公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

婚約者がきまりました。

 二人の会話がいまだに続いている。
 もうそろそろ眠くなってきたんだけど……。
 子供の体になってからというもの、元気な時は元気だけど力が尽きるとパタンって電池が切れたように眠くなるんだよな。

「……そうか、それでは一応ステータスは測っておいたほうがいいな」

 父親と話をしている男が何やら言い出した。
 どうやら何かを用意してきていたみたいで、薄い石板のような物を取りだすと男に抱きあげられ父親に手を取られ石板に触れさせられた。

 そして石板には、名前と数字が表示されていく。
 石板に表示数値を見て誰もが凍りついたように見えた。

「――これは、どういうことだ?」

 男は困惑した表情で父親の顔を見ている。

「それにしても……」

 父親も何か考え事をしてから口を開いた。

「魔力量が低すぎる。これではどんな才能が無い庶民より低い」

 父親は少し苛立った様子だが、男が父親の肩に手を置くとすぐに冷静さを取り戻した。

「バルザック、魔力量が低いとは言え100年ぶりの王家の血筋を引く女子だ。血筋を重視する王家にとっては魔力量よりも血筋が重要なのは分かっているな?」

「はい、陛下」

 陛下? つまりこの目の前の男は、国王陛下なのか?
 それと、何故か嫌な予感がさっきから止まらないんですが……。

「分かってくれればいい。第一王位継承権を持つクラウスの婚約者は、この娘で決まりだ。幸いな事に知力と魅力のステータスが高い。すぐにでも教師を雇えば早い段階で貴族の作法を身に着ける事は可能だろう」

 え? 婚約者ってまだ2歳ですけど?
 というか、男と結婚するなんて俺は許可していませんから。

「そうですね。早いうちに手配いたしましょう」

 ちょっと俺の話聞いていますか?
 まだ、高熱だった影響からか上手く言葉がしゃべれない。 
 俺の無言の抗議に父親と王様の話は進んでいく。

「それに将来は王妃になるのだ。これだけ知力が高ければ他国の言語を全てマスターする事も可能であろう」
「分かっています。最初から、そのつもりです」
「分かってくれているならいい」

 父親の言葉に満足したからなのか王様は部屋から出て行ってしまった。そしてこの日、俺は生まれてたった2年で婚約者を決められてしまった。
 父親がすぐに王様の後を追って部屋を出ていくのを見送ってから、俺は行動を始めた。
 まずはベッドの上によじ登り枕を手にしてから寝た。
 睡魔には勝てなかった。

 翌日からも得に代わり映えの無い毎日が続くが、常時メイドさんが一人俺の見張っている? そんな状況になっている。
 正直、げんなりする。
 未来の王妃候補かなんか知らないけど、俺はそんなのになる気はないからな。
 それにしても、眠いな……。
 睡魔が俺を夢の世界へと誘ってくる。
 ふう、枕スタンバイオーケー。おやすみなさい。
 横になって10秒で俺は夢の中へと旅立った。

 俺の一日のスケジュールは、朝起きて体を拭いてもらい家内用のドレスを着せてもらってから一人で朝食を食べてからお休みしてからお昼は紅茶を飲みながら、お菓子を摘み寝る。夜は夕食を摂った後に、入浴を手伝ってもらい体を綺麗にした後に、就寝……そのサイクルを繰り返していた。

 そんなことを数年繰り返している間に俺はある事に気が付いた。
 言葉が話せるようになり、男口調で話すと母親とかメイドも良い顔を見せない。
 母親とかすごく怒ってくる。
 さすがに扶養されている手前、これ以上嫌われるとマズイ。
 その事から、俺は対策を取る事にした。

 それは思考する時に、女性口調で考えること。
 そうすることで、咄嗟に答えても、男口調で話すという失態は確実に減った。

 それからしばらくして……家庭教師が私の元へやってきた。
 とても美人さんでグラマーさん女性。
 今は同性という事もありまったく興味が湧いてこないけど。

 勉強の内容は、小学校低学年で習うような物であり、その中にはこの世界の暦も含まれていた。
 この世界は、地球と同じ一日24時間で区切られているようで一カ月は30日。
 一年で360日らしい。
 ただ、地球のように閏年とかの調整とかは入れてはいないようだ。

「先生。ステータス見る石板は何て言うんですか?」

 私の言葉に多少、驚きの表情を見せながらも家庭教師であるアプリコットさんは「ステータスを測るのは真実の眼と呼ばれる石版です。一度しか使えませんが全てのステータスと名前を表示する事ができます」と教えてくれた。
 私は彼女の話を聞きながら頭の中で考える。
 石板には、私本来の名前である草薙雄哉の名前が表示されてなかった。
 たぶんこの世界では、ユウティーシアという名前が最優先されているのだろう。

 それとボロが出ないように心の中でも俺から私に変えている。
 いつ誰が聞いてるか分からないからな……。

 授業は続く。

「先生。わたしたちの星は太陽のまわりを回っているのですか?」
「回っていませんよ?太陽が私達の大地を中心として回っているのです」

 ふむ、なるほど。この世界は、天動説が信じられている世界なのか。
 たしか地球でも天動説が有力視されていたのはかなり前からだったな。
 そう考えると、これは文明レベルがかなり低いと推察できる。
 もしかしたら天文学がそんなに発展していない可能性もあるが。
 勉強の時間は、小学校低学年の内容ばかりで睡魔と闘いつつ懸命に頑張っていたが良く寝ていた。
 そしてその都度、起こされてあくびをしながら勉強をがんばった。

 ある日、見張りのメイドがいなかった事もあり、少し外の様子を確かめる為に生れて初めて部屋から出た。
 屋敷は、王家に嫁ぐ家だけあってかなり広い。
家の中は2階建になっているようで吹き抜けから1階のホールを見る事が出来る。

 私は使用人にバレないように、本と言う紙媒体の情報を手に入れる為に屋敷内の探索を開始するが本を置いてあるような部屋が中々見当たらない。
その内、屋敷の中が騒々しくなっていく。

「お嬢様を見たか?」

「いえ、お部屋には?」

「アプリコット女史よりティア様の姿が見えないと……」

 使用人の話を聞きながらも私は探索を開始する。すると後ろから抱きしめられ持ち上げられた。

「ティア、勝手にお部屋から出たら駄目よ?」

 速攻、母親に捕まり私は、部屋に連れ戻されてしまった。




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