貴族パーティという名のいじめ

ランスパパもようやく落ち着きなんとかパーティが始まるギリギリで会場へ入ることができた。

「おお〜」

俺は会場の中を見ると思わず声を出してしまう。
とてつもなく広い会場がシャンデリアによりキラキラと輝いている。
貴族の人々がテーブルに用意された豪華そうな料理を食べ楽しそうに話している。

「どう？すごいでしょ」

「あ、ああ…これはすごいな」

「ふん、この程度でその調子とは…所詮は成り上がり貴族だな」

ランスパパが意地の悪い言い方で俺を遠回しにバカにしてくる。

「ちょっと父さん！エギル君に失礼だろこれでも父さんより爵位は上なんだよ」

ランスもランスで俺をフォローしてるのかバカにしてるのかわからない。
ランスパパは無愛想な表情で俺を見る。

「おい、エギルとやら」

「なんでしょうか？」

「貴様のような成り上がりの庶民出の貴族は爵位がいくら高かろうと成り上がりではない本当の貴族にとっては下の存在に見える。だからせいぜいこのパーティではそのような者達に目をつけられぬようにすることだな」

ランスパパはそれだけ言うとランスに私は挨拶回りをしてくると言ってその場を離れていった。
今のは俺へのアドバイスなのだろうか？

「父さん外だとあんな感じなんだ。気を悪くしないでね」 

「いやむしろさっきよりは今の方が断然いいがな」

俺たちは軽い口調で話しながら会場へ入っていく。
ランスは会場に入るや否や料理に飛びつき様々な料理を手に取り食べていく。
そんな様子を見た周りの貴族達が

「あれは…あの硬派で有名なアダドーロ男爵の一人息子では？」

「確かに顔はよく似ておるがあのような意地汚い変人があのアダドーロ男爵の息子なわけがなかろう」

「ですな！わはは！」

…おいランス、すげーバカにされてるぞ
ランスは御構い無しにどんどん料理を腹の中へと押し込んでいく。

「おいおいランスその辺に…」

俺がランスを止めようと歩き出すと同時に会場が暗くなる。

「なんだ？」

俺は暗くなった会場を見渡す。
貴族達はこれから何が始まるのかわかっているらしく皆楽な体制で立っている。
しばらくすると中央にライトが照らされそこに立っているとても豪華なドレスを着飾った女性が照らされる。

「『こんにちわ』…皆様、今宵は私…第二王女 エリザベス・キングトレアの誕生日会へようこそおいでくださいました。今日は日が落ちるまでの時間ですがお楽しみいただけたら嬉しいです」

エリザベスと名乗ったおっとりとした優しげで可憐な女性は軽く礼をする。
それにつられ全ての貴族が深々と礼をする…俺以外
俺はあまりに突然のことで少し驚いて礼をするタイミングを逃してしまった。
周りの貴族はこの男は何をやっているんだ？と言わんばかりの目でこちらをみてきてエリザベス本人はこちらをみてニコリと微笑む。

「…まじかよ」

あのエリザベス王女は確かにいったのだ。
日本語でこんにちわと…



……



エリザベス王女の話も終わり貴族がまた話を再開する。
しかしその貴族達の数人は時々俺をチラチラと見てくる。
…やっちまったな
俺は頭を抱える。

「あれ？エギル君これ食べないの？美味しいのに」

ランスはバクバクと料理を食べ続ける。

「お前は気楽でいいよな。ん？」

俺はランスを横目で見ていると前から俺と同い年くらいの男がズカズカと歩いてくる。
きたか…

「おい」

「ランス。それ美味しそうだな俺にも少し分けてくれよ」

「え〜自分で取ってきてよ」

「おい！貴様だ貴様！」

「わかったよ。しょうがないじゃあとってくるわ。どこにあるんだ？」

「えっとねー、あそこの机だね」

「オッケー」

俺がその場を離れようとすると突然肩を掴まれ引かれる。
俺はその力を利用しそのまま男の後ろに回り男の腕を後ろに回す。

「グア！貴様何をする！」

「いや何をするってお前が先に仕掛けてきたんだろう」

「貴様！俺が誰だかわかっているのか！俺はフラギール公爵家次男 リック・フラギールだぞ！」

「知らねえよ。で、何のようだ？」

俺は腕を放してやる。
リックは腕を抱えて恨めしそうに俺を睨む。

「ク…貴様何故先ほどエリザベス王女様の礼を返さなかった？これは極刑に値することだぞ！」

「ああ、知らなかったんだよ。このパーティだって数日前に知らされたしな」

「な、なんだと？知らなかった？貴様貴族だろう何故知らないんだ！」

「だって俺つい数日前までこの国にいなかったし」

「もしかして貴様…ルーカス家の子か？」

「ああよくわかったな」

俺が答えるとリックは大声で笑いだしそれを聞いていた周りの貴族も同じく笑い出す。
なんだ？

「ハハハハ！そうかそうか！貴様はあの成り上がり貴族のものだったのか！それならそうと速くいってくれたまえ！わかっていれば注意なんかしてなかった」

そう言うとリックはその場を離れた。
なんだったんだ？

「あちゃーエギル君変なのに目をつけられちゃったね」

ランスが皿を持ちながらこちらに近づいて話す。

「どういうことだ？」

「ま、待ってればわかるよ。僕はまだ食べたりないから他のところを食べて回るよ。また後でね〜」

ランスはそういうとスキップしながら離れていく。

「おい！…なんなんだよ」

俺は訳もわからずただ呆然と立ち尽くした。



……



はいこちらエギルです。
ただいま俺は貴族パーティに参加しています。
みなさんなかなか個性的で俺が話しかけようとすると無視をしてその場を離れ、料理を取ろうとすると俺の取ろうとした料理を先に取り、仕方なくボーとしてると水をかけられそうになりそれを避けと…まあいわゆるいじめですかね。
ええ、もう疲れましたよ。
俺は疲れ果て外に出て風に当たる。

「貴方がエギル・ルーカスでしょうか？」

「へいへい、いじめられっ子のエギルですよ〜」

「え？貴方いじめられてるんですか？…ご相談に乗りましょうか？」

「いやいや結構…え？」

俺は幻聴かと思って聞こえていた声を聞き流していたが振り向くとそこにはエリザベス王女が立っていた。
俺は急いで立ち上がり礼をする。

「これはすいませんでした。王女様とは知らずにあのような態度を」

エリザベス王女はふんわりと優しい笑みを浮かべ笑いかける。

「いいんですよ。だって貴方も転生者でしょう？」

「…わかってたんですか」

「ええだって私の言葉に反応したのが貴方だけだったんですもの」

エリザベス王女は俺の横に立ちこちらに顔を向ける。

「さあ、転生者同士でお話を始めましょうか」

「は、はぁ」

俺はあまり乗り気ではない曖昧な返事をしその場をどう乗り切ろうか考えるのであった。