公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

私、疑われてる!?

 私は扉を開けたままの姿勢で硬直してしまう。
 そして、もっとも危険なシナリオが頭の中に浮かんでくる。
 でも、今の状態で逃げる訳にはいかない。
 10歳では、商業ギルドにも冒険者ギルドにも登録が出来ないから。
 だから成人する16歳まで、なんとか誤魔化そうと思っていたけれど……。

「どうした?」
 扉の所で、硬直していた私にリースノット王国、グルガード国王陛下が入室を促してくる。
 私は表面上、取り繕いながらもスカートの裾を持ち――。

「お久しぶりでございます。国王陛下」
 ――カーテシーをしながら挨拶をする。
 私の様子を見ていたクラウス様が、何やら思案顔をしているけど、今はそれよりも……。

「ひさしいな。またずいぶんと大きく愛らしくなったな。バルザックに似なくてよかったな」
 国王陛下が笑いながら私に話しかけてくる。
 でも目は笑っていない。
 明らかに私の出方を窺っているように見える。

「それでだ。この度、私のバカ息子とユウティーシア嬢との婚約発表会を行いたいと思っているのだ。ユウティーシア嬢もそれで依存はないだろう?」
 依存ありまくりです。と……言えたらどんなに楽だろうか。

「国王陛下のご随意のままに」
 素直に同意するくらいしか私には出来ない。
 国王陛下は私の答えに満足したのか頷いている。

 私はそれを見ながら心の内側で溜息をついた。

 さすがに、育ててもらった恩がある以上、私の方から婚約を破棄するための働きかけなんて出来ない。
 それにしようとしたら、きっと某寿司屋みたく地下で永遠と白色魔宝石を作らされるだけのお仕事をさせられそう。

「そんな……納得できません! 父上どういう事ですか? シュトロハイム公爵令嬢は、俺が見初めたアンネローゼ嬢に危害を加えていたのですよ? そのような女性と婚約? 正気とは思えません。それにアンネローゼに見せてもらいましたが、彼女は高純度の魔石を作れると言っていました。今回の、不当な逮捕だけでも……「もういい。だまっていろ」……ち、父上?」
 国王陛下が、クラウス殿下の言葉を途中で遮ると私に使い終わった魔石をほうり投げてきた。
 私は、それを空中に滞空してる間に片手で素早く受け取る。

「ふむ。朝から今まで身のこなしを見てきて気がついたのだが、何か武術を嗜んでいるのか?」
 国王陛下が私を懐疑的な目で見てくる。
 たしかに私の知識の中には、合気道、剣道、空手、柔道の知識が一通り存在している。
 そして、それらを使いこなす時にどうやって体を動かせばいいのかが自然と分かる。
 これは前世の知識による所が多い。

「そ、そんな事ありませんわ」
 私は両手で、使い古しの魔石を強く握りしめる。

 もしかしなくても、捕まえた男達と、警備隊の話から私が何かしら隠してると推察している?
 まずい。これは非常にまずい。

 絶対に国王陛下は、私の事を疑っている。
 どうすればいい? どうすれば……。
 私の内面の葛藤を余所に国王陛下は――。

「シュトロハイム嬢。それを白色魔宝石に変えてもらえるかな?」
 ――と告げて来た。
 国王陛下の言葉に私は逆らう事ができず、魔力を収束させていき白く光輝く白色魔宝石を作り上げて、学園長室内にあるテーブルの上におく。
 置く際に音を立てるが、それほど大きな音でもない。
 それよりも私が気になったのは、クラウス様が私の事を驚きの顔で見てきていた事。

「クラウス、お前はアンネローゼが高純度の魔石を作ったのを見たことがあるのか?」
 国王陛下の言葉に、クラウス様がハッとした表情をした後、否定の意味合いを込めて頭を振っている。

「アンネローゼがお前に見せたのは、白色魔宝石を他国へ密売していた際に、交換した魔石の一つだ。これが報告書だ」
 国王陛下はそう言うと、忌々しげにテーブルの上に羊皮紙の束を放りなげた。
 丸められた羊皮紙は数度、跳ねる。
 そして私はその羊皮紙に押されている印を見て眉根を顰める。

 なるほど……。大国の皇女殿下が突然、何の発表もなしに来られるなんておかしいと思っていた。

 アリス皇女殿下は、この書簡つまりこれを手土産に……。

 暗殺騎士団ユニコーンが調べた情報の見返りで、リースノット王家に便宜を測ってもらったと……。
 そりゃ他国に自国の問題を指摘されたら不機嫌にもなる。

 それにしても密売ね……。

 いつか誰かがやるとは思っていたけど、本当にするなんてね。
 どう見ても割に合わないのに……。
 ――というか。白色魔宝石は、魔法師の実力を引き上げる力も持っていて国力に直結する。
 そんなのを密売していた時点で国家反逆罪。

 死刑コースの国家反逆罪に罰せられる。

 国力、防衛力に直結する白色魔宝石を密売なんて頭がおかしい。
 周辺諸国との軍事バランスは戦争の引き金に成りかねない。
 そこまで考えなかったのだろうか?

 国際情勢の国同士の軍事バランスの崩壊。
 王宮騎士団が出張ってきた理由としては十分すぎる理由ですね。



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