黒剣の魔王
第20話/瞬☆殺
ステラとリムラは両者共にダウンして引き分けという扱いになった。このことはまだ出場選手にしか明かされていない。
明らかにステラの勝利確定な終わり方だったのだけれど、時々漏れる二人の会話をちょこちょこと聞いていると、ステラは元老院に狙われているらしい。
元老院は、自分たちの行動の一切に汚点を残したく無いのだろう。そう考えたらただのクズだな、元老院。
そうなると、次俺が戦う相手も元老院の資格だったりしちゃうのだろうか。例えば、『新しい国を作らせないため』だとか、『王国の安寧を壊したため』だとか。
まぁ、どちらも王様に頼めばなんとかなるけど。
国を作らせないためとか言ったって、それは俺たちに国を作らせるための口実が今回のこの大会なんだからどれだけ頑張っても王様の一言で国はできてしまうだろう。
王国の安寧を壊したためとか言うのなら、今の王国に俺を倒せるだけの強さの人間はいないだろう。
ちなみにこれは奢りじゃない。これも神様と契約したことによるスキルで、相手のステータスを見ることができるようになったのだ。
相手のマナの量、体力量、気力、攻撃力、防御力、魔攻力、魔防力、スピード、スキル、その全てが相手のことを意識してみると浮かび上がってくる。
今目の前でスタンバイをしているバルカンというやたらと筋肉質でハゲな、身長が2メートルはありそうなゴツイ剣闘士のステータスはこんな感じだ。
『バルカン・オールベール Lv.53
ステータス
HP:9000/9000
MP:300/300
物攻:20000/20000
魔攻:4000/4000
物防:84518/84518
魔防:3000/3000
固有スキル
『スラッシュ』→薙ぎ系の剣技の速度が10倍
『ドルバムの加護』→龍属性攻撃無効』
え、ちょっと待って。こいつものすごくスペックが低いよ、クトゥルフよりも物攻と物防低いよ!?
もしかしてこいつ、運だけで生き残った?
最初に運だけで生き残ったと思ったのはカッセルだったけれど、それは違うことが一宮君が倒されたことではっきりと判明した。
……まさか、代わりの運枠がこいつだったとは……
ちょっと元老院さん、こちらの方を甘く見すぎではないですか?
まぁ、これだけ舐められたらこちとらはらたつので、国際交流でのちのちこの国の元老院は潰します☆
王様の威厳掲げて、こっちの国から直で元老院に攻め込みます。もう容赦とかしない。舐められた分舐め返してやるよ。俺一人で片付けてやる。
そんなことを考えていると、アナウンスが流れてくる。
『両者の準備が揃ったそうなので、最終戦を始めたいと思います! では、バルカン選手、ユウ選手、位置についてください!』
あれ、これそういう奴だったっけ? 決まった位置から始まるヤツだったっけ? え、違うよね? 実況雑すぎじゃね? まあいいんだけど。
『それでは試合を始めていただきましょ打っ! 1回戦第四試合、スタート!』
はい、始まりました。どうしようかな、面白くしてもいいかもしれないんだよ、圧倒的すぎる力を今見せてもねぇ。最終戦で似通ったことやっちゃったら『まぁ、すぐ勝つんでしょ?』ってなっちゃって面白くないよねぇ。
あ、よーし、あの国民的映画の真似でもしてみようか。
「おい、いつまでぼーッと突ッ立ッてんだよォ、ニーチャン。魔王だかなんだか知らねェが、おれァそこら辺のウスノロ大臣様たちたァちげェぜ?」
あ、こいつ絶対かませ犬だ。初撃で済んじゃうやつだ。
「3分間待ってやる。そのあいだに俺に一撃でも食らわせられるといいな」
煽ってみた。
「調子に乗るなよォ? クソガキの分際でェ。おれァおめェみてェなガキが一番キライなんだよォッ!」
そう叫びながら背中に刺さっていた大剣を引き抜くバルカン。
『我が行こう』
『クフさんあざっす』
心の中で、彼の攻撃に対する防御全てを請け負ってくれたクーフーリンに礼を述べる。
え?
礼を述べてるやつの態度じゃない?
史上の偉人に失礼?
……知らねぇよ、そんなこと。
「現界術式だと!?」
この人雑魚そうなのにこういう知識はあるんだ。へー。
すごいすごい。褒めてあげるからさっさと攻撃してみろよ。
『我が名はクーフーリン。今は忠実なるマスターの僕だ。私のマスターは紋章を使うことなく私を……』
「ちょっと待って!? それ違うやつ!! それダメなやつ! あそれ言ったらみんな消えちゃうから!?」
『されど、マスターは先日、私が出ているあにめとやらのでーぶいでーとやらを見せてくれたではないか。
その中の私は、別のマスターになんたら戦争のために戦わされていたのだぞ? 無理矢理。
今のこの状況は、ゆってみれば理想そのものではないか。強制されることなく自由にしていられるのだから』
「言っていることはいいことだけど、引用してる部分がアウトなんだよ!? 分かっててやってない?
ねぇクフさん、この間だって勝手に現界して自分でPCいじってたよね? それだけ出来るんだったら分かってんじゃないの!?」
『……バレたか』
「かくしんはんだよこいつぅぅぅぅぅぅ!
!」
「ハァ、ハァ……いつになったら終わるのだ、この茶番は」
「その割には結構疲れてない?」
「そのォ現界した神の力がァ異常すぎてなァ」
そう。俺とクフさんが茶番劇をしているあいだにもこいつは俺に攻撃し続けていた。
もちろんクフさんがすべて防いでくれたけれど。
さてさて。
「時間だ、答えを教えてやろう」
俺も割と際どいセリフを言っている気がするが水に流してしまおう。トイレにポいっ。
「雷魔法『大空から降りしきる雷』」
その魔法を発動させた途端、精神世界の空は暗雲に包まれ、大量の光柱が地面に降り注ぎ、無数の雷鳴が轟いた。
おういえあ。これが魔王の力だ。センシタリア王国民たちよ、貴様らは魔王の前にいるのだ。
雷鳴が止んだあと、前身黒焦げになったバルカンが運び出され、ステージ外に消えていったことで俺の勝利が確定した。
さぁ、勝利の味を噛み締めますか。
『ここで緊急連絡です。カッセル氏がどこかへ消えてしまいました。彼の来ていた鎧の裏側に、『今日は楽しかった。また会いに来る』と書かれていることから、試合を放棄したと思われます。そしてリムラと勇者ステラの試合は引き分けだったためクトゥルフ選手とユウ選手には最終試合として戦っていただきます!』
わー、すっごーい! 君たちはご都合主義を最後まで通すフレンズなんだねー!
よっしゃぁ、こんなしょぼイベントとっとと終わらせて、サクッと日本に帰ってやるぜっ!
かかって来やがれタコ人間っ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな中、皆が精神世界に飛んでいるために体だけが空いてしまった会場では、無数の血しぶきが飛び交っていた。
「やっ! やめろおぉっ!」
「うるせっ。くうぞっ」
血しぶきの中心にいるのは真紅の髪を持つ少女。彼女の周りには会場を警備していたはずの王国兵達が、自らの鎧を紅く染めて倒れている。
「まだ食い足りねっんだよっ、欲望もっ、恐怖もっ、怨念もっ、憤怒もっ」
「何者だ貴様っ、止まれ!」
「こんなチンケっな場所っに何時までもいたかねっし、さっさとゴミ共殺してっホームに帰るとすっかっ」
「き、貴様っ、一体何者なんだァァァ!」
「この世の中にはつまらない人間が多すぎるっ。人間の節制をしねぇとっ、世の中ってー器がっどんどん小さくなっちまうぜっ。ちゃんとみんな節制しねっとな」
そう言った少女の羽織っているコートの背には、かつて七つの大罪【暴食】と恐れられた、ベルゼブブ、左胸元にはくじら座の化け鯨、テュポンが描かれている。
「ふぅっ、さっさと今日っの食事を始めるっか。俺が食うだけでみんな節制出来るんだ、ありがたく思えよっ?」
少女の名前はテュポン。それ以外の名は捨ててしまった、【暴食】の化身。
【暴食】は静かに動き回る。国の要職である、元老院を潰すため。
だが、まだ彼女も知らない。彼女の背後で、彼女を狙うためゆるりと動く、黒腕の猛者がいることを。
明らかにステラの勝利確定な終わり方だったのだけれど、時々漏れる二人の会話をちょこちょこと聞いていると、ステラは元老院に狙われているらしい。
元老院は、自分たちの行動の一切に汚点を残したく無いのだろう。そう考えたらただのクズだな、元老院。
そうなると、次俺が戦う相手も元老院の資格だったりしちゃうのだろうか。例えば、『新しい国を作らせないため』だとか、『王国の安寧を壊したため』だとか。
まぁ、どちらも王様に頼めばなんとかなるけど。
国を作らせないためとか言ったって、それは俺たちに国を作らせるための口実が今回のこの大会なんだからどれだけ頑張っても王様の一言で国はできてしまうだろう。
王国の安寧を壊したためとか言うのなら、今の王国に俺を倒せるだけの強さの人間はいないだろう。
ちなみにこれは奢りじゃない。これも神様と契約したことによるスキルで、相手のステータスを見ることができるようになったのだ。
相手のマナの量、体力量、気力、攻撃力、防御力、魔攻力、魔防力、スピード、スキル、その全てが相手のことを意識してみると浮かび上がってくる。
今目の前でスタンバイをしているバルカンというやたらと筋肉質でハゲな、身長が2メートルはありそうなゴツイ剣闘士のステータスはこんな感じだ。
『バルカン・オールベール Lv.53
ステータス
HP:9000/9000
MP:300/300
物攻:20000/20000
魔攻:4000/4000
物防:84518/84518
魔防:3000/3000
固有スキル
『スラッシュ』→薙ぎ系の剣技の速度が10倍
『ドルバムの加護』→龍属性攻撃無効』
え、ちょっと待って。こいつものすごくスペックが低いよ、クトゥルフよりも物攻と物防低いよ!?
もしかしてこいつ、運だけで生き残った?
最初に運だけで生き残ったと思ったのはカッセルだったけれど、それは違うことが一宮君が倒されたことではっきりと判明した。
……まさか、代わりの運枠がこいつだったとは……
ちょっと元老院さん、こちらの方を甘く見すぎではないですか?
まぁ、これだけ舐められたらこちとらはらたつので、国際交流でのちのちこの国の元老院は潰します☆
王様の威厳掲げて、こっちの国から直で元老院に攻め込みます。もう容赦とかしない。舐められた分舐め返してやるよ。俺一人で片付けてやる。
そんなことを考えていると、アナウンスが流れてくる。
『両者の準備が揃ったそうなので、最終戦を始めたいと思います! では、バルカン選手、ユウ選手、位置についてください!』
あれ、これそういう奴だったっけ? 決まった位置から始まるヤツだったっけ? え、違うよね? 実況雑すぎじゃね? まあいいんだけど。
『それでは試合を始めていただきましょ打っ! 1回戦第四試合、スタート!』
はい、始まりました。どうしようかな、面白くしてもいいかもしれないんだよ、圧倒的すぎる力を今見せてもねぇ。最終戦で似通ったことやっちゃったら『まぁ、すぐ勝つんでしょ?』ってなっちゃって面白くないよねぇ。
あ、よーし、あの国民的映画の真似でもしてみようか。
「おい、いつまでぼーッと突ッ立ッてんだよォ、ニーチャン。魔王だかなんだか知らねェが、おれァそこら辺のウスノロ大臣様たちたァちげェぜ?」
あ、こいつ絶対かませ犬だ。初撃で済んじゃうやつだ。
「3分間待ってやる。そのあいだに俺に一撃でも食らわせられるといいな」
煽ってみた。
「調子に乗るなよォ? クソガキの分際でェ。おれァおめェみてェなガキが一番キライなんだよォッ!」
そう叫びながら背中に刺さっていた大剣を引き抜くバルカン。
『我が行こう』
『クフさんあざっす』
心の中で、彼の攻撃に対する防御全てを請け負ってくれたクーフーリンに礼を述べる。
え?
礼を述べてるやつの態度じゃない?
史上の偉人に失礼?
……知らねぇよ、そんなこと。
「現界術式だと!?」
この人雑魚そうなのにこういう知識はあるんだ。へー。
すごいすごい。褒めてあげるからさっさと攻撃してみろよ。
『我が名はクーフーリン。今は忠実なるマスターの僕だ。私のマスターは紋章を使うことなく私を……』
「ちょっと待って!? それ違うやつ!! それダメなやつ! あそれ言ったらみんな消えちゃうから!?」
『されど、マスターは先日、私が出ているあにめとやらのでーぶいでーとやらを見せてくれたではないか。
その中の私は、別のマスターになんたら戦争のために戦わされていたのだぞ? 無理矢理。
今のこの状況は、ゆってみれば理想そのものではないか。強制されることなく自由にしていられるのだから』
「言っていることはいいことだけど、引用してる部分がアウトなんだよ!? 分かっててやってない?
ねぇクフさん、この間だって勝手に現界して自分でPCいじってたよね? それだけ出来るんだったら分かってんじゃないの!?」
『……バレたか』
「かくしんはんだよこいつぅぅぅぅぅぅ!
!」
「ハァ、ハァ……いつになったら終わるのだ、この茶番は」
「その割には結構疲れてない?」
「そのォ現界した神の力がァ異常すぎてなァ」
そう。俺とクフさんが茶番劇をしているあいだにもこいつは俺に攻撃し続けていた。
もちろんクフさんがすべて防いでくれたけれど。
さてさて。
「時間だ、答えを教えてやろう」
俺も割と際どいセリフを言っている気がするが水に流してしまおう。トイレにポいっ。
「雷魔法『大空から降りしきる雷』」
その魔法を発動させた途端、精神世界の空は暗雲に包まれ、大量の光柱が地面に降り注ぎ、無数の雷鳴が轟いた。
おういえあ。これが魔王の力だ。センシタリア王国民たちよ、貴様らは魔王の前にいるのだ。
雷鳴が止んだあと、前身黒焦げになったバルカンが運び出され、ステージ外に消えていったことで俺の勝利が確定した。
さぁ、勝利の味を噛み締めますか。
『ここで緊急連絡です。カッセル氏がどこかへ消えてしまいました。彼の来ていた鎧の裏側に、『今日は楽しかった。また会いに来る』と書かれていることから、試合を放棄したと思われます。そしてリムラと勇者ステラの試合は引き分けだったためクトゥルフ選手とユウ選手には最終試合として戦っていただきます!』
わー、すっごーい! 君たちはご都合主義を最後まで通すフレンズなんだねー!
よっしゃぁ、こんなしょぼイベントとっとと終わらせて、サクッと日本に帰ってやるぜっ!
かかって来やがれタコ人間っ!
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そんな中、皆が精神世界に飛んでいるために体だけが空いてしまった会場では、無数の血しぶきが飛び交っていた。
「やっ! やめろおぉっ!」
「うるせっ。くうぞっ」
血しぶきの中心にいるのは真紅の髪を持つ少女。彼女の周りには会場を警備していたはずの王国兵達が、自らの鎧を紅く染めて倒れている。
「まだ食い足りねっんだよっ、欲望もっ、恐怖もっ、怨念もっ、憤怒もっ」
「何者だ貴様っ、止まれ!」
「こんなチンケっな場所っに何時までもいたかねっし、さっさとゴミ共殺してっホームに帰るとすっかっ」
「き、貴様っ、一体何者なんだァァァ!」
「この世の中にはつまらない人間が多すぎるっ。人間の節制をしねぇとっ、世の中ってー器がっどんどん小さくなっちまうぜっ。ちゃんとみんな節制しねっとな」
そう言った少女の羽織っているコートの背には、かつて七つの大罪【暴食】と恐れられた、ベルゼブブ、左胸元にはくじら座の化け鯨、テュポンが描かれている。
「ふぅっ、さっさと今日っの食事を始めるっか。俺が食うだけでみんな節制出来るんだ、ありがたく思えよっ?」
少女の名前はテュポン。それ以外の名は捨ててしまった、【暴食】の化身。
【暴食】は静かに動き回る。国の要職である、元老院を潰すため。
だが、まだ彼女も知らない。彼女の背後で、彼女を狙うためゆるりと動く、黒腕の猛者がいることを。
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