異世界召喚された俺は、チャットアプリを求めた
スレ08 魔法を使用
新しい朝が来た!
このフレーズから始まる曲の意味を、俺は初めて知ったかもしれない。
……喜びに広げられるだけの胸は無いが、希望の朝に広がる青空)になら広げられるかもしれない。
「さぁ、俺の異世界ライフが始まるぜ!」
誰からも期待されていない俺の異世界生活が始まったのだと、俺は思った。
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訓練場
「――引き続き、今日も魔法の訓練を行うからな。全員魔法を習得できただろうから、今回からは得意な属性をより高める為に宮廷魔道士を用意した。全員、今日から一週間は魔法の威力を高める為に訓練をするぞ」
朝食などを終えて、訓練場へ集まった召喚者達に、お偉いさんはそう言ってきた。
彼の周りには、分かりやすくローブを別々の色で着た美男美女が立っていた。
「火属性担当のメーラだ。攻撃力を求めるなら、火属性が一番だぞ」
「水属性担当のヒャードです。水は世界の中で最も多く存在しています。それを扱う力を身に付けてみませんか?」
「風属性担当のエーアよ。風に形は無い、だからこそ、最も自由にイメージを変えられるわ。発想力が強い人は、是非習ってみてね」
「土属性担当のストーン。俺達は大地を踏みしめて生きている。だからこそ、人は地面と密接な関係を持つ。四属性の中で最も身近にある属性だ……やってみないか?」
俺達の前で、四人の方々がそう挨拶した。
他にも数人立っているのだが、挨拶をする様子は無い。
……着ているローブの色からして、恐らく光や闇、回復などの担当なのだろう。
「……では各自、自分の持っている属性魔法の種類と数を考えて、今日一日、誰に教わるかを選んでほしい。……これから呼ばれた者だけは、すまないが少し残ってくれ」
そう言ってお偉いさんは、数人の人物の名前を呼んでいく。
「ユウト様、アヤ様、セツナ様、レン様、コウタ様…………」
そして、最後の方で――
「……エレナ様…………そしてアサマサ。以上は残ってくれ」
あっれ~? 俺だけ様が付いてないぞ~。
バグキャラに用は無いってか。
あ、でもそれなら放置するか。
……どうしたんだろうか。
◆ □ ◆ □ ◆
結論から言おう。
俺は担当無しで魔法を練習することになった……in 隅っこ。
呼ばれたのは特別な魔法を習得できた者達で、紹介されなかった魔道士達が彼らにその魔法を教える為だそうだ。
「……すまないが、無属性の宮廷魔道士はいないんだ。アサマサ、お前は一人で魔法を練習してくれ。あぁ、場所が余りないからな。お前は……向こうの方でやっていてほしい」
そんなことを言われ、俺はボッチ練習となりました。
……普通の奴ならば、メンタルがズタボロになっていただろう。
俺の場合は既に何度か経験済みだから気にしないが、こういう優しいんだか苛めなんだか分からない微妙なヤツが――正直、一番クるんだよな。
「……よし、魔法練習だ」
魔法の発動方法は、何となく分かるとここの人達は言っていた。
……全然分からなかったんだけどな。
なので、ちゃんとアキに訊いておいた。
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アキ:魔法は体で魔力を練って発動させるんだ
アサマサ:先生! 何を言っているのかもう分かりません!
アキ:ここら辺は感覚の問題だからな
まぁ、念○力みたいなもんだ
適当に血液の中に特別なものが流れていることをイメージするんだ
アサマサ:……成程
アキ:ここで、普通の奴は属性のイメージをしたりしないといけないが、無属性は別だから省くか
後はその練った魔力をどういう風に発動させたいかをイメージするんだ
アサマサ:ありがとう、参考になったわ
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魔力に関しては未だ掴めていないので、血液に異物があると考え、それを心臓に集めていくイメージをする。
そして今度は、発動させたい魔法のイメージを行う。
「えっと~……無属性、無い、刈り取る、鎌……"虚無鎌"」
その名を唱えた途端、体の中から何かが一気に減った感覚に苛まれる。
頭をハンマーで叩かれるような頭痛に襲われ、視界も揺れ動いている。
「……フラフラする。さっき減ったのが魔力なのか。……うん、感覚は掴めた。だけど、やけに体が重いな」
MPがどれだけあるのかを確かめる為、自身に(鑑定)を発動すると――MP:0/100 という表記を発見する。
今の(鑑定)を使った時、更に頭痛がした。
「あぁ……MPが切れたからか。道理で眠気までしてくるのか」
この世界の人達は、MPが切れるとその瞬間に気絶するらしいが……異世界人は本来はMPが無い世界に居た為、MPが切れても気絶すること無く、意識を保てるのだ。
「……頭ガンガン、吐き気がする……肝試しの時のあれって、魔法の影響だったのか?」
昔、友達達と行った肝試し。
その時、幽霊に憑りつかれたらしいのだが……意識を取り戻した後、今のような症状が俺を襲ったのだ。
……てっきり、誰かが俺に酒を呑ませたのかと思ったんだが……どうやら違ったみたいだな。
疑って悪かったな、みんな。
閑話休題
「さて、折角創ったんだし、試してみるか」
俺の創った鎌は死神が持っていそうな大鎌では無く、草刈りに使いそうな小さな鎌だ。
……刈り取るのイメージが、魂じゃ無くて草だったからな。
「よいっしょ――(スパンッ)へっ?」
鎌の届く範囲を調べる為、何も無い宙で素振りをしてみたのだが。
鎌を振った先――壁があった筈の場所には……何も存在していなかった。
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