運命の人に出会えば

太もやし

ラルフの戦い


 ミリィの目に思わず涙が滲む。
 彼のためにこの力を使いたい、そう思うといつもより力を上手に使える気すらしてくる。
 ミリィは紋章を隠すように命令されたからと、大人しく従っている自分に嫌気がさした。今すぐ、クリュスの姿が描かれた紋章を見たい。
 ソフィーの元に走っている時でも、ミリィの頭は別のことでいっぱいだった。

 ラルフはサムの話を聞き、ソフィーを怖がらせた者の命が既にないとわかった。
 二人組の物盗りに襲われ、ソフィーが持つ手提げ袋を奪われた時に、共犯の持つナイフがソフィーに当たりそうになった。すると、契約者の危機に反応した契約獣が、男を焼いた。
 自分の契約獣が見せたおぞましい光景にソフィーは気を失った。制御を失った契約獣は、契約者を守るため、辺りの障害を消そうとする。
 カーバンクルは本来、リスのような大きさで、宝物庫を守る守護者だ。守りに関しては鉄壁と言っていい。敵とわかれば、額にある魔石を使い敵を焼く、攻撃的な一面を有している。ここまで、巨大化したのは、他に敵がいないか探すためだろう。

 三人は、カーバンクルの足元で守られるように横たわっているソフィーの元に着いた。

「二人とも、カーバンクルの気は私がひく。その間に、ソフィーを起こして、契約獣を制御するよう言ってくれ」

「わかりました。でも、どうやって……?」

 説明する時間すら惜しいと、ラルフは左手の手袋を外す。

「来い、リアマ。ソフィー、サム、走れ!」

 ラルフの左手にある紋章が赤く光る。
 すると青空を引き裂き、巨大化したカーバンクルと同じ大きさの血色にまみれたドラゴンが、現実を侵略する。

 カーバンクルは、突然現れた敵に向かって、大きな鳴き声で威嚇しながら、額の宝石から力を放つ。当たれば、いくらドラゴンとはいえ地に墜ちる。
 しかし、巨大な体躯からは思いもよらないスピードで光を避けると、大きな口を開け炎を放つ。

「あまり傷つけるなよ、余計に凶暴化してはいけない」

 ラルフは落ち着いた声で、ドラゴンに命令する。

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