記憶共有的異世界物語

さも_samo

第46話:計画

「おつかれ」

「あぁ...マジで....おつかれさんだよ」

その言葉を残して僕は倒れた。
筋力230倍なんてバカみたいな事をしたものだから体が持たなかった。
間に合ったのはまさに【運がいい】としか言いようが無かったが、足に力が入らなくなってから意識が消えるまでは数秒もかからなかった。

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

目が覚めると布団に寝ていた。
体の痛みは完全に消えており、内出血も引いていた。
シュンヤが【ウッドソード】で僕のことを治してくれたのだ。

リビングでシュンヤ達がガヤガヤしているのが聞こえた。
シュンヤの記憶を見るに、僕がさっき戦っていたグリシア・ヴァレンについて話していたようだ。

!!?

馬場さんがいる。
ここからは見えないが、シュンヤの記憶で見える。

急いで階段を下りてリビングに戻った。

「お?目覚めたか。体のほうはもういいのか?」

馬場さんが声をかけてきた。
リビングには机を囲んで、冬弥、奈恵、シュンヤ、そして馬場さんの4人が座っていた。

「馬場さん....よくうちが分かったね」

「奈恵ちゃんから電話を貰ってね、連れてきてもらったんだ」

僕が奈恵の方を見るとコクコクと頷いている奈恵がいたのだが、奈恵に馬場さんを呼ぶように指示したのがシュンヤだという事を思い出して色々納得した。

「これで全員揃ったな」

僕が席に座るのと同時にシュンヤがそう言った。
全員が一斉に僕の方を向いた。

シュンヤがバーミアに乗り込む作戦を僕が練ったと言う説明をしたのが原因なのだが、これは本当にいい機会だ。

「話を始める前に一個だけ聞きたいんだがいいか?」

僕が冬弥に向かってそう言うと、冬弥は無言で頷いた。

「エルフがチュラル村から消えたってどういう事だ?」

「言葉の通りだよ、チュラル村からエルフが消えたんだ。それも過半数が【殺され】て」

過半数が殺された...これの犯人はなんとなく分かる。
恐らくミレイ・ノルヴァだろう。
ナエラが殺されたあの時、その場にいたのはミレイ・ノルヴァだ。
無双していたと言うのだからかなりの数を殺したのだろう。

ならば、だ。
ならば何故彼女はチュラル村にいるエルフを全て殺さなかったのだろうか?
神が種族を滅ぼすことが禁忌とされているからか?
いや、そんな禁忌が存在するならそもそも殺すことさえ許されないだろう。
そもそも純也がエルフを潰そうとしている時点でこの考えは間違っている。

じゃぁなんで...。

別の犯人がいるって事か?

「殺されたってのはなんとなく分かるが【消えた】ってどういう事だ?【逃げた】じゃなくてか?」

「うん、【消えた】って表現が適切みたい。逃げたとしたら最低限のものは持っていくだろ?地面に散乱した生活品だったり、流れっぱなしの水だったりでとても【逃げた】とは思えないんだよ」

逃げた訳では無く、消えた...。
これまた訳のわからない事が続いているが、消えたという事は【消した】人物が存在するってことだよな?

「そうだ、チュラル村からエルフが【消えた】って事は禁忌の書はどうなったんだ?そのままあるんじゃないのか?」

「それがエルフと一緒に【禁忌の書】も消えてるんだよ。エルフが持っていったとも考えたんだけど、それは無さそうだし...」

簡単にまとめよう。
つまりエルフを【消した】人物が存在して、その存在が禁忌の書を持っていったって事か?
しかしその犯人の検討が一切付かない。
ヴァレン家の人間か?とも思ったが、そもそもあの家の目的はノルヴァ家の邪魔をする事であって、禁忌の書を奪うことじゃない。

「そうか....」

僕は一発咳払いをして、話題を変えた。

「じゃぁ、バーミアに乗り込む作戦についてなんだけど」

改めて視線が僕に向いた。

「まずバーミアに乗り込む時に【これ】を使うんだよ」

そう言って僕は皆にミレイ・ノルヴァの鍵を見せた。

「それは?」

馬場さんが聞き返してきたが、その質問は当然だった。
鍵を見せられてもそれがなんの鍵かを知らないと意味がなかった。

「これはミレイ・ノルヴァの鍵。扉に使うだけで過去にいけるチートアイテム」

「チ、チート?」

冬弥が不安そうな目でこちらを見つめていた。

「この鍵を使って過去に戻るんだ。ちょうどシュンヤがバーミアに居る時代まで。僕の予想が正しければ記憶共有現象が向こうでも起こると思うんだ。そしたら僕の【ステンエギジス】で僕を含めたみんながバーミアに行ける」

「そしてそのまま未来に行くんだ。鍵を抜けば未来に帰って来られる」

辺りに静寂が走る。
静かな空気が僕等を冷静にさせる

∴✖※▲▽

「貴方未来に戻った後どうするつもりなの?」

突然の聞きなれない声に全員の視線がそちらに向き、ガタッと椅子の音がなった。

「そんな怯えなくてもいいのに」

ミレイ・ノルヴァだった。
空いている椅子にミレイ・ノルヴァが座っていた。
そこに座っていたミレイ・ノルヴァの目は冷たかったが、どこか怯えてるように感じた。

「それに過去に戻って記憶共有現象が起こったとしたら未来の記憶が彼らに入るけど、その記憶はどうするの?」

気づくとミレイ・ノルヴァの背後にニーナ・ノルヴァが立っていた。

どうしてこの姉妹はこうやって僕のやる事なすこと全て否定してくるのだ...。

いや、僕の計画が穴だらけすぎるだけか。

畜生。

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