れいぶる~自宅警備隊~

望月まーゆノベルバ引退

☆Girl's true character


ーー相変わらず日差しが眩しいもうすっかり夏だな。

「ここが第七支部か。あまり来ないな」
「そうっスね、ここらは音大とか美大とかそういった類いの大学生が多く住むとこッスからね」
「都会には珍しく緑が多いね」
「本当なの。清々しいの」

大学のキャンパスやその近くの公園、マンションなど至るところに木々が植えられていて緑豊かである。
第七支部は都会のイメージから少し離れた落ち着いた雰囲気のある支部だ。
僕はしばらくそののんびりした雰囲気を楽しんでいた。

一通り僕等は第七支部を探索してみた。
日陰の公園のベンチに腰掛け喉を潤す五人ーー

「暑いっスね。この日射しの中歩き回るのって自殺行為じゃないっスか?」
「ーー何か成果はあったんですか?」
「・・・どうなんだよエリカ」
「まあ、一応ね。鏡面世界ではドンパチやってるみたいよ」
ジュースを飲みながら他人事のように答えるエリカ。

「ーーーー!」
「それってヤバイんじゃないっスか?」
「第七支部が倒されたら意味ないじゃないですか」
柊とカイトは立ち上がりエリカの前に駆け寄る。しかしーーエリカは平然とジュースを飲みながら、
「まあまあ、ピンチで現れて助けた方が良いでしょ。貸しを作るのよ」
「ーーそういうもんなんスか?」
柊は僕に救いの手を求めてきた。
「嫌、殺られたら手遅れじゃね?急ごう」
「ーースよね」
僕等は鏡面世界へのゲートを捜すために立ち上がった。

千夏は立ち上がらないエリカにあたふたしているーー

「・・・エリカちゃんみんな行っちゃうの」
「コレだから男はせっかちでダメよね。
いい、千夏はこういう男たちに引っかかっちゃダメよ!」
「うん。ーーでも、この男たちの中にエリカちゃんの好きな人もいるよ」
「ーーまあね」

エリカは罰が悪そうにようやく重い腰を上げた。


★  ★  ★

「キーくん、第九支部の早坂姉妹が攻めて来たわ」
通信デバイスで連絡を入れる少女。
髪はショートカットで大きな二重の目が特徴的だ。小顔だけにその瞳が印象的に見える。

「ーーうん。ウチだけじゃそんなに長く食い止められないわよ」
通信デバイスを切ると深くため息を吐いて早坂姉妹を睨みつける。

「あれれ、あなただけ?」
「他の支部の情報でも第七支部は二人までしか応戦の記録がないわね。ランキングポイントも二人だけ」
「そうなんだね!じゃあもう一人を炙り出そうよおねえちゃん」
「そうね、ゆず」
ふわふわと空中で浮いている早坂姉妹ーー

「ウチもキーくんもそんなに暇じゃないんだよね。あんたらみたいにランキングポイントとか興味ないからほっといてくれる」

「私たちが見逃しても姫ちゃんが許してくれないんだから」
「姫ちゃんは絶対だから、残念」
「「第七支部は貰うわ」」
早坂姉妹は魔導弾を放つーー
直撃と思われた瞬間少女は姿を消した。

「ーーーー!!」

「ーー消えた?」
「ゆず背後ーー」
その刹那背後に現れた少女のパンチが柚葉の顔面を捉える。
「痛っーー」
「ゆず!このーー」
拡散魔導弾を放つ乙葉。その数は普通の人間なら防御障壁しか回避出来ない。
また少女は姿を消す。

「嘘?ただのスピード回避じゃないわ」
「おねえちゃん上よ」
「ーーーー!」
乙葉の頭上から飛び蹴りをお見舞いする。

「うぅぅ、痛たたた」
「大丈夫おねえちゃん」
「大丈夫よ。厄介な相手ね、スピード回避って訳じゃなさそうよ」
「時空移動系統の得意能力よ」
「えっヤバイ奴なの?どうするの?」
「ふふ、大丈夫よ。あの子さっきの一連の戦いで肉弾攻撃しかしてないでしょ?」
「ああ!確かに」
「この後もしばらく様子を見ましょ。もしこの先もこの調子なら全然怖くない相手よ」
「そうだねそうだね」
「ーーそれに時空移動系の能力は魔導消費は激しいんじゃないかしら」




乙葉の睨んだ通りの展開が訪れることになるーー

「ヤバっ・・・魔導力がそろそろ尽きる」
少女は肩で息をしている。連続してテレポートを繰り返していた結果だ。

「あらら、どうしたのかしらだいぶ辛そうな顔してるわね」
「ハハ、おねえちゃん鬼ぃ分かってた癖に」

「バレてたか・・・」
 少女は苦笑いを浮かべて舌を出した。
「お連れさんは来てはくれないのかしら?」
「あんたらに見せるツラはないってさ」
「威勢だけはまだあるみたいね。いいわアンタを出汁に使って誘き出すまでよ」

早坂姉妹は魔導弾を放つーー

「ヤバっーー無理。殺られるーー」

『 エリアウォール 』

「ーーーー!」

( あれ?助かった・・・ )

「お嬢さんお怪我はないっスか」
「先に言っておくわね、これは貸しよ」

少女の前に五人の男女が現れた。

「・・・お・・・ちゃ」
少女は目を丸くし固まる。

「あっ!おねえちゃん神崎カケルだ」
「ーー第十二支部」
早坂姉妹は一旦距離を取る。

「あれが噂の早坂姉妹か」
天使のようなシルエットを見上げる。

「六対二ですね。数なら負けてないですよ」
「優勢に戦えるの」
「カケちゃんどうする?」

陣形を組み早坂姉妹との戦闘に備える第十二支部のメンバーたち。

「おねえちゃんどうする?」
「くっ、今は武が悪いわ。神崎カケルは姫ちゃんじゃなきゃ無理よ。裏コードの映像見たでしょ?姫ちゃんの本気と同格よ」
「・・・じゃ、ムリゲーね」
「姫ちゃんに報告よ。第七支部に第十二支部が手を結んでる可能性があるってね」
「行きましょ、ゆず」
「うん」
柚葉は僕等に向けてアカンベーしながら飛び去って行った。

「あれ?何かしらないっスけど帰って行きましたね」
ぽかーんと口を開けている柊。

「あっ、君大丈夫だっーー」
振り返り第七支部の少女の顔を見た僕に衝撃が走ったーー
蘇る昔の記憶ーー忘れかけてた思い出。

「カケちゃん?どうしたの」
固まる僕に呼びかけるエリカ。
その問いかけに答えることなく少女を見つめ続ける僕。
少女は僕の視線に気づき視線を反らす。
僕は意を固め思い切って問いかける。

「ーー優梨奈?」
「ーーーー」
「優梨奈・・・だよね?」
少女は俯いたまま、
「ーー 会いたくなかった」
その返答に、
「ハハ、だよな。引きこもってた人間の底辺みたいな兄貴なんかに会いたい訳ないよな」
「違う!」
「ーーえ?」
「ーーこんな姿見られたくなかった」
優梨奈は、その場から消えたーー

「どういう事・・・かな?」
僕がキョトンとしていると、
「妹さんよね? 自宅警備員になっているという事は妹さんは私たちと同類ってことですよね」
「優梨奈が・・・まさか」
千夏の言葉が胸に突き刺さるーー

僕には、何が何だか分からなかった。
目の前に居たのは確かに妹だ。
何年も会ってなかったけどあの大きな瞳とキレイな顔立ち、口元のホクロは彼女の特徴で間違える訳ない。

その妹が何で?
僕のせいなのか?
僕が引きこもっていたせいでその事をネタに虐められたりしていたのか?
僕のせいなのか?

もし、そうだとしたら僕は・・・

僕の知ってる妹。
僕は妹のことどれだけ知ってるつもりでいたんだ。
いや、僕は何も知らない。
知ってる訳ないがない。
自分のことばかりだった。
引きこもる前も、後も常に自分が一番で周りの事なんて御構い無しに最後は人生の被害者のように振舞っていた。

妹は?優梨奈はどうだった?
彼女はいつも僕のことを見ていた。
気づけば僕の後ろを嬉しそうに付いてきた。
優しい妹。

そんな妹が・・・自宅警備員。

僕と同類ーー

僕のせい?

僕は兄妹の運命まで変えてしまうほど糞みたいな男なのか。
こんなことならせめてバイトでもして一人暮らしをして誰にも迷惑かけずに生きていたかった。

優梨奈・・・ダメな兄貴を許してくれ。

今すぐ追いかけて謝るべきじゃないのか?

何を?

引きこもってごめんとでも言うのか?
僕は、好き好んでこの道を選んだのか?

僕は何で道を踏み外したんだろ?

優梨奈、キミなら僕がなぜ引きこもったか知っているんだろ?



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  




リーダー  乙姫 可憐 A 衝撃波

早坂 乙葉・柚葉姉妹 B 貫通射撃・魔導射撃


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