公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

意気消沈

 アレクが勘違いしているとなると……。
 私は藪蛇どころか鴨ネギが味噌とお米と土鍋までもってきたくらいアホな行動をした事になる。
 これはいけない。

「えっと……アレク。少し、今後の事について少しお話がしたいんだけどいい?」

 ユルメさんを含む未婚の女性陣から祝福の言葉をもらっていたアレクはとても気分が良さそうに、私の言葉に頷いてきた。
 とりあえず、話が大きくなる前に何とかしないと……私の未来が大変な事になってしまう。
 私はアレクの右腕を抱きしめたままアレクのお母さんがいるエイダさんの家へ引っ張っていく。

「どうしたんだ? 狩りの魚を配分しないとマズイだろ?」
「いまは、それよりも大事なお話があるんです」

 私はアレクの言葉を一蹴する。
 アレクは私の必死さを理解してくれたのか、そのままアレクのお母さんがいつも居る家まで歩いてきてくれた。
 まずは、アレクとアレクのお母さんにきちんと説明しないと。
 エモルトの求婚を受けたら大変な事になるから、婚約してると嘘をつきましたって言って理解を得ないといけない。

「エイダさん!」

 私は、面倒を見てもらっている家に入るとエイダさんの名前を呼んだ。
 だけど、エイダさんからの反応がない。
 というより、どこかに出かけている?

「困りました……」

 私は溜息をつきながら一人、居間の板上に座る。
 そんな私を怪訝な表情で見て来ているアレクも横に座ってきた。

「ティア、どうかしたのか?」

 アレクが話しかけてくる。
 私は何て答えていいか迷ってしまう。

「えっと、本当は……エイダさんがいた時にお話をしたかったんですけど……」
「ああ、婚約の話か?」
「はい……実は……」

 期待を込めた眼差しで、アレクは私を見てくる。
 私はその眼差しを見ながら――。

「実は、エモルトに言い寄られるのが嫌で……それに誰か婚約者がいないと断ったときに時期、村長ですし……村の女性達の事もありますから、ですから――ごめんなさい! アレクを婚約者と偽ってしまいました。最初は、アレクも演技にご理解して頂けたのかと思いまして……」

 私の言葉にアレクは溜息をつくと。
 私の頭の上に大きい手を乗せてきた。

「はぁー」

 私は恐る恐るアレクを見上げる。
 すると、アレクの表情には怒っている様子はとくに見られない。
 だからこそ、私は――。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

 私は、何度もアレクに頭を下げる。
 アレクは私の頭を何度か軽く撫でて。

「そういう理由なら仕方ない。それに、俺みたいな男にはティアみたいな美人はもったいないからな」
「えっと……そんな事ないです。アレクは、素敵な男性だと思いますよ? ですからいつか彼女さんが出来ると思います」

 アレクは、アレク自身が言うように卑下するようなダメな男性じゃない。
 子供にも優しいし、女一人で育ててくれた母親にもやさしく接しているし、きちんと漁で毎回、成果を出して畑作業も得意。
 そう考えると、アレクは結婚相手としては申し分ないと思う。
 そこで私は首を傾げる。
 もしかして、アレクって結婚相手としては優良物件?
 でも、何となく結婚はあまり興味がないというか何とも言えない感情が沸き上がってくる。

「いいさ。ティアは、やさしいからな。慰めなくてもいいよ、自分の事は自分が一番よく分かっているから」
「そんな事ないです! 私から見てもアレクは素晴らしい男性だと思っています! だからそんなに卑下なさらないでください!」

 私は、頭の上に乗せられていたアレクの右手を手にとり両手で包みこむと彼の顔を見る事が出来なかった。
 私の軽率な行動で、彼を傷つけてしまった。
 本当に私は馬鹿だ。
 自分が傷つきたくない為だけに、アレクを傷つけてしまった。
 私は本当に最低――。
 涙が自然と出てくる。

「あ、気にしなくていいぞ? ティアが悪いわけじゃないんだ。エモルトが悪いんだからな! だから、泣かないでほしい」
「――で、でも……私が、軽率な行動を取ったからアレクを傷つけて……」

 涙を流して泣いている私に向けて、私が朝洗ったばかりの布を差し出してくる。
 でも、私が悪いのに受け取る訳にはいかない。
 すると、私の顔にアレクは布を当ててきた。

「こんな時にどうすれば――」と、アレクは私が泣きやまない様子に、オロオロとしていると。

「ただいまー。あれ? もう帰っているのね?」

 エイダさんがどうやら戻ってきたみたい。
 そんなエイダさんが部屋に入ってくると動きを止めた。

「ティアちゃん!? どうして泣いているの? もしかして……話に聞いた婚約の話はティアちゃんの承諾を得ずに息子が勝手に!?」
「違うんです! 私が全部悪いんです! 私が勝手に婚約者扱いしたから……」

 私は布で涙を拭きながら、エイダさんを何とか説得しようとすると。

「いいのよ! ティアちゃん、馬鹿息子が何を言ったか知らないけど私はティアちゃんの味方だからね!」

 力強く私をエイダさんが抱き締めてくる。
 私は本当にどうしよう……と思った。
 それと、エイダさんにまで話が行っているということは、村ではかなり大事な問題になっているのではないかと身震いしてしまっていた。



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