努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜

かひろ先生(ケダモノ)

謀反 1

「本当にどうすればいいんだろうか…」

僕、カシムスは椅子に座り頭を抱える。
僕はこの世界に転生してからこの歳になるまで死ぬほど努力した。
歩けるようになってからこの世界の規則、貴族の心得を頭に叩き込み余分に残った時間では街に出てすれ違う人々を鑑定しまくりどこかにクラスの誰でもいいからいないかと探し回った。

そして10歳になった時王女の誕生日会で彼女らを見つけた時は本当に嬉しかった。
やっと見つけたクラスメイトたちに僕は駆け寄りみんなを集め話し合うことに成功した。
だが王女以外誰も聞く耳を持たずろくに話もできやしなかった。
前田…テストロに至っては奴隷など買いやがってしかもあの4人は何故か鑑定ができなかった。

今回のパーティの時ついに新しくクラスメイトが見つかったもののクラスメイト同士が殺し合いをしただと?
そんなバカみたいなことも嘘ではなかった。
僕がしっかりしていればみんな死ぬことはないはずだ。
そもそも何故死ぬなんて話になるのだろうか?
みんな普通に生きて行けば死ぬなんて…殺されるなんて言葉なんか使わないはずだ。
なんで?なんでなんでなんでなんでなんで!!!

「カシムス?どうしたの息を荒げて」

「…え?」

僕は頭を上げるとエリザベス様が僕を心配そうに見つめていた。
僕は自分の手を見ると頭を掻きむしったのか自分の髪の毛が数本巻きついていた。

「…すまない。なんでもないよ」

僕は冷静になり席を立ち上がる。
そんな僕にエリザベス様は歩み寄り支えようとする。

「無理しなくていいんだよ」

「エリザベス様、大丈夫だよ。無理なんてしていない」

「エリザベス様って呼ぶのやめてよ」

「ふふ、癖になってるんだ。敬語は使ってないんだから勘弁してくれ」

僕はエリザベス様に微笑みかける。
するとエリザベス様も安心したようにホッと息を吐く。

「本当に大丈夫みたいね。よかった」

「ああ、僕はみんなを助けるまではどんなことがあっても倒れたりしないさ…絶対に」

僕はエリザベス様と部屋を共に出た。
絶対に…絶対にみんなは僕が守ってみせる!



……



「…ここか」

男がフラフラと歩みを進め城へと近づく。

「ん?フラギール公爵様申し訳ありませんがもうパーティは終了したのですが」

門番が2人男の前に立ちふさがり男を止めようとする。

「…だまれ」

「え?」

「だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれぇーーー!!!」

フラギール公爵は目を充血させ頭を掻き毟り体を震わせ叫ぶ。

「なんだ!?おい!公爵様を押さえろ!何かがおかしい!」

「は、はい!」

門番は2人がかりでフラギール公爵を押さえ込もうとする。

「邪魔だぁー!吾輩の…マスターの邪魔をするなぁー!!!火よ!拡散せよ!ファイヤーショット!」

フラギール公爵が呪文を唱えるとフラギール公爵を中心に火の球が何十個も放出され門番を燃やす。

「ぎゃー!」

「あ、熱い!水!水をくれ!」

「どうした!な…フラギール公爵様!何をなされておられるのですか!これは反逆でもしたおつもりですか!」

門番の叫び声を聞き駆けつけてきた兵士たちはその状況を見て絶句する。

「…どこだ」

フラギール公爵は血走った目をギラつかせ兵士たちを睨みつける。

「エリザベス王女はどこだぁー!!!」

「ヒイ!?」

「怖気付くな!彼は正気を失っておられる!殺さず気絶させるぞ!所詮貴族など魔力が切れれば取るに足らん相手だ!行くぞ!」

「「「「はい!」」」」

兵士たちはジリジリと盾を構え公爵歩み寄る。

「吾輩に…近づくなぁ!炎よ!大地を埋め尽くせ!フレイムバーン!」

公爵が詠唱をすると公爵周りから灼熱の炎が噴き出し地面を炎が埋め尽くす。

「くっ!全隊!魔法防御盾展開!」

「「はっ!」」

「ぎゃー!…」

「熱い!やだっ!や…だ…」

兵たちは隊長らしき男の声に反応し盾に魔力を注ぎ魔法を相殺する。
しかしタイミングが遅れた兵たちは炎により燃えかすへと変わっていく。

補足として言っておくがこの国の兵たちには魔力を込めることで一定範囲内の特殊魔法を魔力を込め続ける間相殺し続けることができる魔道具マジックシールドが主な防具として使われている。

「くそ!いつまでこの魔法は続くんだ!」

「た、隊長!もう魔力が限界です!」

「負けるな!公爵様も魔力が無限にあるわけではないんだ!尽きるまで耐えろ!」

「そ、そんな!一般人と貴族の魔力量の差をお忘れで…ぎゃー!」

1人の兵は魔力が尽き炎に包み込まれる。

「ヒ…嫌だ…ぼ、ぼ僕は騎士長様のようになるんだ!こ、こんなところで…死ねるかぁ!」

「待て!むやみに突っ込むな!」

隊長を残し最後に残った兵士は盾を構えながら着々と歩みを進めていく。

「ふん…鉄よ!我が刃となりて敵を貫け!アイアンニードル!」

公爵の詠唱が終わると兵の周りに無数の鉄の針が生み出される。
その針は炎に熱され真っ赤に発光する。

「撤退しろ!物理魔法は魔法防御盾の効果では防げん!」

しかし隊長の声は兵には届かず兵は鎧の隙間から無数の針に突き刺される。

「ぎゃー!!!痛い!熱い!あ、あああ!!!」

兵は炎の中で倒れこんでしまい炎の餌食になる。

「くそ!くそ!公爵様!一体何が望みなのですか!なぜこのようなことを!」

「吾輩には使命がある…絶対的な命令がある!これを達成するまで吾は止まれぬのだ!」

公爵はそういうと炎を消し城へと歩みを進めていく。

「くっ…せめてもの情けなつもりか…」

兵の隊長は魔力切れを起こしその場に倒れる。



……



「国王様!大変です!」

男が国王と呼ばれた40代の豪華な衣装で着飾った男の前で跪く。

「謀反が起きたのであろう?」

「え?すでに知っておられたのですか?」

「わかるに決まっておろう。我はこの国の王であるぞ。自分の国のことは全て知っておる」

跪く男はさらに頭を下げる。

「そ、それは申し訳ありませんでした」

「よいよい。それにしてもあのフラギールが…」

国王は顎をさすり考え込む。

「国王側としてはかなりの発言権を持っていた方ですが…なぜこのようなことを」

「こんなところで考えていても仕方あるまい。あの者たちを派遣し奴を捕らえよ」

「確かにあの者たちなら…かしこまりました。直ちに連絡をしてきます」

「いいか、フラギールは絶対に殺してはならんぞ。あやつがなぜこんなことをしたのか直接聞かねばならぬしな」

「はっ」

男は立ち上がると走って部屋を出ていく。

「…フラギール。お主が何故…」

国王は落ちようとしている日を眺める。
その目からは悲しみの感情が現れていた。

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