君に逢えるまで

ノベルバユーザー150902

彗星観察

十月十五日土曜日午後六時
「唯ちゃん、あきらと連絡がとれないんだけどどこにいるか知らない?」
「お兄ちゃんなら部屋で寝てますよ」
「そっかなら今からあきらを叩き起こしにいかなきゃね」
 すると亜香里は階段を駆け上がって行くと真っ直ぐあきらの部屋に向かい勢いよくあきらの部屋の扉を開けた。
「起きろ~あきらのバカやろー」
 部屋中に響き渡る様な大声で叫んだ。
「んっ~なんで亜香里がここにいるんだ?」
「今何時か分かってる?」
 俺はベットの横に置いてある置き時計に目をやると午後四時をまわっていた。
「権ちゃん達との約束は五時よ皆は既に集合場所にいるのにあきらだけ来てないから迎えにきたのよ。じゃあ外にいるから速く準備しなさいよ」
 それは今日の朝一で権ちゃんからの電話があり今夜学校の屋上の使用許可がおりたので一度昼間に集まって夜の準備をしてから学校に向かうことになったという内容だった。
 俺は着替えを済ませて一階に降りると妹の唯が玄関の前に立っており俺に話し掛けてきた。
「お兄ちゃんは学校で星を見れていいなぁー」 
「お前も来年同じ高校に入ったら見れるよ」
 唯が羨ましむのも無理はない何故なら俺の高校から見える景色はかなりいいものであるからだ。唯と話した俺は玄関を出ると亜香里が待っていた。
「ほら行くよあきら」
亜香里の手を引っ張られながら俺たちは走り出した。

俺の家から三十分近く歩き集合場所である加茂公園に到着するとすでに権ちゃん達三人の姿があった。
「おっ、やっときたか」
「遅れてごめんみんな」
「別に気にしてないよ。それよりあきら君も来たことだし出発しようか」
俺たちが学校へ行く道中哲平が小言で話しかけてきた。
「さっき公園で話題に上がったんだけど、今日の観察会の後告白するの?」
「えっ?何で知ってるんだよ」
突然の哲平の爆弾発言にどよめきを隠せず自分の顔がほてっているのを感じた。
「その台詞にその反応はイエスって意味だよね。ならあとで二人っきりにしてあげるよ」
そう言った哲平の顔はニヤついていた。
そんなやりとりをしているうちに俺たちは学校に到着した。すると部長である権ちゃんが
「よし、女子は夕食の準備に取りかかってくれその内に俺たちで観察会の準備を済ませておくからさ」


午後十時
夕食を食べ終え俺と亜香里は、ゴミの後片付けを行い屋上に向かう階段の前にいた。
「そういえば哲平と学校に来るときこそこそ何話してたの?」
「実はおまえに伝えたいことがあるんだ」
「何よ急に改まって」
「前から思っていたんだけど俺はおまえのことが・・・」
意を決め亜香里に俺の思いを伝えようとしたとき思いもいらない横槍が入ってきた。
「ゴミ捨てありがとうねちょうど今ジュース買ってきたけどいる?」
その横槍の正体は下の階段から上がってきた恭子ちゃんと申し訳なさそうな表情でこっちを見ている哲平であった。
「ありがとう恭子ちゃん」
亜香里は恭子ちゃんから手渡されたジュースを持つとそのまま二人で先に階段を上っていき俺と哲平は置き去りにされた。
「もしかして今のタイミングだったか?」
気まずそうに尋ねてきた。
「そのもしかしてだよ!」
「はぁーすまんなかった」
「まぁ気にするなほら行こうぜ」
屋上に出ると、権ちゃんが手招きをしているのが見えた。
「こっちに早く来いよもう彗星が通っているのが見えてるぞ」
「マジかよ」
急いで権ちゃん達のもと駆け寄り上空に目をやるとそこには青白い光を纏いながら動いている彗星が肉眼でくっきりと見えたのだがどこか違和感のようなものを感じた。その違和感のようなものの正体は亜香里のある一言によりはっきりした。
「ねぇなんかあれこっちに近づいてきてない?」
確かに亜香里の言ったとおり彗星はこっちに向かって落ちてきていた。
「急いでここから離れよう彗星がここに落ちてくるかもしれない」
「そうね速く離れましょ」

    しかし時既に遅いことを俺たちは知らなかった。






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