記憶共有的異世界物語
第76話:新たな【記憶共有】
ニーナに記憶を戻してもらった際に一つ気になる記憶が出てきた。
いや、もはや一つじゃない。
ニーナ・ノルヴァは空気を読んで詳しく追求こそしなかったが、僕の記憶はもう滅茶苦茶だった。
僕のでもシュンヤのでもない別の【誰かの記憶】....。
そしてこの誰とも分からない記憶の恐ろしいところは、未来まで記憶されてるという事だ。
それも僕目線で。
本当に気味が悪い。
僕に未来視能力が付いたような感覚だ。
数秒後に起こる事。
シュンヤ達との会話。
全部手に取るように分かる。
このまま待っていればトウが馬場さん達を生き返らせる提案を持ってくる。
━…━…━…━…
「おはよう俊介」
「あ、あぁおはよう」
驚く程の一致。
一番最初に起きて教会に入ってきたのはトウだった。
完全に一致。
タイミングも何もかも。
動かしている足の方向さえ一致している。
完全な【未来視】だ。
「......」
「......」
僕等は数秒黙ったが、数秒もしないうちにトウがその重い口を開いた。
「なぁ、お前本当に馬場さんたちを生き返らせることには反対なのか?」
やはり。
その言葉の一文字一文字全て正確に記憶されている。
冬弥が持ちかけて来る話題から何から何までが記憶通りだ。
「僕だって生き返ってほしい。でもね、死んだ者が生き返るなんてことを認めてしまえば命の重さなんてものは消えるんだよ。それは僕達にとって致命的だと思うんだ」
ベストアンサー。
よくもまぁこんな事が言えるもんだと思える最高のアンサー。
でも僕が用意したモノじゃない。
【記憶】の彼が用意したものだ。
トウは数秒黙り込んで一つ溜息を付く。
「はぁ....」
本当に細かい動作の一つ一つまで 記憶されている。
理解できない。
「まぁ俊介の言い分も確かだ。神相手に命の重さを顧みなくなったら、それこそ【消滅】させられることになってもなんの感情も抱けないだろうし、仲間の死も悲しめなくなる。でも本当に...」
「「いや、だからこそ生き返らせるべきなんじゃないか?」」
彼の発言とかぶるように記憶の中にある台詞を読み上げた。
彼の表情に驚きが浮かぶ。
目をまん丸にして、心の底から驚いている表情を覗かせた。
記憶と違う行動を取ってみた。
こんな行動は彼の記憶に記録されて無い。
そのまま彼の話を聞いていれば、彼は数秒黙って「どうだ?」と聞いてくる。
数秒の沈黙――――
「...どうだ?」
クソ!表情こそ違うが言葉は一字一句そのままだ。
彼がどうだ?と聞いたあとの表情さえ一致した。
どうやらこの記憶に逆らうことは出来ない様だ。
一体なんなのだこの記憶は。
シュンヤには行っているのだろうか?
「だからこそってのが僕にはどうしても理解できない。トウは色んな神を見てきて何を考えたんだ?【命】をどう思ってる?」
「難しい話題を一気に振ったな....」
「ミレイ・ノルヴァとかマヨイ・ヴァレンもそうだよ。神々にも人格があって性格があって個性がるって事を知れた。神聖なクッソ堅苦しい神が居ない事は意外だったし、だからこそ神にだって【人情】があることがよく分かった」
「だからこそ神だって命を軽んじてる様には見えない。だとすると僕等人間が神に抗うには、【命】を捨てる覚悟が出来ないとダメだとも思う....コレが答えかな」
トウらしい....と言えばトウらしいのだろう。
きっと冬弥も同じ回答をしたはずだ。
でも、僕の記憶に彼のこの思想はもう入っていた。
彼の言い分に対する答えはもう用意されている。
「それは違うよ。神に抗いたい時代は終わった。ノルヴァ家とヴァレン家は和解したんだしね、今度の敵は【シュン】。神と同じレベルで強いってだけで神ってワケじゃない。だからこそ【命を捨てる覚悟】じゃ勝てないだろうし、それは無駄死にを産むだけだ」
「無駄死にほど避けたいものはないと思うけど?」
トウは黙り込んだ。
そうか。と一言だけ言ってまた数秒黙る。
全て記憶通りに進んだ。
なんの狂いも、一ミリの狂いもなく正確に。ただ正確に記憶をたどった。
記憶通りの運命。禁忌の書がいらなくなるレベルで未来が分かる。
数秒の沈黙の間、僕は記憶を未来までたどった。
そしてとても恐ろしい事実に気づいてしまい、僕は心の底からの恐怖を体験した。
この記憶の正体はとても単純でわかりやすかった。
これは【シュン】の記憶だ。
彼はこの世界でミレイ・ノルヴァを殺し神になる。
シュンヤも自分の手で殺した。
奈恵もトウも冬弥も。バリッシュさんさえ殺した。
その記憶が僕の頭の中に展開されると同時に、僕は吐き気に襲われた。
喉まで来た嘔吐物をなんとか押さえ込んだ。
痛みと吐き気。
精神的ダメージが肉体にそのまま来るこの辛さ....。
この記憶通りに進むと僕は彼等を殺す事になる。
シュンがこっちの世界に来て、僕と彼が【記憶共有体】になった。
同じ記憶が入ってくるものだから、ノイズキャンセリングみたいに互の記憶が互を消しあった。
僕の偏頭痛はその消しあった時に生じてた痛みだった。
ニーナに記憶を戻してもらったことで記憶の打ち消し合いは終わり、僕は全てを思い出した。
僕がこれから辿る運命を思い出した。
僕が過ごす未来を思い出した。
嫌だ。
僕は【シュン】になりたくない。
僕は.....。
俊介だ!
いや、もはや一つじゃない。
ニーナ・ノルヴァは空気を読んで詳しく追求こそしなかったが、僕の記憶はもう滅茶苦茶だった。
僕のでもシュンヤのでもない別の【誰かの記憶】....。
そしてこの誰とも分からない記憶の恐ろしいところは、未来まで記憶されてるという事だ。
それも僕目線で。
本当に気味が悪い。
僕に未来視能力が付いたような感覚だ。
数秒後に起こる事。
シュンヤ達との会話。
全部手に取るように分かる。
このまま待っていればトウが馬場さん達を生き返らせる提案を持ってくる。
━…━…━…━…
「おはよう俊介」
「あ、あぁおはよう」
驚く程の一致。
一番最初に起きて教会に入ってきたのはトウだった。
完全に一致。
タイミングも何もかも。
動かしている足の方向さえ一致している。
完全な【未来視】だ。
「......」
「......」
僕等は数秒黙ったが、数秒もしないうちにトウがその重い口を開いた。
「なぁ、お前本当に馬場さんたちを生き返らせることには反対なのか?」
やはり。
その言葉の一文字一文字全て正確に記憶されている。
冬弥が持ちかけて来る話題から何から何までが記憶通りだ。
「僕だって生き返ってほしい。でもね、死んだ者が生き返るなんてことを認めてしまえば命の重さなんてものは消えるんだよ。それは僕達にとって致命的だと思うんだ」
ベストアンサー。
よくもまぁこんな事が言えるもんだと思える最高のアンサー。
でも僕が用意したモノじゃない。
【記憶】の彼が用意したものだ。
トウは数秒黙り込んで一つ溜息を付く。
「はぁ....」
本当に細かい動作の一つ一つまで 記憶されている。
理解できない。
「まぁ俊介の言い分も確かだ。神相手に命の重さを顧みなくなったら、それこそ【消滅】させられることになってもなんの感情も抱けないだろうし、仲間の死も悲しめなくなる。でも本当に...」
「「いや、だからこそ生き返らせるべきなんじゃないか?」」
彼の発言とかぶるように記憶の中にある台詞を読み上げた。
彼の表情に驚きが浮かぶ。
目をまん丸にして、心の底から驚いている表情を覗かせた。
記憶と違う行動を取ってみた。
こんな行動は彼の記憶に記録されて無い。
そのまま彼の話を聞いていれば、彼は数秒黙って「どうだ?」と聞いてくる。
数秒の沈黙――――
「...どうだ?」
クソ!表情こそ違うが言葉は一字一句そのままだ。
彼がどうだ?と聞いたあとの表情さえ一致した。
どうやらこの記憶に逆らうことは出来ない様だ。
一体なんなのだこの記憶は。
シュンヤには行っているのだろうか?
「だからこそってのが僕にはどうしても理解できない。トウは色んな神を見てきて何を考えたんだ?【命】をどう思ってる?」
「難しい話題を一気に振ったな....」
「ミレイ・ノルヴァとかマヨイ・ヴァレンもそうだよ。神々にも人格があって性格があって個性がるって事を知れた。神聖なクッソ堅苦しい神が居ない事は意外だったし、だからこそ神にだって【人情】があることがよく分かった」
「だからこそ神だって命を軽んじてる様には見えない。だとすると僕等人間が神に抗うには、【命】を捨てる覚悟が出来ないとダメだとも思う....コレが答えかな」
トウらしい....と言えばトウらしいのだろう。
きっと冬弥も同じ回答をしたはずだ。
でも、僕の記憶に彼のこの思想はもう入っていた。
彼の言い分に対する答えはもう用意されている。
「それは違うよ。神に抗いたい時代は終わった。ノルヴァ家とヴァレン家は和解したんだしね、今度の敵は【シュン】。神と同じレベルで強いってだけで神ってワケじゃない。だからこそ【命を捨てる覚悟】じゃ勝てないだろうし、それは無駄死にを産むだけだ」
「無駄死にほど避けたいものはないと思うけど?」
トウは黙り込んだ。
そうか。と一言だけ言ってまた数秒黙る。
全て記憶通りに進んだ。
なんの狂いも、一ミリの狂いもなく正確に。ただ正確に記憶をたどった。
記憶通りの運命。禁忌の書がいらなくなるレベルで未来が分かる。
数秒の沈黙の間、僕は記憶を未来までたどった。
そしてとても恐ろしい事実に気づいてしまい、僕は心の底からの恐怖を体験した。
この記憶の正体はとても単純でわかりやすかった。
これは【シュン】の記憶だ。
彼はこの世界でミレイ・ノルヴァを殺し神になる。
シュンヤも自分の手で殺した。
奈恵もトウも冬弥も。バリッシュさんさえ殺した。
その記憶が僕の頭の中に展開されると同時に、僕は吐き気に襲われた。
喉まで来た嘔吐物をなんとか押さえ込んだ。
痛みと吐き気。
精神的ダメージが肉体にそのまま来るこの辛さ....。
この記憶通りに進むと僕は彼等を殺す事になる。
シュンがこっちの世界に来て、僕と彼が【記憶共有体】になった。
同じ記憶が入ってくるものだから、ノイズキャンセリングみたいに互の記憶が互を消しあった。
僕の偏頭痛はその消しあった時に生じてた痛みだった。
ニーナに記憶を戻してもらったことで記憶の打ち消し合いは終わり、僕は全てを思い出した。
僕がこれから辿る運命を思い出した。
僕が過ごす未来を思い出した。
嫌だ。
僕は【シュン】になりたくない。
僕は.....。
俊介だ!
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