公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

反逆のユウティーシア(前編)

 ユウティーシア・フォン・シュトロハイム公爵令嬢たる私が流された国は海洋国家ルグニカ。

 元々は8人の大海賊が建国した国であり、その名残からなのか王位は世襲制ではなく、海賊らしくレースで決められる。
 レースで優勝した者が10年間だけ首都ルグニカを含めた7つの衛星都市を支配下に治める事ができる。
 支配下に治める事が出来ると言っても衛星都市の税収の一部を手にする事が出来るだけであり、衛星都市の運営はあくまでも各衛星都市を治める総督府の仕事。

 ちなみに、王位を決めるレースの名前は【王位簒奪レース】と呼ばれており10年に一度の祭りになっている。
 そのため、周辺諸国も含めてセイレーン連邦や帝政国に、魔法帝国ジールの貴族や大商人も見にくると言われている事から、【王位簒奪レース】が開始される【衛星都市スメラギ】は多くの人間が集まり多くの物が消費され好景気に沸くらしい。

 私は、リースノット王国で目を通して覚えていた知識を思い出しながら。

「ところで、お聞きしていいですか?」

 私は馬の手綱を操っている前に座っている兵士さんに声をかける。
 すると兵士さんは体を一瞬震わせた後に、恐る恐る私の方へ振り返ってくる。

「な、な、なんでひょうか?」
「そんなに慌てて話そうとすると舌を噛みますよ? リラックスして答えてくださいね」

 兵士の方の目は、「こいつは何を言っているんだ?」と、申しているようですけど、私は意味もなく暴力は振るいませんから。
 何でも間でも力づくで問題を解決されるように思われるのは大変心外です!

「王位簒奪レースは、まだ始まらないのですか?」

 王位簒奪レースは言わば国の華であって、顔でもある。
 そろそろ10年ぶりの王位簒奪レースが始まっていてもおかしくないのに、そんな様子がまったく見られない。
 国を上げてのお祭りなのだから、事前準備もそれなりにあるはず。
 それなのに、そう言った印象がまったく見受けられない。
 だって事前準備があるなら、もっと物資が行き交っていってもおかしくない。

「こ、今年の王位簒奪レースは、帝政国の軍港ヘリオポリスとの兼ね合いもあって2カ月程、開催が遅れていると聞いた事があります」
「帝政国の軍港ヘリオポリスと?」

 私は首を傾げながら海洋国家ルグニカの首都ルグニカの近郊の島に作られた帝政国の軍港ヘリオポリスを頭の中に思い浮かべる。

 帝政国は、海洋国家ルグニカは海賊が作った国だからという事で国としては認めていない。
 そして虎視眈々と海洋国家ルグニカを狙っていると聞いた事がある。
 そして、王位簒奪レース中は王位が一時的とは言え空白になってしまう。
 その間を突かれたら、海上では無類の強さを誇る海洋国家ルグニカの船団でも対処は厳しくなる。
 つまり、王位が一時的に空座の状態であっても、帝政国の軍港ヘリオポリスに対応できる組織の構築に時間が掛っている事が考えられる。

 そして組織の構築は、王位簒奪レースで勝利した者が――国王が行う、

「なるほど……つまり、2カ月間。暇になったから居るかどうか分からない私を総督府スメラギは捜してリースノット王国に恩を売ろうとしていた訳ですね」
「そ、それは私には……」

 兵士の言葉に私は小さく頷くと考えを張り巡らせていく。 
 おそらく、リースノット王国としては、私の行方を捜している。
 問題は、リースノット王国内ではなくリースノット王国外へ私の情報を流して大々的に探している事。
 どうして大々的に探しているのかは、今手に入る情報量だけでは判別がつかない。

「またひと波乱ありそうですね」

 私は小さく溜息をつく。
 そうしていると、ミトンの町の城壁が視界に入ってきた。

「ユウティーシア様」
「ええ、理解しております。このまま進んで頂けますか?」

 城壁の上には30を超える紫色の旗が見えた。



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