公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

別宅で謹慎ですかー。

「ティア、こちらにきなさい」

 わたしは、お母様に腕を引っ張られて別宅に足を踏み入れる。
 普段は使われることの無い別宅。
 お爺様やお婆様が領地より来られた時にのみ使われる邸宅だけど――私が足を踏み入れたのは初めて。
 5歳までは本宅に居たし、10歳まではウラヌス公爵邸で魔法の練習やリースノット王国の経済の立て直しで他家に泊まっている事が多かった。
 そして10歳からは、貴族学院で15歳まで一人で住んでいたから――あれ? そう考えると私ってあまり貴族の御令嬢らしくないような……。

 ちなみに普通の貴族の御令嬢だと、リースノット王国くらいのレベルだと本宅から貴族学院に通うのが7割。
 3割は、寮から学校に通うけど執事やメイドさんや従者まで連れている人がいる。
 それだから、寮のお部屋がすぐいっぱいになる事を貴族の人間は気付いてほしい。

 私は、何人もの人が出入りしている別宅をみて溜息をつく。
 とても嫌な予感が――。 

「あの――お母様?」

 私はお母様の顔に視線を向けて話かける。
 するとお母様は、私の腕を引いて別館の応接間に連れていく。
 私の言葉に返答しないお母様に疑問を抱きつつ、素直についていき応接間に入りお母様の指示どおり黒いソファーに座る。
 すると――しばらくしてメイドの方がティーセットを持って部屋に入ってきた。
 そして紅茶を注ぐと一礼してから応接間から出ていく。

 お母様は置かれた紅茶に口を就けた後。

「ティア、国王陛下からの早文で貴女とクラウス殿下の事の結末は窺いました。もっと早く言ってくれれば良かったのに――そんなに私達は頼りありませんか?」

 お母様はティーカップを、向かい合っている間に存在するテーブルの上に置いて、私を見てきた。
 私は否定の意味を込めて頭をふる。

「頼りない頼りあるよりも――グルガード国王陛下より、シュトロハイム家の方へ話がいくと思っていました。
 まさかクラウス様が話を握りつぶしているとは知らなかった為、決してお父様やお母様を蔑にしている訳でもなく、信用していない訳でもありません」

 私は、お母様にそう言い訳しながらも、結局のところ貴族はどこまでいっても貴族な訳で貴族の婚姻は利害の一致の上で成り立つ。
 特にリースノット王国の王家では、血筋を重視する。
 そして男児はどこの家もいるけど、女児は私とアリシアがしかいない。

 だから、リースノット王国内で生きる以上、必ず三公爵家か王家に嫁ぐことになる。
 これはもうほぼ確定。
 でも精神的根幹が、男である私にとってそれは耐えられない物。

 ――と、いうこともあり、国から出たいと思っている。
 今回、リースノット王国の王族と少しやりすぎた感もあったけど、無事婚約破棄も出来たし私には問題もあると貴族の世界で理解されたはず。
 だから、シュトロハイム公爵家にも無茶な要求はしてこないと思っている。
 それに妹のアリシアの件もあるから、アリシアは純粋培養の貴族性質だから、本人の意思は確認してないけど、魔法師筆頭を示唆された段階で喜んでいたから多分、王族との婚姻は気にしないのかなと思っている。

 あくまでも思っているだけだけど――変なのと婚姻関係を結ぶよりかはずっと良いと思う
 あれ? そう考えると――そろそろ私とは姿を消しても大丈夫そうな気がする。
 そしたら、課外授業で市民の生活を学んだら他国へ逃亡することも視野に入れるとしましょう。
 問題は部屋に逃亡するとマズイので、海外視察とか行って船を沈めればいいかも知れませんね。
 誰も乗っていない船とか!
 上手く海賊に襲われて船が沈没とかすれば――。
 いや……襲われても私の力なら撃退する事も可能だから嵐にあって! みたいな形にしたほうが……。
 難しいですね。
 私は一人心の中で突っ込みを入れていると――。

「そうですか――。ティアは昔から一人で何でも決めてしまう癖があるから心配しているのよ?」
「はい……」

 まさしくお母様の言われる通りです。
 何故なら、別の世界の記憶があるなんて話せる訳が無いから。
 だから、両親にもウラヌス卿にもそういう話は一切していない。

「まあ……いいわ。それよりも、貴女はしばらくこの別館で暮らしなさい。社交の場に出る事は禁じます。いくら、王家が約束を守らなかったとは言え、多くの貴族の前で醜態を演じた事には違いはありません。ですから、反省していますという姿を見せておきなさい」

 私は、お母様の言葉を聞きながら内心、言い方に笑ってしまう。
 だって反省していますという姿を見せておきなさいって――。
 それって、別に反省する必要はありませんよと言っているに等しいから。

「わかりました。ですが一度、寮に戻って用意をして参ります」
「用意? 何か貴族学院の寮に荷物があるのですか?」

 私はお母様の言葉に頷く。
 するとお母様は紅茶を飲んだ後――。

「そうですか。それではすぐに馬車を用意させます」

 お母様はそれだけ言うと手元のベルを鳴らす。
 すると執事の方が部屋内に入ってくる。
 お母様が馬車の用意をするように伝えるとすぐに執事の方は部屋から出ていく。
 それからしばらくすると執事の方は持ってきて馬車の用意が出来たとお母様に報告してきた。

「それではティア」
「はい――」

 私はお母様に連れられて別宅のホールから出る。
 するとシュトロハイム公爵家の家紋が書かれている馬車が止まっていた。
 私は馬車に乗り込む。

「それでは行って参ります。夕方には戻れると思います」

 私の言葉をお母様は聞きながら頷いてきた。
 そして馬車はお母様の指示と共に貴族学院に向かって走り出した。




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