努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜

かひろ先生(ケダモノ)

行ってきます

「………ギ…ル…」

誰かの声が聞こえる。
誰だろうか?とても落ち着く声だ。

「エ……ギ…ル…」

ん?この声は俺を呼んでいるのか?

「エギル!起きてよ!」

「…ミアか?」

「エギル!」

俺が目を開けると目の前いっぱいに目を涙でいっぱいにしたミアが顔を近づけていた。

「ミア…顔近いぞ?」

「そんなのどうでもいいよ!…良かった、目を覚まして」

ミアは倒れている俺に抱きついてくる。
俺もミアを優しく抱き返す。

「ゴホン、エギル君、ミア、そろそろいいかね?」

「ああ、里長さん居たんですか?」

しばらく抱き合っているとミアの後ろからわざとらしい咳が聞こえみてみると熊の獣人の里長さんと里のみんながこちらを見ていた。
しかし、その場にウォンさん、コンさん、そしてガウさんはいなかった。
俺とミアは離れて俺は立ち上がる。

「里長さん…ウォンさんとコンさんは」

俺が里長さんに聞くと里長さんは首を横に振る。

「すまない、崩壊した里の中を探したのだがウォンは見つからずコンは…死んでいた…」

「…コンさんが…」

そうか、コンさんが…だからミアは俺が起きたら泣いていたのか…
コンさんはいつも優しくしてくれた…自分の子でもない俺を本当の家族のように接して優しくしてくれた。
コンさんがそう簡単に負けるわけがない。
だがあのラトミーを回収した2人ならわからない。
あの2人もラトミー同様得体が知れなかった。

「エギル君よ。君はこれからどうするんだい?」

里長さんが黙っていた俺に話しかける。

「俺は…自分の街へ帰ります。俺の親はウォンさん達と友人でした。このことも報告しなくちゃ」

「里長さん、私もエギルについていきます」

「ミア?」

ミアは俺の横に並び里長さんに話す。

「私はお母さんに言われました。自分の意思を尊重しろと、だから私はエギルについていきます。きっとそれが私にとって1番いいことだから」

「よし、エギル君、ミア。これを持っていきなさい」

里長さんはカバンを2つ持ち俺とミアに1つずつ渡す。

「その中には3日分の食料と夜営用の簡易テントが入っている。それで目的地まではつくだろう」

「里長さん、ありがとうございます!」

俺はお辞儀をして礼をする。
ミアもワンテンポ遅れて礼をする。
このバックを準備していたということはミアも俺も里を出ると里長さんは予想していたのか…俺たちのために大事な食料を分けてくれた。

「いいんだよ。ミアもそしてエギル君…いやエギルも私たち里の仲間だ。私たちはいつでも君たちの味方だ。…一体どんな事に悩まされているのかはわからない。でも困ったことがあったらいつでも私たちに頼りなさい。ミア、エギル、私たち里はみんな君たちの家族だ」

里長さんは優しく微笑みかけてくれる。

「はい。じゃあ俺たちはもう出発します」

「ああ、いつでも戻ってきなさい…行ってらっしゃい」

「「行ってきます!」」

俺とミアは里のみんなとお別れをして歩き出す。

ウォンさん、コンさん、ガウさんに里長さん、それに里のみんな。
さようなら…いや行ってきます!





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