公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

第2の婚約者(刺客)現る!

 私が、シュトロハイム公爵家に戻ってきてから一週間が経過している。
 最近では連日、貴族の子弟の方々と顔合わせをするパーティを開いている事もあり精神的疲労が半端ない。
 パーティ会場を歩いていると、一人の見慣れない男性が近づいてくる。
 今日の出席者の大半は、リースノット王国の男爵以上の貴族の子弟のはず。
 何度かパーティをしている事もあり、私としては殆どの方の顔は覚えたはずだけど、近づいてくる男性は見た事が無い。
 男性というよりも私と同じくらいの年齢? クラウス王子よりも若い? 

「えっと……」

 何と質問してするべきか迷ってしまう。
 シュトロハイム公爵家は、多くの雇用が出来るだけの貯蓄が有る事から積極的に人材を雇っている事から警備はしっかりしている。
 それなのに私が知らない人がこの場に現れるのが不思議でならない。
 すると男性は、私の右手を取ると接吻してきた。
 手袋の上からだから良かったけど、貴族の子弟でこの場に呼んでいるのは貴族の御令嬢のみで、突然の事に私は固まってしまう。

「初めまして、私の名前はエイル・ド・リースノットと言います。この度、正式に貴方の婚約者として御当主のバルザック・フォン・シュトロハイム卿より許可を頂きました。これからよろしくお願いします」
「え……?」

 私は、目の前の男性――と、言うよりエイル王太子の言葉に戸惑いを浮かべてしまう。
 まだ城で問題を起こしてから一週間しか経過してないのに、もう婚約者を決めてくるなんて……誰が創造できるのか。
 戸惑っている私にエイル王太子は、微笑みかけてくる。

「申し訳ありません。急な話なのは重々理解しておりますが、何分」

 そこでエイル王太子は言葉を一度止めると、思いだし笑いをしてきた。

「失礼――まさか、王城の一角を吹き飛ばした魔法を使う方が、そのような呆けた顔を見せてくるとは――ククッ」

 私は、エイル王太子に指摘された事で、ようやく自分がどれあけ呆けていたのか理解してしまう。
 それと同時に、羞恥心で顔が熱く火照ってしまう。

「え、えっと……始めましたじゃなくて始めましてエイル様……ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申します」

 私は、軽く会釈をする。
 すると、私を遠巻きに見ていた貴族の御令嬢達が噂をしている。

「ユウティーシア様は、クラウス様からエイル様に鞍替え?」

 とか、そういう話が聞こえてくるけど、今の私はそれどころじゃなかった。
 私は、突然の王太子の来訪と、心の準備もなく男性に手袋の上からとは言え接吻された事で非常に動揺してしまっていた。
 エイル王太子に、内心の動揺を知られないように必死に隠しながら挨拶はしたけど、噛んでしまい大失態をやらかしてしまった。
 そんな私の顔をエイル王太子はまっすぐに見てくると笑いかけてきた。

「ユウティーシア嬢、すまない。未来の伴侶たる君の普段の様子を見たかったんだ。アポイントを取らなった事は謝罪しよう。それにしても――ずいぶんと可愛らしい反応をしてくるのだね? まるで男性に免疫がないようだ。貴族学院は共学なのに親しい男性はいなかったのかい?」

 私はエイル王太子の言葉を聞いて顔を真っ赤に染め上げてしまう。
 きっと耳まで真っ赤だとおもう。
 可愛らしい反応って!? たんに男性に接吻された事と突然、王族が来た事に驚いただけであって可愛らしい反応と言われるのは大変な筋違い。

「殿方は居られましたけど……私は女子寮に住んでいましたし、大半は理事長の仕事をしていましたから」

 よくよく考えれば、私って理事長室と女子寮の往復が学校生活の大半を占めている。
 あれ? 私ってあまり学校生活を満喫してない?

「そうか、それでは逆にクラウスには感謝しなくてはならないね、君のような美しい女性に手を出さないでいてくれてよかったとね」

 それだけ言うと――。
 エイル王太子は、私のおでこに接吻してきた。

「これはリースノット王国の古くから伝わる風習でね。男の方が婚約者の女性につけるまあ簡単に言えば印みたいなものかな?」

 何を言っているか分からないけど、私はエイル王太子から逃れるように彼から間合いを取る。

「それでは、近いうちにまた来るからね」

 そう言うと私の返事も待たずにエイル王太子は、ホールから出ていった。
 私はその後ろ姿を見ながら思い出す。
たしかエイル王太子は、リースノット王国第2王位継承権をもつ15歳の男性で私と同年代のはず。
 ほとんど接点は無かったから知らなかったけど……。
 たしか、エイル王太子は第一継承権を持つクラウス殿下が王席から追放された後、第一王位継承権を承っていた。
 それにしてもと思う。
 よく見ると青い澄んだ瞳に金色の髪の毛に強気な顔と母親は、クラウス殿下とは違うのによく似ていた。
 また面倒な事になりそうですね。


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