公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

リースノット王国、国王陛下とウラヌス卿の話(前編)

 ユウティーシア・フォン・シュトロハイム。
 初めて見た時には、普通の子供だと思っていた。
 ただ、5歳を超えた辺りからウラヌス卿から、普通の子供ではないと報告は受けていた。

 体内に維持できる魔力量というのは生まれ付きで決まってしまう。
その定説を覆すかのように魔力量を引き上げる事ができる白色魔宝石を作る能力。

 魔力量が引き上げられると言う事は、世界のことわりを、捻じ曲げる魔法を使える人材が増やせると言う事だ。
 つまり、軍事力だけではなく、あらゆる分野において白色魔宝石は多大なメリットを与える事になる。

 現に、シュトロハイム家、ハデス家、ウラヌス家、リースノット王家では、白色魔宝石を使い全員が上級、それか最上級魔法師と同等の魔力量を手に入れている。

 上級魔法師は中級魔法師の10人分の力を保持する。
 最上級もまた上級魔法師10人分の力を持っている。

 今までは、下級魔法師のみで構成されていた300人の兵士達は、全員が中級魔法師クラスの力を手に入れている。
 つまり単純に計算しても下級魔術師3000人分の兵力になっているのだ。

 さらに、シュトロハイム家の令嬢ユウティーシアが、提案した作物の栽培。
 それにより、人口が10万人ほどのリースノット王国は、わずか10年の間で人口が17万人を突破しさまざまな分野で信じられない程の成功を収めている。

 ユウティーシアは気がついていないが、彼女の提案した内容はつねに国王である私の場所へ最優先で届けられている。
 その上で取捨選択を行う。

 可能な案件については行い、現実的ではない物に関しては可能になってから行う方針を取っている。

 そして、その中で最も利益率が少ない案件の収入をユウティーシア嬢に支払っている。
 ユウティーシア嬢に上げさせている報告書も実際はかなり手を加えさせている。
 そのまま上げてしまえば、おかしいと気がつくはずだからだ。
 そして、それは10年近く続いた。

「国王陛下、どうかされましたか?」

 考えごとをしていると、どうも周りに気を配れなくなってしまうのは私の悪い癖だ。
 私は、椅子に座りながら声をかけてきた男を見る。

「ウラヌス卿か。それでシュトロハイム令嬢の様子はどうだ?」

 私の言葉に、ウラヌス卿の眉根が一瞬、顰められた。
 そしてウラヌス卿は紙の束を取り出すと報告を上げてくる。

「現在は、女子寮でお休みしているようです。それと、ケットシ―が監視役であると理解しているにも関わらず、そのまま放置しているようです」

 ウラヌス卿の顔を見る限り、信じられないと言った顔をしているが、私も信じられない。
 普通ならば、監視されていると思った時点で……まだ10歳の子供なら、どうにかしようとするのが普通なのだが、それを行わない。

 それが逆に、シュトロハイム家令嬢であるユウティーシアの特異性を表してるようにも思えてしまう。

「そうか。それでアルドーラ公国への話し合いなのだが、外交を主としているシュトロハイム家のバルザックはすぐに動けないだろう? 一度、クラウスとハデス公爵で相手国に尋ねてくるといい、軍は魔法師1000人ほども連れていけばいいだろう。貿易のために通商同盟は結んでいるが今回は相手に全面的に非がある。妥協せずに相手に請求を突き付けてくるようにハデス公爵には伝えてくれ」

 国王である私の言葉に、ウラヌス卿の眼が開かれる。

「陛下、それでは相手が条件を飲まない場合、戦争になる恐れが……」

 ウラヌス卿の危惧している事は当然だ。
 だが、長年、今まで媚びへつらってきたリースノット王国はもう存在しない。
 それに……。

「ウラヌス卿、戦争にはならんよ」

 私の言葉に、ウラヌス卿は首を傾げる。

「その為に、特級魔法師になったクラウスを連れて行かせるのだからな」

 ウラヌス卿が私の言葉を聞いて喉を鳴らす。
 特級魔法師は、通常の魔法師とは比較にならない程の魔力量と固有魔法までをも持つ。
 クラウスの力ならば、一人でアルドーラ公国の王都を守っている軍を壊滅させる事も容易であろう。
 シュトロハイム公爵家ユウティーシア令嬢には、悪いと思う。

 だが、相手に力を示す事もまた外交の一部なのだ。


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