公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

ユウティーシアとウラヌス卿の契約談話

「……まずは、話を聞きましょう」
 ウラヌス卿の言葉に私は頷く。

「現在、リースノット王国は自国の国民が消費する分の作物を作れていません。その理由は、ここの国の風土に関係します」
 私の言葉にウラヌス卿は相槌だけ返してくる。

「そして、リースノット王国の土壌をウラヌス卿の資料から読みとると、火山灰由来の土の可能性が非常に高いです。水はけから見るに小麦などを含む地面の上に実がなる作物には適してない」

「そのとおり。それで?」
 ウラヌス卿は、魔法式構築研究室長の割にやけに経済と農業に精通しているように感じる。

「はい、このような土壌ですと土の中に実がなる食物が適しています」
 私の言葉を聞いてウラヌス卿は天井を見上げてしばらく考え込んでから私に視線を向けてきた。

「ユウティーシアには、どうしてそれが分かるんですか?」

「それは……」
 私は言い淀む。
 ウラヌス卿はじっと私を見続けたままだ。
 だから、私は覚悟を決めた。

「私には、前世の記憶があるんです」

「なるほど……神の啓示や本で読んだとか誰かに聞いたと言うよりもはるかに信憑性がありますね。その知識の中に、リースノット王国の土壌に適した作物があるわけですね?」
 私は、ウラヌス卿の言葉に頷く。そして……。

「ですが、ウラヌス卿。私が前世の記憶がある事は伏せて頂けますか?」
 あると思われると色々と問題が発生する。
 お父様とお母様に捨てられる可能性もある。
 そんな事になれば、まだ独り立ちできないこの体では対処できない。

「それで対価は?」
 ウラヌス卿は私に対価を要求してきた。
 それは、こちらの話が真実かどうかは別として理があると悟ったからなのだろう。
 だからこそ、私はウラヌス卿をパートナーとして選んだ訳なのだが……。

「対価は、こちらが提供する情報で得られた利益の分配比率の増加で如何でしょうか?」
 私の言葉にウラヌス卿が、口角を上げる。

「ふふふっ。いいでしょう、それでどのくらいを?」
 私は考える。
 どのくらいの分配比率が十分なのかと……。

「分配比率としましては、利益の3割をウラヌス卿に……「それはあまりにも安いんじゃないのか?」……お待ちください」
 話の途中で、話してきたウラヌスの言葉を私は止める。

「あくまでも利益だけです」
 私の言葉にウラヌス卿は目を細めた。

「ここに私が前世の記憶を持っていることを秘密にしてくれる条件として2割、さらにウラヌス卿の名前で事業をして頂くためにプラス2割を足しましょう」

「そ、それは……利益の7割を私に譲るというのか? 発案者の君が?」
 ウラヌス卿が初めて動揺した姿を見せている。
 日本では、大手ゼネコンから下請けに仕事を回すまでに9割近くが中抜きされている。
 それは同じ人間が住んで営みをしていく以上、中抜きの法則は変わらないはずだ。
 つまり、本来9割近くの利益を要求するところを3割の利益だけでいいと私が言っているのだ。
 だから、ウラヌス卿が驚くのも無理はない。
 私としては、別に婚約破棄が出来ればそれで問題ないのだから、別にお金に頓着しないけど、要求をしておかないと逆に本当に成功するのか? と思われてしまうから請求するだけなのだ。

「はい。ウラヌス卿もご理解しているのでしょう? リースノット王国は今、かなり危機的状況にあります。国庫を開放して市場経済の物価消費を抑えておくのも限度があります。ですから早めに動く必要があるのです。私もシュトロハイム公爵家に生まれた以上、民が不幸になるのは見過ごせませんから……」
 私の最後の言葉にウラヌス卿は目を閉じて頷いた。

「分かった。それでは、後日改めて話し合うとしよう。それと、ここでは誰か聞いているか分からない。君の父上バルザック公爵へは私がそれとなく根回ししておく。私の屋敷で話した方が議論は速く進むだろう?」

「ありがとうございます」

「別にいい。どちらにせよ、白色魔宝石を毎回もらいに来るわけにはいかない。だからどちらにしても君の事は魔力制御を教えると言う事で、ウラヌス家の屋敷に通わせるように手配をする予定だった」
 ウラヌス卿の言葉に私は頷きながら、リースノット王国と他国との外交状態を知りたいと思った。



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