちんと怪我人の治療を施さないといけない。





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