記憶共有的異世界物語
エピローグ2:記憶改竄的現世界物語
俊介の心情は荒れていた。
この上なく、荒れていた。
自身の存在が【無かったこと】にされた世界。
そんな荒れた気持ちを抑えんと、俊介はBar.レインウォーターに向かった。
━…━…━…━…━…
カランコロン....。
至福の鐘の音と共に店主の老人が元気に叫ぶ。
「やぁいらっしゃい」
年を感じさせないその応答から、やはり馬場さんからも記憶が消えてるんだなぁと思い荒れた。
店はいつにもなく繁盛していて、店内にはよく知っている顔が揃っていた。
奈恵に冬弥。純也まで居る。
どうやら彼はもう神では無いらしい。
彼から感じたあの気迫が消えている。
目の前には彼女の様な女性を連れていたのだが、これが話に聞いた【純也に存在ごと消された女】なのだろうか?
そんな事を考えながら俊介は、席にカタッと座る。
「マスター。【ウィッチラニーノーズ】貰ってもいい?」
「お客さん随分詳しいね。もしかして前に来てもらった事あった?年のせいで物忘れが激しくってね、ハハ」
物忘れどころか1ヶ月程記憶消えてますよ。と言いたい気分だったが、みんなに訪れた幸せを感じさせる馬場さんのその話し方を聞いてグッと抑えた。
グラスの音が机に反射し、俊介の目の前に【ウィッチラニーノーズ】が置かれた。
金色に光るその飲み物をガバッと口に含んで、俊介は至福を感じていた。
「あの....もしかしてなんですけど。以前何処かでお会いしませんでした?」
!!?
奈恵だった。
奈恵は不思議そうな顔をしてこちらを見つめる。
あぁ、こうやって見つめ合える機会ももう来ないのか。と感傷に浸るのと同時に、自分のやらなくては行けない事を思い出す。
「いえ、多分人違いだと思いますよ?僕の名前は俊介。ただの高校生ですから」
ニッコリと笑って返した。
「何処かで見た気がするんですよね~。あ!突然話しかけてすいませんでした。ごゆっくり~」
そう言って冬弥の座っている机に戻る奈恵。
カツン....とグラスの音が反射し、空になったグラスをカウンターに返す。
俊介は店を後にした。
━…━…━…━…
月明かりが空を照らす。
コツ....コツ....とこちらに近づいてくる足音が一つ。
ヴィクセンだった。
「アンタ....本当に何者さね。シュンを倒して世界一つ滅ぼして、そしてもう一回【作り直す】なんて」
「僕は至って普通の高校生だよ。なんの変哲も無い....いや、なんの変哲もない普通の【万物を司る神】さ」
「マヨイ様が呼んでるさね。はいこれ」
ヴィクセンの手には【移】の文字が握られていた。
俊介がその文字に触れると、あたりの空間が歪みパッと消えた。
再び視界が安定すると、目の前にはマヨイ・ヴァレンが居た。
「まぁ俊介。いらっしゃい」
「まぁって....何の用だよ」
マヨイ・ヴァレンの目が座る。
数秒の沈黙が走り、マヨイが口を開く。
「ミレイちゃんは?」
「死んだ。と言うより僕が【殺した】」
「....そう。結局そうなっちゃったのね」
「あぁ」
「....」
マヨイ・ヴァレンは授業中に寝る学生の様に机に置いた腕に顔をうずめた。
「はぁ....。ねぇ、貴方とシュンの違いって何だと思う?」
「アイツは汚い【殺人鬼】。僕も醜く汚い【殺人鬼】。五十歩百歩。違いなんて無いさ」
「....貴方は神で、アイツは【死神】。これは大きな違い」
「貴方は自分を卑下しすぎなのよ。シュンと自分が同じであることを嫌に思っていたみたいだけど、そもそも貴方とシュンは似ても似つかない。全くの【別物】よ」
マヨイ・ヴァレンは同情の眼差しを向ける。
俊介はこの眼差しに【不快感】を覚えた。
「....そんな同情をよこす為に呼んだんじゃないんだろ?本当の要件はなんなんだ?」
「これからどうするつもり?」
「それが決まってたら思い出めぐりなんてやってねぇよ...。神として仕事するのは御免だからなぁ....天界の事調べてみるのも悪くないかもな」
マヨイの口元がニヤける。
「そう....知らないのね」
「何の話だ?」
「ミレイちゃんに言われなかった?『私を殺したら【怠惰】は別の人間に委託される』って」
マヨイのミレイ・ノルヴァのモノマネのクオリティが低すぎる事にツッコミを入れたかったが、それ以上に興味を引く話題が耳に入り、俊介の眼差しに再び【闘士】が灯る。
「それって....」
「そう。いるのよ、怠惰を委託された子がね」
「どんなヤツだ?」
「赤松....勝治、それがフルネーム。何がすごいって、彼。人間でありながら生まれつき【人の記憶を改竄する】特殊能力持ちなの」
「記憶を...改竄?」
「えぇ。記憶を改竄する能力」
「ニーナの下位互換みたいな感じか?」
「まぁそんな感じね」
マヨイ・ヴァレンはニコニコしながら淡々と話す。
「だから僕が彼の面倒を見ろと?」
「えぇ。きっと面白い冒険が出来ると思うわ。目的が無いなら丁度いいと思うけど?」
この時。俊介の脳内にひとつの【筋道】が出来上がった。
自分が今本当にしたい事に気づき、それを達成する為の筋道が【鍵】によって開かれた。
「赤松....勝治。探してみるコトにするよ。ありがとう」
空間に歪みが生まれ、俊介は何処かへと消えた。
マヨイ・ヴァレンは依然ニヤニヤしている。
「ほら、俊介はちゃんと目標を見つけたわよ....。貴方はどうするつもり?」
「ミレイちゃん」
この上なく、荒れていた。
自身の存在が【無かったこと】にされた世界。
そんな荒れた気持ちを抑えんと、俊介はBar.レインウォーターに向かった。
━…━…━…━…━…
カランコロン....。
至福の鐘の音と共に店主の老人が元気に叫ぶ。
「やぁいらっしゃい」
年を感じさせないその応答から、やはり馬場さんからも記憶が消えてるんだなぁと思い荒れた。
店はいつにもなく繁盛していて、店内にはよく知っている顔が揃っていた。
奈恵に冬弥。純也まで居る。
どうやら彼はもう神では無いらしい。
彼から感じたあの気迫が消えている。
目の前には彼女の様な女性を連れていたのだが、これが話に聞いた【純也に存在ごと消された女】なのだろうか?
そんな事を考えながら俊介は、席にカタッと座る。
「マスター。【ウィッチラニーノーズ】貰ってもいい?」
「お客さん随分詳しいね。もしかして前に来てもらった事あった?年のせいで物忘れが激しくってね、ハハ」
物忘れどころか1ヶ月程記憶消えてますよ。と言いたい気分だったが、みんなに訪れた幸せを感じさせる馬場さんのその話し方を聞いてグッと抑えた。
グラスの音が机に反射し、俊介の目の前に【ウィッチラニーノーズ】が置かれた。
金色に光るその飲み物をガバッと口に含んで、俊介は至福を感じていた。
「あの....もしかしてなんですけど。以前何処かでお会いしませんでした?」
!!?
奈恵だった。
奈恵は不思議そうな顔をしてこちらを見つめる。
あぁ、こうやって見つめ合える機会ももう来ないのか。と感傷に浸るのと同時に、自分のやらなくては行けない事を思い出す。
「いえ、多分人違いだと思いますよ?僕の名前は俊介。ただの高校生ですから」
ニッコリと笑って返した。
「何処かで見た気がするんですよね~。あ!突然話しかけてすいませんでした。ごゆっくり~」
そう言って冬弥の座っている机に戻る奈恵。
カツン....とグラスの音が反射し、空になったグラスをカウンターに返す。
俊介は店を後にした。
━…━…━…━…
月明かりが空を照らす。
コツ....コツ....とこちらに近づいてくる足音が一つ。
ヴィクセンだった。
「アンタ....本当に何者さね。シュンを倒して世界一つ滅ぼして、そしてもう一回【作り直す】なんて」
「僕は至って普通の高校生だよ。なんの変哲も無い....いや、なんの変哲もない普通の【万物を司る神】さ」
「マヨイ様が呼んでるさね。はいこれ」
ヴィクセンの手には【移】の文字が握られていた。
俊介がその文字に触れると、あたりの空間が歪みパッと消えた。
再び視界が安定すると、目の前にはマヨイ・ヴァレンが居た。
「まぁ俊介。いらっしゃい」
「まぁって....何の用だよ」
マヨイ・ヴァレンの目が座る。
数秒の沈黙が走り、マヨイが口を開く。
「ミレイちゃんは?」
「死んだ。と言うより僕が【殺した】」
「....そう。結局そうなっちゃったのね」
「あぁ」
「....」
マヨイ・ヴァレンは授業中に寝る学生の様に机に置いた腕に顔をうずめた。
「はぁ....。ねぇ、貴方とシュンの違いって何だと思う?」
「アイツは汚い【殺人鬼】。僕も醜く汚い【殺人鬼】。五十歩百歩。違いなんて無いさ」
「....貴方は神で、アイツは【死神】。これは大きな違い」
「貴方は自分を卑下しすぎなのよ。シュンと自分が同じであることを嫌に思っていたみたいだけど、そもそも貴方とシュンは似ても似つかない。全くの【別物】よ」
マヨイ・ヴァレンは同情の眼差しを向ける。
俊介はこの眼差しに【不快感】を覚えた。
「....そんな同情をよこす為に呼んだんじゃないんだろ?本当の要件はなんなんだ?」
「これからどうするつもり?」
「それが決まってたら思い出めぐりなんてやってねぇよ...。神として仕事するのは御免だからなぁ....天界の事調べてみるのも悪くないかもな」
マヨイの口元がニヤける。
「そう....知らないのね」
「何の話だ?」
「ミレイちゃんに言われなかった?『私を殺したら【怠惰】は別の人間に委託される』って」
マヨイのミレイ・ノルヴァのモノマネのクオリティが低すぎる事にツッコミを入れたかったが、それ以上に興味を引く話題が耳に入り、俊介の眼差しに再び【闘士】が灯る。
「それって....」
「そう。いるのよ、怠惰を委託された子がね」
「どんなヤツだ?」
「赤松....勝治、それがフルネーム。何がすごいって、彼。人間でありながら生まれつき【人の記憶を改竄する】特殊能力持ちなの」
「記憶を...改竄?」
「えぇ。記憶を改竄する能力」
「ニーナの下位互換みたいな感じか?」
「まぁそんな感じね」
マヨイ・ヴァレンはニコニコしながら淡々と話す。
「だから僕が彼の面倒を見ろと?」
「えぇ。きっと面白い冒険が出来ると思うわ。目的が無いなら丁度いいと思うけど?」
この時。俊介の脳内にひとつの【筋道】が出来上がった。
自分が今本当にしたい事に気づき、それを達成する為の筋道が【鍵】によって開かれた。
「赤松....勝治。探してみるコトにするよ。ありがとう」
空間に歪みが生まれ、俊介は何処かへと消えた。
マヨイ・ヴァレンは依然ニヤニヤしている。
「ほら、俊介はちゃんと目標を見つけたわよ....。貴方はどうするつもり?」
「ミレイちゃん」
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