運命の人に出会えば
ブライアンの部屋
ブライアンはラルフの話を、神妙な顔をしてベッドの上で聞き入った。
まだ本調子ではないブライアンだが、生来の賢さから両親が何かをしたことがすぐにわかった。
「知らなかったとはいえ、僕は最低だ。謝っても許してもらえるとは思わない。ミリィとキースのためにできることなら、なんでもしよう」
ラルフはブライアンに書状を書くよう頼んだ。
ミリィはもう自由であること、解雇ではなく円満な退職であること、この二つを重点的に書かなればならない。将来、ミリィが自身の過去で、他人から傷つけられることがないように、文言には二人で気を使う。
階下が騒がしいことに気付いたラルフは、何があったのかと疑問に思ったが、頭の隅に寄せた。
しかし、ブライアンは違った。両親が近々来ることを知っていたが、あまりに間が悪すぎる。
大急ぎで手紙を仕上げ、手紙を封することなくラルフに手渡す。そして今すぐに、帰るよう勧める。
「ブライアン、ミリィはどこにいるの? あの子ったら、ロンドンに来てよく出かけるようになったようね。監督責任があなたには……」
しかしブライアンの母メアリー・ミニッツの方が、早かった。
話ながらブライアンの部屋に入ってきたが、ラルフに気づくとお辞儀をし、口をつぐむ。
「母さん、ミリィはもう家にいません。もう戻ってくることはないでしょう。ラルフ、手紙を持って早く行くんだ。事情は後でちゃんと話す」
ラルフは頷き、メアリーに一礼すると退出する。
部屋の中からメアリーの悲鳴が聞こえた。
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