公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

駒として立ち回り

 私は、お父様とお母様を見て頭を傾げる。
 そこでふと思い至る。
 昨日の件の話が、王都警備隊を経由して王家や公爵家に伝わっていたとしたら、この現状もある程度理解できる。
 一応、表面上は、私はクラウス殿下の婚約者という形になっている。
 それはつまり、未来の王妃という事になる。
 つまり警護対象としては十分だと思う。
 でも、それにしては警備というか騎士の数が過剰というか……。

「おひさしぶりです。お父様、お母様。このたびは、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
 私は両手でカバンをもったまま、挨拶をする。
 すると、お母様が近づいて来ようとしたので私は一歩下がる。
 娘を思う母親アピールだと思うけど、そういうのは別に期待していない。
 だから、別に気を使わなくていい。
 私は、周囲を見渡したあとに――。

「この騒ぎは一体、どうなされたのですか?」
 ――と。聞くと。
 お父様は、眉間に皺を作ったまま私をつま先から頭のてっぺんまでみてきた。
 そしてお父様は言葉を紡いできた。

「ティア、襲撃を受けたと聞いたが?」
 やっぱり王都警備隊より話しがいっているみたい。
 そうすると、下手に隠し事をするより正直に話した方がいいかもしれないですね。

「はい。昨晩は襲撃を受けましたが、幸い妖精さん達が頑張って撃退してくれたので問題ありませんでした」
 私が撃退したと言ったら心配をかけさせてしまうかも知れません。
 それに、私が魔法を使用出来ることはウラヌス卿しか知らない事になっている。
 私が、白色魔宝石をウラヌス卿に提供する約束で、両親には話しがいかないようにしてある。

「妖精か……たしかに魔力を持つ者なら見る事は出来る。だが撃退するほどの力を持つ妖精はいないはずだが?」
 私は否定の意味合いを込めて頭を振る。

「そんな事ありません。この女子寮にはスプリガンさん達がいますので」
 私の言葉にお父様とお母様は驚いた表情を見せている。
 そんなに珍しい事なの?
 疑問に思っていると――。

「ユウティーシア嬢。スプリガンは遺跡などを守護する妖精であり帝級魔法師クラスではないと、契約はできませんが?」
 ――ウラヌス卿が私に語りかけてくる。
 そんな話しを、私は聞いたことない。
 私はウラヌス卿を睨む。
 そして頭の中で考える。
 たしか……。

「もしかしたら白色魔宝石に釣られてきたのかも知れません。シュトロハイム家の実家に送る分を作っておきましたから」
 これは嘘ではない。
 きちんと纏めて作って私の部屋のクローゼットに入れてある。

「お父様とお母様は襲撃の事で、こちらに来られたのですか? お父様は王城でお仕事があるのですから、この程度の事で来られるとお仕事に差し障りがあります。お母様も、まだ妹は小さいのですから来られなくても大丈夫です」
 二人とも何か言いたそうな顔をしている。
 きっと、私が迷惑をかけた事を気にしているのでしょう。
 国王陛下や騎士団の方にハデス公爵まで来ていらっしゃるのですから。

「お父様、お母様。出来れば騎士団の方にはお帰り頂きたいのですが?」
 お父様の眉間の皺が深くなっていく。
 それでも、こんな物々しい雰囲気だと、他の学生に迷惑が掛ってしまう。
 昨日の彼らの言い分からしても、対象が私だけなのだから……ここまで物々しい用意はしなくていいとい思う。

 最悪、即死しなければ回復魔法で腕とかも生やす事できるし。

「それでは、私は学校がありますので……」
 私はお父様とお母様から逃げるように学校へ向かった。
 きっと、お父様やお母様は……。
 迷惑をかける子供という認識で思っているのでしょう。
 クラウス様も、アンネローゼさんとさっさと婚約をすればいいのに。
 そうすれば私も楽になるんですけどね。

「親の心知らないというのはこういう事をいうのかねえ」
 足元から声が聞こえてきた。
 視線を下げると、そこにはケットシ―がいた。

「何を言っているんですか?」
 私はつい棘のある口調で話してしまっていた。
 ケットシ―は、立ち止まっている私から離れようとせず体を擦って寄せてくる。

 私はその様子を見て心の中で呟く。

 充分すぎるくらい親の心、理解しています。

 私が王族と婚約していなければ。
 白色魔宝石を作り出す力が無ければ。
 きっと捨てられていたと言う事くらいは理解しています。

 ですので、一人で生きていく力を手に入れるまでは、有用な駒として見られるようにきちんと立ち回りをしましょう。

 今回は、王都警備隊に男達を引き渡しのは失敗でしたね。
 きちんと、私一人で処理しておくべきでした。

 そうすれば、余計な面倒をお父様とお母様にかける事も無かったでしょう。
 あとで、いつもより多めに白色魔宝石を送っておけば問題はないでしょう。

 私は歩きながら考えて貴族学院の校舎に脚を踏み入れた。


「公爵令嬢は結婚したくない!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く