公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

シュトロハイム公爵家へ戻りましょう!

 お風呂から出た後、魔法陣と詠唱で制御した生活魔法の【送風】でルアちゃんの毛並みを乾かした後、「ふかふか」の「もふもふ」にしてから自分の部屋に戻ると、部屋の扉の前にメーナさんとクルミさんが立っていた。

「ユウティーシアさん!」と、クルミさんとメーナさんが同時に話しかけてきた。
 私は、夕方を過ぎているのに部屋の前にいた二人に驚きながらも――。

「ごきげんよう。どうかされましたか?」

 私は、二人に話しかける。
 もちろん両腕の中には白い子犬であるルアちゃんを抱きしめたまま。
 そんな私の姿を見た二人は、一瞬ルアちゃんを見て顔を蕩けさせていたけど、すぐに表情を引き締めてきた。

「はい、ケットシ―様より、ユウティーシアさんがしばらく女子寮を留守にすると聞いたもので……」
「――あ、そうですね……」

 そういえば、ここの女子寮の妖精達は私の魔力を好物として働きに来ているのを忘れていました。
 つまり、私が居なくなると問題が起きてしまう訳です。
 とくにブラウニーさんとか、ここ5年間で1000匹を超えて雇用しているわけで――。
 やっぱり……人員整理が必要でしょうか?
 リストラとかしたら、別の家に就職とか出来るものか?
 一度、聞いてみるのもいいかも知れません。
 私の返答を聞いて同級生のクルミさんとメーナさんも本当だと確信したようでかなり困っている模様。

「とりあえず、代わりにメーナさんとクルミさんお二人で、女子寮長の担当代理をお願いします。必要な食料品、衣料品、貴族学院で利用する消耗品に関しては、私宛に請求書を作って置いてくださればいいので」
「分かりました。それよりもいつ頃、お戻りになれるので?」

 メーナさんが私に聞いてくるけど、その時期が私にも分からないんですよね。
 一応、お母様と法衣貴族の方と王族の方々の調整が終わってからになると思うけど――。
 そうすると早くても数日、遅いと数週間とか掛りそうです。

「そうですね。まだ確定ではありませんが、貴族の方々が市井の方々と交流する授業がありますので、理事長としては確認をしないといけないため遅くても1カ月ほどで一度、こちらへ顔を出すと思います」
「そうですか――無理はなさらないようにしてください」

 クルミさんの言葉に私は頷きながらも、周囲を見回す。
 いつの間にか周囲に、たくさんの妖精さん達が集まってきて取り囲んでいる。
 その妖精さん達を、クルミさんとメーナさんは見たあとに――。

「それでは、ユウティーシアさんが戻られるまで寮長代理をしておきますね」

 メーナさんは私に語りかけてきた。
 出会った当初の、弱々しかったメーナさんの姿はそこにはもう見られない。

 きっと、ここ数年の間にメーナさんは成長したのでしょう。
 そう、ここ数年で起きた妖精達と私のやり取りを思い出すために私は自分の記憶の糸を辿っていく。
 そこで私は、思い出す。

 ケルピーさんが私に抱き着いてきようとしたので、腹を殴った事を。
 その時、力を誤ってケルピーさんは女子寮の天井を突き破りお星様になった事を。
 ケルピーさんが私に抱き着いてきようとして、手加減なしの生活魔法【送風】の魔法で竜巻を作り女子寮を半壊させながら遥か彼方に吹き飛ばした事を。

 仕事をせずに、だらだらしているケットシ―さんを、猫鍋にしようとお鍋に入れて火をつけたら暴れて台所が吹き飛んだ事とか……。

 私を暗殺にきたインプ軍と、女子寮を守ろうとしたスプリガン軍が全面対決して女子寮が崩壊して、避難騒ぎになったり、それが連日続いた事とか。皆が自衛のために魔法を必死に習って中級魔法師クラスの実力を身に付けた事とか。

 女子寮が崩壊するたびに、ブラウニーさん達が泣きながら連日、修理してたりとか。

 よく考えると、私が女子寮を設立してから5年の間に、女子寮が100回近く半壊もしくは全壊している事件が起きているのに、いまだに40人近くいる女生徒が誰も女子寮から出て行かないのはかなり不思議だと思う。

 まぁここの女子寮はサービスだけはいいですからね。
 ここの女子寮は、増えすぎたブラウニーさん達の妖精パワーで24時間お風呂に入れて朝、昼、夜関係なくビュッフェ形式で食事を取れる形になっている。

 警備はスプリガンとインプの2種族が完備されていて、ブラウニーさんが家事全般を担当しているからかなり質の高いサービスを提供。

 そして、ケットシ―とケルピーが危険察知と水回り担当をしている。
 そして家賃は一般宿屋の3分の1程度。
 デメリットは少しだけあるけど、よく考えるとメリットがいっぱいありますね。
 そりゃ女子生徒は出ていかないはずです。

「ふむ――」

 私は一瞬考えてこんでしまう。
 そんな私の様子にクルミさんが首を傾げて見てきた。

「どうかなさいましたか? ユウティーシアさん」 
「いえ……」

 わざわざ言う必要もないでしょう。

「……クルミさん、メーナさん。私はしばらく、シュトロハイム公爵家の方へ行っていますので何か有った際には、学園長経由で私へ報告をしてください」

 私の言葉に二人とも頷いてくれる。
 そしてその場は、そのままお開きになった。
 そして――。
 1時間後、私は貴族学院指定の馬車に乗っている。
 妖精さん達には、白色魔宝石をいくつか渡して正社員として雇用する事にした。
 彼らがいると色々と便利だし。
 私は、膝の上で寝ているルアちゃんのふわふわな毛並みを堪能しながら、シュトロハイム公爵家に向けて走る馬車の中で、これからの事を思い溜息をついた。



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