記憶共有的異世界物語

さも_samo

第105話:記憶共有的異世界物語

心臓が一つドクッと大きく音を立て、僕の中で何かが産まれる....いや、【組み替えられた】のが感覚として分かった。

無意識で出たウッドソードは、僕に神の資格を与えたようだ。
これで殺神試練は終了....。僕は神になる資格を手に入れた。


━…━…━…━…

俊介に赤い眼光が入り、シュンはその光景に恐怖した。
恐怖して尚、狂気的に【笑った】。

どうしようもない圧倒的な存在。
それほどの高みに立ったこの2人の生物。

俊介とシュンは鏡の様に何もかもが【反転】された存在。
シュンはそれがどうしようもなく不快で、俊介は自分の中にシュンと同じ部分があることを嫌悪した。

【ウッドソ...】

シュンが能力を唱えてる間、俊介は物凄い速度でシュンに近づいた。
指をドリルの様な形にして、シュンの目に突き刺す。

「ウウゥッ...あ”あ”ッ”....」

「お前が痛がるのを初めて見たよ」

俊介の口角が狂気に歪む。
生命が枯れ果てた色のないこの空間。

シュンは目を抑え、俊介は狂気的に笑い。

【対極】の2人はお互いを【消そう】とする。

シュンがウッドソードで目を治し、数秒俯く。

そして....笑う。

俊介もシュンもどちらも笑った。

ただ、笑った。

「君はぁ....やっぱりオレだよ....俊介!」

【ウッドソード】

シュンが右手を暗黒物質に変える。
左手の手刀で右手を切り落とした。

暗黒物質は地面に触れるや否やスーパーボールの様に空中に跳ねて、再び生命を消滅させ始めた。


━…━…━…━…

僕とシュンが同じ....確かにそうなのだろう。
あぁ、そうだ。

死ぬほど嫌だが認めるしか無い。

なにせシュンと僕は【同一人物】なのだから。
認めざるをえない....。

だが、だからどうした?

シュンは醜く汚い殺人鬼。
僕も醜く汚い殺人鬼。

だからこそ分かる。

殺人鬼にまで墜ちた僕だから分かる。

「お前じゃ、僕には勝てないよ。だってさ.....」

【ウッドソード・ロストブランク】

暗黒物質が光と共に弾ける。
弾けた断片が、弾けながら空間の歪みへと消えていく。

シュー....と音を立てながら、暗黒物質のパラメーターは【0】になった。

「へぇ....そういう....」

「これはシュンヤが作り出した能力なんかじゃない....。僕がこの時間軸で【再構成】した能力だ」

「蹉跌を繰り返すお前には絶対に来ることの出来ない僕だけの領域だ!」

「俺が....蹉跌?」

シュンの眉間にシワが寄るのが分かる。

「そのセリフ....お前にだけは言われたくなかったなぁ....」

「散々蹉跌を繰り返しておいて、一気に進んだら今度はこっちを蹉跌呼ばわりかぁ...?」

「ハハハハハ....やっぱお前面白いよ、他の時間軸には無いモノを持ってる....」

シュンが右手を上にかざすと、空に亀裂が入った。
その亀裂から、人が数人落ちてきた。

5....6....10...15。

ミルミル増えてくその人影は、シュンの形をしていた。

計25人のシュンがこちらを狂気的に睨む。

「全員本物だよ....まぁ、今の君になら説明する必要もないか」

「別の時間軸から持ってきやがったな....」

「俺は君のその蹉跌した時の面が一番好きだよ!」

大量のシュンがこちらに手を構える。

【ウッドソード】

僕の頭上に巨大な暗黒物質が生成されるのが分かる。

その暗黒物質はとても広い範囲の、全ての生命を吸い取らんとしている。
バーミア全ての、地球の。そして、天界も。

全ての命を吸い取りながら大きくなっていく暗黒物質に、バーミアの地盤は耐えられずに崩れた。

はぁ....。

気が付くと溜息をついていた。
落ち着く。

このため息が無性に僕を落ち着かせる。

「無駄なんだよ、その攻撃は....。」

【ウッドソード・ロストブランク】

シュンの攻撃は全てかき消され、壊れたバーミアの地盤も一瞬で修復された。
他の時間軸のシュンは完全に驚いた表情を見せたが、一人のシュンだけは憤怒を顕にしていた。

この時間軸のシュンだ。

【ウッドソード】

頭上に発生する暗黒物質。
他の時間軸のシュンがバッサバッサと倒れていく。

シュンの魂が吸われていく。
この時間軸のシュンを残して、残りは全て吸い込まれていった。

憤怒を顕にするシュン。

正直僕も冷静では無い。
溜息を付いて落ち着いてるように【見せている】だけだ。

死んでいった仲間の想念が疼いて、僕の頭は今にも破裂しそうだった。

憤怒を顕にするシュンはもはや身動き一つ取れない。
何をしようとカウンターされてしまうのだから。

僕の暗黒物質に吸い込まれまいと踏ん張っているシュンを尻目に、僕は残酷だがやらねばならない事を頭に過ぎらせていた。

「シュン」

「....あ?」

「上見てみろ」


グシャッ.......

ウッドソードで天井を作りシュンを圧迫させた。

暗黒物質を消した。
圧倒的なエネルギーが篭っていたあの暗黒物質をそのまま消滅させるのは大変危険なので、【ロストブランク】で0にして消した。

シュンが【ウッドソード】を使い復活する。

あの時あの天井にステンエギジスを使えれば....。


それと同時に僕は右手に生成したものを【投げる】。

グサリ.....。

シュンの胸元から血が滲む。

「ウッ....カッ....」

シュンは刺さったナイフのようなものを手で引っこ抜き、ウッドソードでその傷口を回復させようとした。

あの時僕がチュラル村に行かせなければ....。

時が止まる。
僕はシュンにゴマ粒サイズの起爆装置を投げつけた。

もはやシュンはこの時間を認識こそ出来るが動くことは出来ないだろう。
時が動き出した瞬間。シュンの体は僕発粉砕した。

シュンが【ウッドソード】を使い復活する。

あの時僕がもっと用心深く動けば....。

僕が拳を握り締めると、シュンはグシャリと生々しい音を立てて崩れた。

また秒もしないうちに復活するのだが、流石に復活を繰り返し過ぎだ。
もはやシュンの体の形がおかしい。

あの時の僕にもっと強い力があれば....。

【ウッドソード・ロストブランク!】

瞬間、物凄い閃光が辺りに広がり、シュンはクリスタルの中に閉じ込められた。
僕は喋る事以外許可していない。

もはや視界も、聴覚も、何もかも機能していないだろう。

「これで最後だ....」

僕の手に黒いオーラがまとわれる。
それは物凄い高温を発しているが、感覚は氷の様に冷たい。

シュンの腹を僕の拳が貫く。
自分の見た目をした化物を、自分の拳で貫く。

「カッ....ハッ....やっぱりぃ...君は俺と同じだ俊介ェ!。例え相手が自分であろうと容赦せず殺す。お前と俺の圧倒的な違い....【人間味】を....お前は....捨てた!」


バキッ....メシッ....とクリスタルにヒビが入り、最期の結晶は砕け散った。
砕けたパーツが燃え、灰と化す。

灰がクラッカーの様に辺りに飛び散る。

「あぁ、同じだよ。お前も....僕も」


【ウッドソード・ロストブランク】は、勝利の灰を....【0】にした。

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