公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

え?入寮できない?

「えっとメイさん、この建物って先ほどと同じように見えるんです……けど!?」
 私の言葉にメイさんは細長い眉元をひそめながら

「ふふっ、中を見れば分かりますよ?」
 私の右腕を強く握りながらメイさんは、女子寮の両扉を開き中に入っていく。
 メイさんに右腕を掴まれたままだったので、そのまま私もつられて建物の中に足を踏み入れてしまった。

 中に入ると、花の香りが鼻腔をくすぐる。
 踏み入れた場所は玄関、つまりホール。
 正面には螺旋形の階段が2階まで続いているのが見える。

「少し待っていてね」
 私の腕から手を話すとメイさんは、階段を上らずに右手に存在する扉を開けて中に入っていった。
 私は茫然としたまま、玄関の近くのソファーに身を沈めて、メイさんが戻ってくるのを待つことにする。
 今日は、入学式と自己紹介だけだったこともあり時間的にはまだお昼も過ぎていない。
 時間なら、まだまだある。
 私は、鞄から一冊の本を取り出して目を通す。
 その本は、最近では巷で流行っている恋愛小説の本。

 小説の内容は至って単純明快で、悪役令嬢からヒロインが王子を救い出してハッピーエンドになるという内容。
 日本に居た頃にはよく、小説家まとめサイトで見ていた物に内容は近い。
 私は小説を読み進めながら、影が差したので目線を上に上げる。

 すると、そこには金色の髪の毛をくるくる巻いたドリルヘアーのお嬢様が私を見降ろしてきていた。

「あなた、新入生?」
 金髪ドリルの迫力美女は、私を見降ろしながら声をかけてきた。
 両手は腰に当てており胸を張っている。
 あまり行儀がいい作法とは思えない。
 仕方なく、私は立ち上がる。
 あまり悪目立ちしても仕方ないから。
 そのうち、国を出ていくのだ。
 将来、彼女に顔を見られても分からないように印象が薄いように立ちまわった方がいいでしょう。

「はじめまして。本日、入学しましたユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申します」
 私は、カーテシーをして挨拶を行う。
 金髪ドリルは私を見ながら頷くと。

「わたくしの名前は、アクア・フォン・アルドです。ここの寮監を務めておりますの。でもおかしいわね? ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと言えば、シュトロハイム家のご令嬢よね? そのような方が、女子寮【白百合】に入寮するなんて話は聞いてなくてよ?」
 アクアさんが、私を見ながら頭を傾げている。
 瞳にも困惑と言った感情が見てとれる。
 そんな時、先ほどメイさんが入っていた扉が開くとメイさんが姿を現した。

「……えっと、そういえば名前を聞いていなかったけど教えてくれない?」
 メイさんが、私に向けて名前を聞いてきた。
 そこでようやく、私もメイさんに自己紹介をしていない事に気が付いた。
 急いで先ほど、アクアさんに自己紹介した時のようにカーテシーをしながら挨拶をする。
 それを聞いて、メイさんが困ったような目を向けてきた。

「えっとユウティーシアさんは、実家のシュトロハイム家から通う事になっているわよ?」
 なんですと!?
 そんな話を聞いて……そういえばお父様とお母様が微妙そうな顔をしていたのはもしかして……。

「だから、入寮のための部屋が空いてないの。だからユウティーシアさんは、貴族学院の待機馬車まで戻って実家に戻られた方がいいわよ? 公爵家令嬢で入寮された方なんて今までいませんし」

「……そうですか」
 部屋が空いてないなら仕方ないですね。

「分かりました、ありがとうございます。ところで……」
 私は、たったいま閃いた事を口に出す。

「以前の女子寮でしたら使っても構いませんか?」

「「え?」」
 メイさんもアクアさんの声が重なった。
 どうせ公爵邸に帰ってもする事はない。
 それに、前世の知識や記憶がある私が一緒にいて家族同士ギスギスするよりかは、妹と両親だけで暮らした方がずっと楽だと思う。
 どうせ、私は卒業する前にある程度、魔法の操作方法と市井の知識を手に入れたらこの国から出る。
 その為の白色魔宝石だって大量にウラヌス公爵に渡してあり計算上、10年は持つほどの量になっている
 10年も立てばある程度は経済が改善してるはずでしょう。
 そうすれば私がこの国に必要かどうかと言えば……。
 どうでしょうね?
 でもクラウス様も、中身が男よりは妹の方がずっといいでしょう。

「べ、別に問題ないとは思うけど……あそこは幽霊が出るって話よ?」
 アクアさんが私を心配して話してきてくれるけど、幽霊くらいなら問題ない。
 だってそんなの人が作った幻想でありまやかしに過ぎないのですから。

「そうよ! 危険よ! それに5年も放置しているのよ? 埃だってたまっているわよ?」
 メイさんも気にしてくれているけど大丈夫です。
 私の魔法ですぐに綺麗に出来ますから。

「ありがとうございます。それでは失礼しますね」
 私は女子寮を出て来た道を戻る。
 そして見えてきた女子寮を見て、この広い寮を私一人の寮にするべく女子寮に足を踏み入れた。




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