約束〜必ずもう一度君に〜

矢崎未峻

この世界の当たり前って・・・

 さてまずは何から聞こうか。あ、いや、名前聞かなきゃな。危うく忘れるとこだった。

「え~っと、まず名乗ってもらえるか?食い終わった2人な」

「あぁ、そうだね。僕はダスト。食べ物をありがとう」

 ダスト、ね。英語で直訳したらほこりだったよな?・・・やめよう。

「私はカグラだ。よろしくたのむ」

 美人さんはカグラね。
 さて、ようやく、今度こそ本題に入ろう。

「俺は成宮優輝。本題に入っていいか?」

「その前に、君は・・・いや、あなたは貴族の方ですか?」

 は?

「家名があるから当たり前じゃないですか!ダストさん、寝ぼけた質問しないでください!殺されちゃうじゃないですか!」

 今のユーリの発言で分かった。名字を言ったのがまずかったらしい。

「あ~、悪い。貴族とかじゃないんだ。異世界から来たから、元の世界ではこっちで家名?って呼ばれてるのがあるのが普通だったんだ」

「そ、そうなのか?ならかしこまらなくてもいいんだな?」

「あぁ、こっちの言い方で名乗りなおす。改めて、ユウキだ。さっきも言ったけど異世界から来たからこの世界のことを何も知らないんだ。だから食事の対価としてこの世界のことを教えてほしい」

 あれ?何か変なこと言ったかな?全員固まってるんですけど?
 徐々に驚愕の表情になって行くんですけど!?

「ほ、本当なの?本当に異世界人なの?」

 アリシアが敬語をやめて聞いてきた。いきなりの馴れ馴れしさに驚いたのは内緒だ。

「あぁ、本当だ」

「分かった。教えるよ」

 結構時間をかけて細かく丁寧に教えてくれた。
 だが大事なとこしか頭に入ってない。まぁ、いっか。
 まとめると、常識、というかやってはいけないことはあっちと変わらない。ただし、貴族という概念が加わるのでその辺が面倒だった。怒らせるといけない程度の認識で十分だと思う。
 しかし、これはあくまでも街の中での話であって外では例外だ。なんせ、俺も散々戦った化け物ども、通称モンスター(そのままだった)がいるからだ。外に出れば、任務ーー或いはクエストーーでもない限り貴族などの身分は形式上はなくなるそうだ。最も、先ほどの4人の態度からも分かるだろうが、実際はなくなったりなどしないようだが。
 後はあっちとは違う点もまとめておこう。まずは先ほどもちらっとでたモンスターについて。基本的に自然と、勝手に湧き出るそうで、絶滅させても同じのが湧くらしい。よって、遠慮なく、制限も一切なく、倒せるなら倒せが常識だそうだ。ちなみにそういったことを専門にする冒険者とやらもあるそうだ。4人ともこれに該当するらしい。身分証明にもなるし、登録の際プライベートなことは一切聞かれないから無戸籍でも簡単に登録できるみたいなので街に着いたら登録しようと思う。
 次に魔法についてだ。やはりあるらしい。さすがは異世界さん。期待を裏切らないテンプレ具合だ。
 だがここまで見事にテンプレなのに職業やステータスはないらしい。どうせならここもテンプレでよかったのに。
 そんなことよりも俺が一番驚き、同時にショックを受けたのは、ステータスはないくせにアイテムボックスはあるということだ。容量は無制限ときた。つまり、拾った刃折れの剣も、レア度の高い剣も、売ろうと思ってここまで引きずってきた大量の荷物も、重さを感じることなく、しまっておくことができたのだ。なんて無駄なことをしてきたのだろう。もうさっそく使い方を教えてもらい使っている。超便利。あっち戻っても残っててほしい。てか俺戻れんのかな?まだ何の目処も立ってないんだが・・・。
 閑話休題。
 そろそろ意識をちょっと心配そうにこっちをみてる4人に戻そう。

「悪い。整理するのに時間がかかった」

「それはいいが、やけに落ち着いているのはなぜだ?普通混乱すると思うのだが・・・」

 至極当然の質問だった。だがこちとらもう何日も前にこっちにきているのだ。自分の状況を理解して落ち着くには十分な時間があった。
 そいつをそのまま伝えると酷く哀れみの籠った目になりながら納得された。なぜ哀れまれた?解せぬ。

「あ、そうだ。もう1つ聞きたいんだが、俺と同じ格好をしたやつを見なかったか?」

 4人は顔を見合わせた後、

「見てないな」
「見てないよ」
「見てないです」
「見なかったな」

 などとそれぞれの言い方で見なかったと答えた。
 なぜかほっとした。

「そうか、悪いな変なこと聞いて」

「いえ!とんでもないです!変なんてことないですよ!」

「格好は変だけどな」

「この格好ってやっぱ変なのか?」

「変だね」
「変だよ?」
「変だな」
「私は似合ってると思います」

「ユーリちゃん以外は酷いな。軽く凹むわ。これしかないからどうしようもないけど」

 着の身着のままで来たんだ、仕方ないだろ!
 てか改めてみるとボロボロだな。寧ろよくここまで持ってくれたよな。

「僕の服でよければあげようか?背丈は違うけど、この前間違えたサイズの服を買ってしまって。それがあるはずだから」

「悪いけどそうしてもらえるとありがたい」

「ただ、シャツとズボンしかないんだ。しかも、上下ともに黒一色」

「それでも、今の格好よりはましだ」

 シャツとズボンだけなのは我慢するほかないが、色は気にならない。寧ろ、黒は好きだし目立たないからグッジョブ!
 そんなこんなでこの世界の服を貰えることになった。
 そして着替えてきた。のはいいのだが、今は夜だ。数日前に確認したように夜は冷える。つまり

「寒い!!」

 決して耐えられないほどではない。しかし、寒い。
 どうしたものか。ボロボロのブレザーでも羽織るか?いっそ獣臭いが毛皮を被るか?

「あの、よかったらこの毛布使ってください。それと、なにか服にできそうな素材はありますか?素材があれば服とかコート作りますよ?」

「・・・ありがとう!よろしく頼むよ!!」

「は、ははははい。分かりましたから、あの、離れて貰えないでしょうか?その、い、嫌ではないんですけど・・・その・・・」

「あ、ごめんつい」

 思わず抱きついてしまった。だって仕方ないじゃん!天使だよ?天使が現れたんだよ?
 あれ?なんかちょっと残念そうにしてる気がするのは気のせい?だよな。
 そんなことより素材素材!イノシシ、は服にしたくない。臭いから。じゃあ、サーベルタイガー?それもちがうな。あ、オオカミも何匹か倒したな。オオカミにしよう。
 種類もいくつかいたはずだ。黒いのと暗めの青いのと赤いの、そして白いの。さらには灰色や緑などと言ったものもあった。
 それらを全てアイテムボックスから出し、差し出す。

「これで作れるかな?」

「はい、これだけあれば・・・って、ブラックウルフを倒したんですか!?」

「ブラックウルフって黒いの?」

「はい、そうです!一応Aランクのモンスターなんですけど?」

 名前のままでよかったのね。てかAランクって言われてもイマイチピンとこない。さっきランクについては教えてもらったけど1番下がFでE、D、C、B、A、S、SSの順に上がっていく。
 あ、上から3番目のランクだ。成る程。

「あ〜、どうりで強かった訳だ。あいつに剣2本もダメにされたからな〜。ケガも半分以上はそいつから受けたのものだし」

「もうなんか呆れて突っ込む気も失うね」

 アリシアに呆れられたんですけど?
 皆さん頷いて同意されてるんですけど?
 この雰囲気は強制的に変える必要があるな。

「1つ聞いていいか?獣臭さとかって消せるの?」

「はい、完璧に消せますよ。そう言うスキルがあるので」

「じゃあ、この黒いのでコート作ってくれ。ほかの使えそうなのも全部預けるからデザインとか全部おまかせで服作って。余ったら全部あげる」

 結局イノシシもサーベルタイガーもその他のも全部渡した。
 サーベルタイガーの皮をみてさらに驚いていたが今度はスルーした。
 ユーリは目を輝かせていた。これはなんとなくだが期待できそうだな。
 この後採寸したのは言うまでもない。
 さて、今の会話の中で説明されてない俺の中でかなり大事な言葉が出てきたんだが。

「スキルってこの世界にあるの?」

 え、待って?何言ってんのこいつ?みたいな顔で見ないでくれる?てかそれどっちの意味?ある訳ないだろ的な意味?もしそうなら恥ずかしいなんてレベルじゃないんだけど!?

「あるに決まってるじゃないか」
「そうだよ、あるよ」
「当たり前じゃないですか」
「頭でも打ったのか?」

 あ、あるんだ。良かった。ある訳ないだろ的な意味じゃなくて。
 もしそうだったら恥ずか死んでたわ。

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