公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

ケットシーが住みつきました!

 ユウティーシアが寮監をしているつもりでいる、貴族学院の女子寮の住人達は、ユウティーシア・フォン・シュトロハイムを筆頭に、ユーメさんにブラウニー48匹にケルピー1匹? と、どう見ても妖精比率が高い女子寮。

そんな不思議な女子寮には致命的な問題があるのでした。

「って!? 何をナレーションしているの? あなた達も解説ぽい事していないで手伝いなさいよ!」
 私は目の前にブリぽい魚を強奪した白い猫を見ながら、ブラウニー達さんへと叫ぶ。

「今なら、そのブリを返すなら五体満足で女子寮から帰る事ができますよ?」
 私の言葉にチンチラぽい白猫が。

「それは断るニャ! いきなり殴ってきたお前が悪いニャ!」
 いきなり殴って来たって……。

「妖精さんのお菓子を食べようとしたからじゃないですか? それは逆恨みというやつです。さっさと今日の夕飯になるお魚を返しなさい」

「そんな事知ったことないニャ!」
 そう言うと白猫は、購買部から届いた品の中に入っていたブリを加えたまま逃走を謀ろうとする。
 だが逃がしはしない!
 制御をまったくしない生活魔法、送風を発動。
 私が発動させた秒速75メートルもの風が白猫の体を捉えた。

「やめるにゃあああああああ」
 白猫の体は、台所の壁を貫通するととなりの食堂の方へ飛んでいき何かを壊す音を響かせてきた。
 私は右手で持っているハンカチで額の汗を拭う。
 そして食堂に足を踏み入れると、そこにはブリの残骸が至るところに転がっていて、煉瓦作りの壁には白猫が頭から突き刺さっていた。
 私は白猫を煉瓦から抜くと、失神しているのかグッタリとしている。

「ふむー。今日はお魚の煮物にしようと思ったんですけど、猫汁に変更ですか……」
 私の言葉に目を覚ました白猫がジタバタと四肢を動かしながら抗議してくる。
 尻尾をもったまま逆さにしてるから、それはほとんど意味を成さない。

「ふふふ、あがくといいです」
 ちょっと調子に乗って白猫の尻尾をもったまま、ぐるぐる回してるとブラウニー達がガタガタ怯えながら私を見ている。
 そして――。

「ティアさん?」 
 食堂の中に少女の声が響きわたる。
 声がした方へ視線を向けると、食堂の入口にユーメさんが立っていた。

「あ、ユーメさん。ベッドの設置は終わったんですか?」
 私は、2つ頼んだ寝台のうち一つのユーメさんに渡していた。
 設置はユーメさんと、ブラウニーさんこと座敷童子さん達に任せた。

「はい、終わりました。じゃ……なくて! それってケットシーじゃないですか?」
 ユーメさんがとても慌てた仕草をしながら私の近くまで近寄ってくると、私の手から白猫を奪いとってしまった。

「ティアさん、ケットシーは王族制を敷いてる紳士なんですよ? 知らなかったとは言え、こんな事をするのは大変なことなんです」
 ユーメさんが必至に講義してきてくれるけど。

「うん、知ってた」
 私の発言にユーメさんは凍りついた。

「テ……ティアさんは怖くないんですか? 精霊とか妖精とか……仕返しされる事とか……」
 ふむ。
 そんな事を言われても、はっきり言わせてもらえば……今更なんだけど?
 現代科学が世界の秩序を担ってる地球と比べて、ここは剣と魔法の世界ですよ?
 そんな非常識な世界で幽霊とか魔物とか妖精とか精霊とか一々、驚いてたら気がもたないです。

「怖くないというか……魔法がある時点で今更だと思いますけど?」
 私の言葉にユーメさんは脱力し、白猫はこの女頭おかしいとか言ってきてる。
 でも、どうしよう?
 夕飯のおかずがないですね……。
 こうなったら最終手段をとるしかないです。
 私は、指パッチンをする用意をする。

「きなさい! ケルピー!」
 叫ぶと同時に指パッチンをする。
 するとその場から現れるケルピーもとい馬。

「なんだよ? まだ用かよ」
 呼び出したケルピーは、些か機嫌が悪いようだけど、私はそのまま言葉を紡ぐ。

「ケルピーお願いがあるのです。夕飯用の魚を取ってきてください」

「ふざけんなあああああああ、何なの? お前何なの? 妖精に魚とってこいとか何考えてんの?」
 ケルピーが何か言ってるけど、困りましたね。
 とりあえずお話をしましょう。

「ケルピーさん、魔力を上げますから取ってきてもらえますか? そうしないとちょっと私のフックがボディに入るかも知れません」
 シュッシュッとフックを打つ形をとる。
 それを見たケルピーさんが――。

「オーケー。オーケー。まずはその攻撃的な態度はやめようか。すぐに魚をとってきます」
 するとどうした事でしょう。
 ケルピーさんがその場から姿を消してしまいました。

「ティアさん……もう少し妖精さんにやさしくした方がいいんじゃ?」
 ユーメさんが、ケットシーを撫でながら私に語りかけてきた。

「大丈夫ですよ? きちんと魔力を上げてますから。それよりも不法侵入してきたケットシーを考えると、この女子寮には防衛力が足りない気がしますね」
 私は、女性2人だけで暮らしてる女子寮の防衛力に危機感を抱いた。



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