約束〜必ずもう一度君に〜

矢崎未峻

至福の時

 あれからかれこれ15分ほど何を依頼するか悩んでいる。
 候補はいくつかある。それは確かだ。しかしそれらを全部頼むと手元に残る金額が寂しいことになる。
 う〜ん・・・・・よし、決めた!

「依頼、させてもらうよ。依頼するものだけど、ウルフソード、ウルフガントレット、ウルフグリーブ、双虎剣牙、ボーンソード、フォートレスツリーロッド、ウルフブレスレット、剣歯虎の腕輪、ウルフピアス、ウルフベルト、剣歯虎ベルト、それと緑石のネックレス。この12個依頼するよ」

「わかりました。では完成までに一週間ほどかかりますのでその辺りにもう一度お越しください」

「了解、じゃ、よろしく頼むよ」

「そしてこれが依頼されたものの金額を引いた今回の売却金額になります」

 そう言って渡された金は、想定していたよりも多かった。確認のために数えると、金貨25枚と銀貨3枚に銅貨が50枚だった。
 明らかに多い。ざっと金貨5枚ほどは多いぞ。

「これ、金額間違えてないか?金貨が5枚ほど多いんだが・・・」

「それはたくさん依頼していただいたお礼です」

「いや、悪いよ。返すから」

「受け取ってください!お願いします!」

「・・・なら、金貨2枚だけ受け取っておく」

「い、いえ、5枚ともお受け取りください!」

「じゃあ、3枚は俺からのプレゼントってことで」

 そう言って無理やり握らせた。
 まだオロオロしてテンパっていたが、依頼のことを改めてよろしくという旨を伝えて鍛冶屋を出た。
 これで俺のやりたかったことが終わった。そして

「暇になったな。ユーリ、お前なんか予定とかあったりする?」

「なんで?」

「いや、することがなくなったしユーリには俺の予定に付き合わせたから今度は俺がユーリの予定に付き合う番かと思って」

「あ~なるほどね。そうだな~、ちょっと買い物がしたいからそれに付き合ってもらおうかな!」

「分かった。じゃあそれで行こう」

 それからは普通に楽しかった。雑貨屋に行ってちょっと遊んでみたり、昼飯を食べにユーリおすすめの店で食べたり話したり、服を見に行ったり、異世界ならではの武器屋や防具屋に行ったり、そんなことをしているうちに俺の頭の中にひとつの単語が浮かんだ。”デート”だ。
 ・・・・うん、これはデートと言っても過言ではない行動の数々。え、待って。そんなん意識したら今更だけど緊張してきた。いや、待て待て!この俺がデート??ハッ!ありえない!うぬぼれも大概にしろ!
 第一こんな可愛い子が俺なんかとデートなんて、と思い始めたところで

「なんか、今更だけど、デ、デートみたいだね」

 あろうことか顔を真っ赤にしたユーリが止めを刺した。こうなってしまえばもうダメだ。

「そ、そうだな」

 俺はそう答えるのが精一杯で完全に思考が停止してしまった。
 しばらく、気まずい沈黙が流れる。
 その沈黙を破ったのは、今の俺たちにとってはとてもありがたいことに、アリシアだった。

「2人とも、何してるの?散歩?」

「まあ、そんなとこだな」

 ユーリがなぜかだんまりだが気にしないでおくことにする。
 やっと救世主が現れてホッとしたのもつかの間、アリシアが次に口にしたのはとんでもないことだった。

「じゃあ、私も一緒に散歩する」

 アリシアさんや、そんな爆弾発言かまさなくていいから。
 ねえ、なんでユーリvsアリシアみたいになってんの?俺を挟んでなんでバチバチ火花散らしてんの??

「っ!?ユユユ、ユーリ!?」

 何!?何が起こってる!?なんで急に手なんか握ってきてんのこの子!?何気に握り方が恋人繋ぎと呼ばれるものだし!!

「っ!?ア、アリシアさん!?」

 今度は何が起こった!?アリシアが俺の腕に自分の腕を絡めた事だけは辛うじて理解できる。だが、なぜだ!?
 ユーリが対抗心を燃やしたのか手を握るから腕に抱きつくにチェンジした。
 それをみたアリシアも俺の腕に抱きつく。
 まさに両手に花だ!!
 なんて呑気なことは言ってられない。ここは公共の場です。
 繰り返そう。ここは公共の場なのだ!!
 視線が痛い。周囲の人々、主に男からの視線が痛いです・・・。殺気も感じられるのは気のせいだろうか?
 気のせいなどではない。なにせこの2人は誰がどうみても超のつく美少女だ。そんな2人が1人の男の腕に抱きついているのだ。そりゃ周りの男は殺意も湧くだろう。
 逆の立場なら俺でも殺意が湧くもんな。それは仕方ない。そう、周りは何1つ悪くない。勿論、この2人も悪くない。悪いやつは誰もいない。場所が悪いだけだ。
 と、いうわけで

「あのさ、2人とも。そうしてくれてるのは物凄く嬉しいし幸せなんだが、その、場所が場所だから、離れようか?」

「「・・・ッッ!?!?」」///

 周りを確認、認識、瞬時に離れる、そして赤面。その見事な流れをものの2、3秒でほぼ同時に完了してのけた2人。
 あのね、1番恥ずかしいの、俺なんだけど?1番怖い思いしてるの、俺なんだけど。
 ま、それ以上にとても良い思いもしたけどね!!
 幸せだった。正直名残惜しい!!!
 それにしても、なんでこの2人は俺にこんな事をしたんだろう?

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