努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜

かひろ先生(ケダモノ)

修行

里の近くのひらけた土地で俺とウォンさんは向かい合って立っていた。

「よし!じゃあ今日から本格的に修行を始めるぞ!」

「はい!ウォンさんお願いします!」

「今日からは俺のことはウォン師匠と呼べ!わかったな!」

「はい!ウォン師匠!」

ウォンさんは口を緩めて頭をかく仕草をする。

「いや〜、実際に言われてみると照れるもんだなあ〜。やっぱり前のままでいいぞ」

「…わかりました。ウォンさん」

しばらくの間ウォンさんはにやけていたがしばらくすると気を引き締めて修行が始まる。

「じゃあ今からいままで走っていた時間の3倍を走るぞ!」

「は!?」

3倍って3時間だぞ。早く本格的に修行がしたいといってもこれは飛ばしすぎじゃないか?
…いや!きっとウォンさんなりに考えがあるんだ!信じて走ろう!

「わかりました!」

「よし、行くぞ!俺の後に続け!」

「はい!」

ウォンさんの走った後を俺がついて行く。
流石と思うのはウォンさんは俺が離れない様に俺が今出せる全力に合わせて一緒に走ってくれるところだ。

「ファイト〜」

いつの間にかミアが丁度いい石の上に座って俺の走る姿を見ている。
見てるだけなら一緒に走ればいいと思うがどうせ走らないから何も言わない。



……3時間後



「よし、終了だ!」

俺はその場に崩れ落ちる。
呼吸を整えようにも乱れすぎてうまく整えられない。

「ギル坊よくやったな。まさか本当に走りきるとは思わなかったぞ」

「ゼエゼエ…え?出来ない前提だったの?」

「そうだが?」

何当たり前だろみたいな顔したんだよ!
ウォンさんのことだから何か考えがあるのかと思ったろうが!

「ガッハッハ!そうか走れたか!じゃあ筋トレもいままでの3倍でいけるな」

「え?」

ウォンさんは悪戯をする子供のように口を歪め

「3倍走れたのに筋トレはできないなんて言わないよな?」

「……あー!もう!わかったよ!やりますよ!」

「ガッハッハ!よし!じゃあ10分休憩したら始めるぞー」

ウォンさんはそういうと地面に寝転がり眠り出す。
俺はミアの元に行き隣に座る。

「ミアずっと見てるけど暇じゃないのか?」

「別にー、エギルが疲れて倒れそうになってる姿見てるの面白いし」

こいつ…

「そう。ミアは走らないのか?」

「私こういうの得意じゃないから」

確かミアって前世でも体育とか休みがちだったかか?
その場に静寂が流れる。

「ねえエギル」

突然ミアから俺に話しかけてくる。

「なんだ?」

「さっきの話本当なの?」

「さっきの話?」

「私たちの生き残る人数が3人とかの話よ」

「ああ、あれか。本当だぞ」

ミアは顔を伏せる。

「なんで…なんで神様はそんなことをするの?本当に遊びたいためだけなの?」

「神たちの賭けにはとても大事な条約があるんだってよ。その賭けに勝つと神としての格が上がる。逆に負けるとその神は消滅するんだ。そしてあのゲス神の今の格は最高神、その上全ての神の頂点、全能神を目指してんだとよ。そのために必要なのが人の命を賭けたゲームなんだ」

「そんなことのために私たちはこの世界に呼び出されたの?」

「そうだ」

ミアは涙目になる。

「じゃあ私たちって死ぬ確率の方が高いんだよね?私…死んじゃうのかな?」

「そんなことはないさ」

「…え?」

ミアは伏せていた顔を上げて俺を見る。
俺もミアの目を見る。

「この3人って話はただ奴が言っただけだ。実際にはどうなるかわからないだろ?もしかしたら誰も死なないかもしれない。いや俺が死なせない。俺は強くなってこのバカみたいなゲームをさっさと終わらせてあのゲスをぶん殴ってやるんだよ」

俺はミアに笑いかける。

「だから心配すんな。もしやばくなっても俺が助けてやるよ」

ミアは突然笑い出す。

「…ぷっ…あははは!エ、エギルあんたってば今日会ったばかりで口説き出すなんてすごいわね」

「え!?そんな風に見えたか?」

ミアは腹を抱えて笑っている。

「そうにしか見えないわよ。あはは…でもありがと。おかげで気持ちがかなり楽になったわ」

ミアはとても3歳には見えない大人びた笑顔を見せて笑う。
俺は一瞬ドキッとしてしまう。

すると俺の頭を何かでかいものが軽く叩きつけられる。

「なんだなんだ?休憩中に人様の家の娘を口説いてんのか?この色男が」

「ウォ、ウォンさん!?違いますよ!あと痛いからこの手離して!」

「筋トレ4倍にするなら離してやる」

「な!この鬼!鬼コーチ!」

「鬼?鬼人族のことか?あとコーチってなんて意味だ?ギル坊って時々わけわからん言葉使うよな」

ウォンさんは少しずつ力を込めていく。

「いだだだ!わかったから!4倍でやります!」

「よし!始めるぞー」

ち、ちくしょう!
ミアが笑ってこちらに手を振っている。
お前のせいだろ!絶対楽しんでるなミアの奴。

こうして俺はいつもの何倍ものメニューをこなし1日を終わらせた。

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