異世界召喚された俺は、チャットアプリを求めた
スレ31 会話方法は謎のまま
焼肉を食べたい気分になったので、飯は旅の途中で倒した魔物の肉となった。
「……うーん、やっぱり美味い!」
俺は別に評論家じゃないから、細かいことは説明できないが……あれだ、A5とかを軽く超える味だと思ってくれ。
料理自体は教わっており、素材の味を生かすぐらいの腕は持っていると自負している。
……まあその技術を教えてくれたヤツは、スーパーで特売品として売っている肉をこれと同等にするぐらいできるんだろうな。
「さて、そろそろ行きますか!」
周囲に展開していた“虚絶”を解除して、再びダンジョンを潜り始める。
……ああ、“虚絶”は結界だ。
概念認識選別結界? まあ、通る物を自由に選べる結界を創ったんだよ。
“虚無防壁”だと足りないと思ってさ、改めてイメージをしっかりとしたらできた。
今はそれを鼻や目にも使っており、この墓場の嫌な物をシャットアウトしてるぞ。
並み居る魔物は全て“虚無弾”で撃ち倒し続け、延々と深い深い墓の底へと向かう。
このダンジョンは俺向きな場所だ。
アンデッドは思考能力が低いので、俺の凡庸な魔法でも当たってくれる。
旅の間で理解したのだが、賢い魔物相手だと魔法が当たらないのだ。
俺の使える魔法はあくまで(無魔法)だけ、一種類でもナツキのように多様な使い方のできるの(回復魔法)ならともかく、魔力を固めるだけの(無魔法)ではあまりにもお粗末だと悟った。
武術も中途半端、魔法も下手クソ……俺は本当に何もかもが成長しない器用貧乏だな。
なので、それが露見しないようにどうにかしていくしかない。
アイツらに習った技、スキルとして記されることのない力を振るい、この世界を生き抜いていくしかないのだ。
「だからって、これは無理だろ」
『……ヨコセ』
「首の無い騎士、デュラハンだっけか?」
『……ヨコセ、ヨコセ』
はい、こちら現場の朝政です。
ダンジョンも潜っていったら広い場所。
つまり、ボス戦の真っ最中でございます。
相手は首なしデュラハン、馬にちゃっかり騎乗しているので、実質2VS1じゃん。
「俺にせめて、魔物を使役する能力があればなー。俺ではない誰かに、サポートをするだけで良かったのに」
『ヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセ!』
「(無魔法)ってそもそも補助系の魔法みたいだし、俺の才能の無さが悲しいよ」
『ヨコ――』
「すまないな、俺にもやりたいことがあるんだよ。首は、それを見たいからお前には渡せないんだ(――“虚無剣”)」
『――ッ!』
デュラハンが馬上で下す剣に、同じく剣を当てて抵抗する。
勢いを流すように剣を動かし、デュラハンの体勢を崩そうとする……が、馬を器用に操り、崩れることなく走り抜ける。
(――“虚無槍弾”×5)
デュラハンを狙っても剣で弾かれるのは分かっているので、牽制用の槍を一本と馬の脚へ各一本ずつ槍を飛ばす。
さすが騎士と言えようか。
槍を四本躱して弾くことに成功していた。
それでも、残った一本が馬の脚に突き刺さり、デュラハンの馬を靄となって消滅する。
『……ヨ、ヨコ、セェエエ』
「いやいや、首が無くてもやれることはいっぱいあるんじゃないか? ほら、ラジオ体操とかさ」
『ヨコセェエエエエエエエエエ!!』
(たぶん)狂乱状態になったデュラハンは、激しく剣を振り回して迫って来る。
……今さらだが、デュラハンってどうやって喋ってるんだ?
首入りの西洋兜を持っているわけでもないし、やっぱりスキルなのか?
もう(鑑定)スキルは無いし、アプリを使っている余裕なんてない。
……ま、別にいっか。
「えっと、“流星斬”……だっけ?」
相手の斬撃を利用したカウンター剣術。
フユツグに習った技の一つだが……相手が複数の時か、嵐のような斬撃を繰り出された時しか使えない技らしい。
今回は後者を満たしているので、なんとなく使ってみた。
荒々しく襲い掛かるその猛攻は、俺の剣によって軌跡を誘導されていく。
古臭い、怨念が煮詰まって憎悪の一撃は、導かれるように美しく洗練されたものへと変わっていった。
「もう、体が覚えてるから使えるけど……未だに原理が分からん」
なんで、剣を動かすだけで相手の斬撃が流星みたいになるんだろうか。
フユツグは『いいか、どんな剣にも最高の一撃ってのがあるんだ。この技は、こっち側でそれを再現してやるものなんだ』とか言っていたな。
うん、さっぱり分からん。
最高の一撃? まあ、剣豪が一般人に実践中に剣を誘導してやった……みたいな感じで理解している。
「よし、どんどん下に行くか!」
今のデュラハン、置き土産を用意してあったんだが……まあ、必要になったら話すことになるだろうからカットで。
探知が間違いないなら、残り半分は切っているはず。
ちゃっちゃと攻略して、地上でレッツパーティーと洒落込みたいよ。
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参加者:アキ/フユツグ/ユキ/ケント
フユツグ:どうだ、あれが俺の必殺剣術の一つだ!
ケント:ふっ、あれくらいなら俺でもできる
アキ:ほらほら、落ち着けってお前ら
ま、あれなら俺でもできるけどな
ユキ:柔剣のようなものか?
それならば某でもできるが
フユツグ:お・ま・え・ら!
あれはあくまで多対一用の技なんだよ
あれはあくまでおまけだおまけ
実際のを見て、驚くんじゃないぞ!
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刀剣組のチャットは、これから専門用語が溢れるのでカットする。
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