君に逢えるまで

ノベルバユーザー150902

目覚め

十月十六日 日曜日 午後一時
 俺が目を覚ました場所は病院のベットの上であった。そして傍らに目をやると俺の顔を見て泣きじゃくる妹の唯の姿があった。
「お兄ちゃん、本当に無事でよかったよ」
 何故このような状況になっているのか記憶になく俺は理解できずにいた。
「待っててお母さんとお医者さん呼んでくるから」
 唯はそう言い残すと病室から飛び出していき、すぐに母さんと医者を連れて俺の病室に戻ってきた。俺の顔を見た母さんはどこかうれしそうな表情を浮かべ抱きついてきた。そして医者に現在の体調についてある程度聞かれた。
「よかったあきら、ほんとに心配したんだから」
「母さん、いきなりすぎて俺がなんで病院にいるのかわからないんだけど・・・?」
 すると病室の扉が開きスーツ姿の見知らぬ男性が一人入ってきた。
「それは僕が説明するよ、どうも初めまして本堂あきら君。あっすみませんがお母様と妹さんは少し部屋から退出してくれませんか?」
 母さんと唯そして医者はその黒スーツの男に言われたとおりに病室から出て行った。
「まずは自己紹介から始めようか僕は今回のハーレ彗星落下事故について調査している国家安全管理局に所属している柿といいますよろしくね。まずは君に何が起こったのか説明しよう」
 そして柿さんは昨夜一体何が起こったのか事細かく語り出した。その話によると地球の近くを通過するだけであったはずの彗星の一部が割れて大気圏に突入し、その割れた彗星の一部が運悪く俺たちの学校に落ちてきたのであった。幸いなことに町への被害は少なく落ちたときの衝撃が原因によるけがなどは報告されたが死傷者はいないらしいのだが唯一危なかったのは学校にいた天文部だけであったそうだ。
「しかし驚いたよ、彗星の一部が落ちた中心地にいた君たち四人が目立つ外傷もなく無事でいたんだから奇跡のようだって僕たちの間でも噂してたんだ」
「ちょっと待ってください。四人ってどういうことですか、あの場には俺を含めて五人いたはずですけど?」
 しかし柿さんはどうやら不思議そうな顔でこっちを見つめ返していた。
「んっ?五人いた。君は何を言っているんだい?事故現場にいたのは君と岩沼哲平君、安藤権兵衛君、貝塚恭子さんの四名だけだよ」
 柿さんの話に動揺を隠しきれないでいた俺は口が震えながらもある質問を投げかけた。
「柿さん亜香里は、海亜香里は一体どうなったんですか?死んだんなら死んだとはっきりと教えてください」
「ちょっとどうしたんだいあきら君、僕は嘘なんかついてないよ。それに他の天文部の部員には事情聴取を済ませたんだけどあの時あの場所には天文部の四人だけしかいなかったと聞いてるよ」
「嘘だ!そんなわけあるはずがない。だって現に昨日まで一緒にいたんですよ」
 俺の怒声が病室の外まで聞こえたのか外に待期していたはずの医者が扉を開け部屋の中に入ってきた。
「すみませんが柿さん事情聴取はここまでにして頂けませんか?」
「あきら君も起きたばかりで混乱しているようですし」
「そうですね、ではなにか分かりましたら報告してください」
 そして柿さんが退出した後、母さんがいる前で医者が彼と何を話したのかを尋ねられ素直に答えると
「なるほど多分息子さんは彗星落下の衝撃による一時的な記憶障害を起こしているのだと思うよ」
「記憶障害ですか?」
「はいですが、すぐに直ると思いますよ」

同時刻 大宮高校
 彗星の一部が落ちた現場を見たいが為に学校の校門の前には多くの野次馬達や取材をしたいテレビクルー達で溢れかえっており騒々しかった。そのために校門の前には野次馬侵入防止のために警備員がいたのだがその警備員と十分近く口論をしている老人がいた。
「ですから困ります。おじいさんここから先は大変危険なため関係者以外の立ち入りは禁止になっているんです、いくら研究者だと申されましても許可証を持っていない限りお通しすることは出来ない決まりになっているのですよ」
「そんなことはわかっておる。だがなぁ長年ハーレ彗星を研究しているわし抜きでかそれが可笑しいといっておるのじゃよ。政府は国民に隠して何を企んでいる」
 老人は鋭い眼光で警備員をにらみつけていると警備員が持っている無線に連絡がきた。
「はい了解しました、おじいさんついてきてください」
 警備員に連れられ老人は案内されるままついていきある部屋に通された。その部屋の中央で五十は超えているであろう黒髪に少し白髪混じりのどこか風格のある男が座っていた。
「やぁこんにちは’阿笠博士’私はこの現場の指揮を行っている国家安全管理局の相葉秋と申します。ハーレ彗星の第一人者であられます博士をお呼びしませんでしたこと大変失礼しますですがあなたは既に学会から追放された身、今回の案件は政府で対処する方針が決定もされたためにお呼びしなかったことでもありますのでなにとぞご理解ください」
「それは建前の話じゃろ、お主ら何を企んでおるまさか・・・」
「建前もなにもただそれだけですよ」
 そう言うと相葉は阿笠博士に対し不適な笑みを見せた。
「分かったここにいても何も得られそうにないし帰るとするよ」
 阿笠博士が部屋を退出すると同時に相葉の携帯電話から着信音が鳴り出した。
「柿です今お電話大丈夫ですか?」
「大丈夫だところで被害者達の様子はどうだ?」
「四人とも無事目を覚まし健康体そのものです。ただ一つ問題がありまして本堂あきら君に関することなのですが?」
「どうかしたか?」
「海亜香里という人物に心あたりはありませんよね」
「誰なんだねその人物は?」
「本堂あきら君が私に海亜香里が死んだのか尋ねてきたので一応確認した次第です。ですが医者の話によるところ事故の影響による記憶障害が原因ではないかという話です」
「そうか報告ご苦労、こちらに戻ってこい。あと海亜香里の件はこちらでも確認しようと思う」
 柿からの電話を終了した相葉のいる部屋に研究着姿の若い男性が入ってきていくつかの極秘と書かれた資料を手渡してきた。
「こちら例の件に関する中間報告書になります」



























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