停導士の引き籠もり譚
化かし合いの結果を視よう
「……ハァ、面倒だった」
用意されたベットにジャンプして飛び乗ってそう呟く。
細心の注意が必要にも程があるだろうが。
監視員とのダンジョン攻略が終わり、既に王にも俺の戦闘力に関する情報が伝わった。
一度目の公式な報告は王城の間で行われていたので、俺も混ざった言ったり聞いたりしなければならないことを面倒に思い、二度目の執務室で行われた真の報告会を別の方法で聴き取ったり……ハァ。どうしてこうも、動かなければならないんだよ。
「"ステータス"……やっぱり、チートだな」
成長したユウキの持っていたスキル。
それは、人々を急激に強くできるスキルであった。
――(経験値増加)・(成長速度向上)。
それこそ彼が獲得したスキルである。
詳細は説明しなくても思うからしないが、これを持っているとLvが上がり易くなる。
実際、あまり強い魔物を倒してもいないのにLvが上がっているのにはビックリした。
本当、【勇者】は非常識だよな。
しかもこのスキル、自分が信頼する仲間だと認識している近くの仲間にも影響があるんだとさ。
ボッチな俺はともかく、リア充としての王道を突き進むユウキなんかが持っていれば……最強のパーティーの完成だな。
……今までに行った従魔とのレベリングは意味があったんだろうか。
これを持ってやっていれば、もっと効率良くできたのかも知れないのに……。
「ま、そういうことはどうでも良いし、さっさと寝るか――"お休み"」
特にやることも無いしな。また情報を纏める時間にしておこうか。
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『それで、イムの実力はどうなんだ』
あ、この記憶はさっき言った聴き取った方のヤツだぞ。
見えてはいなかったので、今度は視てみようと思ったんだ。
その場――執務室には、王と監視員の女がいる。
椅子に座っている王はともかく、監視員の方はいかにも裏の人って感じの格好だな。
『はい。こちらが報告書となります』
『うむ……これは、本当なのか?』
『あくまで、私から見た場合の評価となります。客観的な評価は既に公然の場にて行いましたので、省略していますが』
『それは構わん。それより、気になる点を確認していくぞ』
そう、最初が紙による報告だったから気になっていたんだよ。
王の視界は確保してあるし、早速確認していくか。
あ、その間は会話を聞いていてくれ。
『ステータスは偽物とあるが……』
『異世界人の成長速度は、私達を凌駕するものです。イムの迷宮に潜る前のLvを視た後、必ずLvの上がるだけの魔物を倒したのですが……全く変化がありませんでした。
これで、少なくとも偽装系のスキルを持っていることは確定しました』
『では、この戦闘力はどうだ?』
『私が裏で魔物を倒していることには気付いていませんでしたが、弓の技術はかなりのものであると推測されます。彼が狙った場所へと必中でしたし、何より一度も属性魔法を行使していませんでした』
『確か……異世界人は選別者以外は必ずなんらかの系統に当て嵌まる属性適性を持つ、そう伝承には記されていたな』
『はい。ですのでそこから考えられることこそが、そちらに書かれていることです』
『うーむ……。ここまでの評価を受けて置いて、無能ということは無いだろうし……やはり唯一スキルの持ち主か?』
『もしくは、それに匹敵する系統外魔法を有している可能性が高いです』
『厄介な。……どちらにせよ、後のことはこれを見ればどうにかなる。下がって良いぞ』
『ハッ。失礼しました』
ま、こんな感じの会話があったな。
少し省略したけど、大体似たような会話が続いていた。
俺としては(偽装)の更新にまで気を配らなかったことを失念している。
このスキルの持ち主に次に会った時、必ず成長したこれ系統のスキルをコピーしないとな、と思ったぞ(俺自身がどうにかしようとは思えなかった)。
報告書の方も大体理解した。
要するに、一部バレていたってことだな。
偽装と魔法、それと弓の命中率はさっきの会話から分かるように当然バレており、矢の強化に関しても少しバレていた。
どうやら、感知のスキルで簡単に気付けるらしいぞ。
そっちもそっちで対策を見つけないとな。
一つだけ俺が気になったのは『選別者』って単語である。
もう字的に主要キャラに関わりそうな単語だよな。
さっきの会話と合わせて推定するに、ユウキ達とヒ……ヒロキ君がそれに当て嵌まるだろう。
【勇者】のような神聖属性――所謂固有属性系の持ち主と、ヒ……ヒトジ君のような後から覚醒する正体不明の初期は最弱な奴……まぁ、どっちだろうが最後には強いんだから関係無いか。
俺も唯一スキルがあるから、一応はそれに含まれるんだが……これの持つ属性って一体何なんだ?
どこかの聖杯を求める作品だったら、殆ど悪とか混沌的なポジションに入ってそうなスキルのラインナップなんだが……今までに聖杯があるって情報は入っていないしな。
報告書を見るに、俺への警戒レベルは定まることだろう。
その振舞いを見て、俺もどうするか決めるかな?
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