記憶共有的異世界物語
第103話:人間卒業【神練】
踏み込んだ足は地面を削る。
その反動で飛ぶ僕。
ミレイ・ノルヴァが時を止める。
僕の動きは一瞬静止、今の攻撃の勢いはかき消された。
しかし、今の僕なら彼女の認識できない領域での時止めが出来る。
意識を時間に集中させる。
懐中時計が秒を刻む音に近い音が脳内で再生され、それがスローになっていくのを感じる。
【ロストブランク】
秒を刻む音がプツリと途絶えた。
時が再び動き始める。
「貴方が私が司ってるものを上回ったのは分かったけど、何も防ぐ方法が無いって訳じゃないのよ?」
「ハハ、それでこそミレイ・ノルヴァだよ!」
そうだ。僕の知っているミレイ・ノルヴァはこうだ。
遥か高みに立ち、僕を煽る。
そして僕は、そんな女神と対等に戦っている。
あぁ、このまま本当の意味で時が止まってくれればいいのに....心の底からそう思う。
これ程楽しく感じたのは生まれて初めてだ。
!!?
突然足が動かなくなり、僕は踏み込んだ勢いでそのまま壁に激突した。
ロストブランクは僕の時止めを防いだだけでなく、僕の足のパラメーターさえも0にしたのだ。
足を手刀で切断する。
まるでゾンビだ。
しかし、切れた足は【ウッドソード】で即回復できる。
もし来世があるならゾンビに生まれ変わるのも悪くないかもしれない。そう思った。
切断された僕の足は剣の形を象る。
木の剣【ウッドソード】じゃない。正真正銘の鉄の剣。
ミレイ・ノルヴァは魔法陣のようなものを展開し、そこから剣を錬金した。
神の能力に加えてナエラやトウが使ってた魔法も一通り使える。どこが怠惰の女神なのだろうか?と思うその勤勉さに、僕はとてもワクワクした。
剣と剣が交わる感覚。
どちらも剣の達人とは言えない。
でも僕等は闘いにおいてはもはやプロと言って差し支えないほどに場数をこなしてきた。
そんな経験が、技能が。この剣の混じり合いを恐ろしく高度な次元へと持っていく。
時が止まったり動いたりを繰り返している。
【ウッドソード】
ミレイ・ノルヴァの剣を液体にして、攻撃を防げなくする。
【ロストブランク】
液体への変化を0にされ、さっきの攻撃は【かき消された】
「もう完全に自分の力で奈恵達を助ける気はないんだな」
「言ったでしょう?託したって」
そう言ってミレイ・ノルヴァは剣を投げた。
僕がその剣を目で追った瞬間。時が止められ、一瞬反応速度が鈍った。
ミレイ・ノルヴァの拳が腹に入る。
猛烈な痛みと共に僕は再び後ろに飛ばされた。
マゾヒストという訳ではないが、この痛みを心地よく感じる。
あぁ、やはり僕は神と渡り合える程に成長したんだな....。そう思った。
ステンエギジスが無いと何もできない無力な僕はもう居ない。そう感じた。
純也の本当の目的はなんだったんだろう?なんて思考を巡らせながら、背後に飛ばされる。
地面から棘をはやさせ、そこに足を付けた。
棘をロイター板の様にして、僕は再びミレイ・ノルヴァに突っ込んだ。
空が緑色のようで、雲が赤色。
どう考えても地球じゃないこのバーミアの世界は、僕を遥か高みの世界へ連れて行ってくれた。
「ウッドソード!」
拳に熱がこもり、拳がモーションブラーの様にブレながら進む。
ミレイ・ノルヴァが手で僕の拳を防いだが、その防いだ手がメシッ、メキッと音を立てて歪んでいった。
激痛では表現できなかろうに.....普通の人間なら即気絶レベルの損害を受けてなお、ミレイ・ノルヴァは笑っていた。
どうやら気分は僕と同じらしい。
曲がっては行けない方向に腕がねじれ曲がったまま、地面に倒れるミレイ・ノルヴァ。
ドスッと倒れる音が聞こえるのと同時に、僕の脳内を何かが駆け巡った。
ふと冷静になってしまったのだ。
ミレイ・ノルヴァを殺す。
この言葉の意味を、理解した。
今、やっと。
この一瞬僕の覚悟が揺らいだ。
僕の動きが一瞬止まり、その瞬間をミレイ・ノルヴァに突かれた。
【レラロイド】
物凄い閃光が辺りに広がり、僕の体が裂けそうになった。
閃光が引いた今でも皮膚がヒリヒリする。
【ウッドソード】
無数の刺が地面から生え、それはミレイ・ノルヴァを狙う。
シュンがミレイ・ノルヴァを一撃で仕留めた攻撃。
「ウッ....」
僕の中で何かが動いた。
刺はミレイ・ノルヴァの顔面0距離まで近づいて静止した。
ねじれた腕を抑えながら、ミレイ・ノルヴァは何かに勘付いた顔を見せた。
刺は動かない。
時を止められたわけでも、刺の操作権を奪われた訳でも無い。
ただ、僕の攻撃が、ミレイ・ノルヴァに届かなかった。
届ける【覚悟】が、【決意】が。揺らいだ。
無意識の内に下唇を噛んでいた。
唇から自分の血が滴るのが分かる。
はぁ....と一つ深い溜息を付いて見せるミレイ・ノルヴァ。
「貴方の判断は間違ってないわ、俊介」
「貴方は神の試練を受けることで自身が取るべき行動を明瞭にした」
「運命をいじったのか?」
「いいえ、私は何もしてない。貴方が選んだの」
「そして貴方は圧倒的な高次元に立った。それをシュンを追い込む事で証明してみせた」
「でも貴方には倒せない敵がいる。それが私」
「私を倒せない理由はもう分かっているんでしょう?」
ミレイ・ノルヴァは子供に言い聞かせる様に淡々と現状を並べる。
一つ一つ確実に、言葉のドミノが僕をスタート地点として並べられていく。
「僕の覚悟が....足りないからだ」
「恩人を殺す覚悟。神になる覚悟。シュンとの因縁に決着を付ける覚悟....。」
「いいえ、違うわ」
「貴方が私を倒せない理由は、単に貴方が【人間だから】よ」
「人間はみんな根に優しさを持っている。人が人と生きる上で【協調性】を求められるから、人はそれを嫌でも身に付ける」
「神の試練は言ってしまえば【人間卒業試練】」
「貴方はエルフやシュンを【悪】とする事で殺人を肯定してきた」
ミレイ・ノルヴァの作る言葉のドミノがあっという間に完成していく。
ポンポンポンと設置され、僕の目の前に長いドミノの一本道が設置されていく。
クネクネと歪な形に歪みまくっているこの道。
しかし、それは確かに....。
一本道だ。
その反動で飛ぶ僕。
ミレイ・ノルヴァが時を止める。
僕の動きは一瞬静止、今の攻撃の勢いはかき消された。
しかし、今の僕なら彼女の認識できない領域での時止めが出来る。
意識を時間に集中させる。
懐中時計が秒を刻む音に近い音が脳内で再生され、それがスローになっていくのを感じる。
【ロストブランク】
秒を刻む音がプツリと途絶えた。
時が再び動き始める。
「貴方が私が司ってるものを上回ったのは分かったけど、何も防ぐ方法が無いって訳じゃないのよ?」
「ハハ、それでこそミレイ・ノルヴァだよ!」
そうだ。僕の知っているミレイ・ノルヴァはこうだ。
遥か高みに立ち、僕を煽る。
そして僕は、そんな女神と対等に戦っている。
あぁ、このまま本当の意味で時が止まってくれればいいのに....心の底からそう思う。
これ程楽しく感じたのは生まれて初めてだ。
!!?
突然足が動かなくなり、僕は踏み込んだ勢いでそのまま壁に激突した。
ロストブランクは僕の時止めを防いだだけでなく、僕の足のパラメーターさえも0にしたのだ。
足を手刀で切断する。
まるでゾンビだ。
しかし、切れた足は【ウッドソード】で即回復できる。
もし来世があるならゾンビに生まれ変わるのも悪くないかもしれない。そう思った。
切断された僕の足は剣の形を象る。
木の剣【ウッドソード】じゃない。正真正銘の鉄の剣。
ミレイ・ノルヴァは魔法陣のようなものを展開し、そこから剣を錬金した。
神の能力に加えてナエラやトウが使ってた魔法も一通り使える。どこが怠惰の女神なのだろうか?と思うその勤勉さに、僕はとてもワクワクした。
剣と剣が交わる感覚。
どちらも剣の達人とは言えない。
でも僕等は闘いにおいてはもはやプロと言って差し支えないほどに場数をこなしてきた。
そんな経験が、技能が。この剣の混じり合いを恐ろしく高度な次元へと持っていく。
時が止まったり動いたりを繰り返している。
【ウッドソード】
ミレイ・ノルヴァの剣を液体にして、攻撃を防げなくする。
【ロストブランク】
液体への変化を0にされ、さっきの攻撃は【かき消された】
「もう完全に自分の力で奈恵達を助ける気はないんだな」
「言ったでしょう?託したって」
そう言ってミレイ・ノルヴァは剣を投げた。
僕がその剣を目で追った瞬間。時が止められ、一瞬反応速度が鈍った。
ミレイ・ノルヴァの拳が腹に入る。
猛烈な痛みと共に僕は再び後ろに飛ばされた。
マゾヒストという訳ではないが、この痛みを心地よく感じる。
あぁ、やはり僕は神と渡り合える程に成長したんだな....。そう思った。
ステンエギジスが無いと何もできない無力な僕はもう居ない。そう感じた。
純也の本当の目的はなんだったんだろう?なんて思考を巡らせながら、背後に飛ばされる。
地面から棘をはやさせ、そこに足を付けた。
棘をロイター板の様にして、僕は再びミレイ・ノルヴァに突っ込んだ。
空が緑色のようで、雲が赤色。
どう考えても地球じゃないこのバーミアの世界は、僕を遥か高みの世界へ連れて行ってくれた。
「ウッドソード!」
拳に熱がこもり、拳がモーションブラーの様にブレながら進む。
ミレイ・ノルヴァが手で僕の拳を防いだが、その防いだ手がメシッ、メキッと音を立てて歪んでいった。
激痛では表現できなかろうに.....普通の人間なら即気絶レベルの損害を受けてなお、ミレイ・ノルヴァは笑っていた。
どうやら気分は僕と同じらしい。
曲がっては行けない方向に腕がねじれ曲がったまま、地面に倒れるミレイ・ノルヴァ。
ドスッと倒れる音が聞こえるのと同時に、僕の脳内を何かが駆け巡った。
ふと冷静になってしまったのだ。
ミレイ・ノルヴァを殺す。
この言葉の意味を、理解した。
今、やっと。
この一瞬僕の覚悟が揺らいだ。
僕の動きが一瞬止まり、その瞬間をミレイ・ノルヴァに突かれた。
【レラロイド】
物凄い閃光が辺りに広がり、僕の体が裂けそうになった。
閃光が引いた今でも皮膚がヒリヒリする。
【ウッドソード】
無数の刺が地面から生え、それはミレイ・ノルヴァを狙う。
シュンがミレイ・ノルヴァを一撃で仕留めた攻撃。
「ウッ....」
僕の中で何かが動いた。
刺はミレイ・ノルヴァの顔面0距離まで近づいて静止した。
ねじれた腕を抑えながら、ミレイ・ノルヴァは何かに勘付いた顔を見せた。
刺は動かない。
時を止められたわけでも、刺の操作権を奪われた訳でも無い。
ただ、僕の攻撃が、ミレイ・ノルヴァに届かなかった。
届ける【覚悟】が、【決意】が。揺らいだ。
無意識の内に下唇を噛んでいた。
唇から自分の血が滴るのが分かる。
はぁ....と一つ深い溜息を付いて見せるミレイ・ノルヴァ。
「貴方の判断は間違ってないわ、俊介」
「貴方は神の試練を受けることで自身が取るべき行動を明瞭にした」
「運命をいじったのか?」
「いいえ、私は何もしてない。貴方が選んだの」
「そして貴方は圧倒的な高次元に立った。それをシュンを追い込む事で証明してみせた」
「でも貴方には倒せない敵がいる。それが私」
「私を倒せない理由はもう分かっているんでしょう?」
ミレイ・ノルヴァは子供に言い聞かせる様に淡々と現状を並べる。
一つ一つ確実に、言葉のドミノが僕をスタート地点として並べられていく。
「僕の覚悟が....足りないからだ」
「恩人を殺す覚悟。神になる覚悟。シュンとの因縁に決着を付ける覚悟....。」
「いいえ、違うわ」
「貴方が私を倒せない理由は、単に貴方が【人間だから】よ」
「人間はみんな根に優しさを持っている。人が人と生きる上で【協調性】を求められるから、人はそれを嫌でも身に付ける」
「神の試練は言ってしまえば【人間卒業試練】」
「貴方はエルフやシュンを【悪】とする事で殺人を肯定してきた」
ミレイ・ノルヴァの作る言葉のドミノがあっという間に完成していく。
ポンポンポンと設置され、僕の目の前に長いドミノの一本道が設置されていく。
クネクネと歪な形に歪みまくっているこの道。
しかし、それは確かに....。
一本道だ。
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