黒剣の魔王
第17話/王国最強の魔導師
カッセルが俺TUEEEEを盛大にやってしまった事で、元王国剣士のファンだった王国民たちは完全にカッセルのことを敵視したようだ。
まあ自業自得ってやつだよね。仕方ない。俺が直で話したことがあるわけじゃないし、一宮君に関係があるからと言って、易易とこの状況を助けてあげる優しさは持ち合わせていない。
ていうか、その一宮君が傷つけられたんだからなにか助けてあげるというような義理なんてないよな。
「ふぅ、次はスカコンティーね」
と、ステラが呟く。
そう。次はスカコンティーと国家戦略級魔導士『クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン』の試合だ。
いやぁ、まず勝機はないだろう。いくらスカコンティーが神の力を使うことが出来るからとはいえ、相手も『クトゥルフ』という名を冠している以上、相手も神の力を使ってくる、または引き継いでいる可能性があると考えてもいいだろう。
とういかほぼ確定だな。
この世界に俺たちの世界の神の名が知られているということは、その神の力を持っているか、それに付随する特殊能力、特殊な道具を持っていると考えるのが妥当だ。
今まで体感してきたこの世界は、まさにライトノベルに出てきそうな世界そのもの。
そんな世界において、神の名前が出て関わりがないだなんてことはまずありえない。
これは、スカコンティー、せめて苦しまないように早めにやられろ、と助言したい。
あまり言いたいことではないが、一目巨人とクトゥルフでは、神話的にも能力的にもクトゥルフの方が圧倒的に有利だ。
加えて、あの男は国家戦略級魔導士。
つまり『魔法』が使えるのだ。
この世界に来てから、魔法が使える=普通なのかと思ったが、人間が特別魔法に適正が高かっただけで、ゴブリン、ハイゴブリン、オーガ、オークなどの半魔人は魔法の適性が基本的に低いらしい。
オークはそこを補うために幼少期から英才教育が施されるが、ゴブリン、そしてそこから派生するハイゴブリン、オーガ達はそもそも脳筋性が強い種族なので魔法を使おうという考え方があまりない。
でなければ、わざわざ『ゴブリンメイジ』などと、「私魔法使えますよ〜!」なんてわかりそうな個体名がつくはずがない。
……さらに脳筋の中な脳筋であるスカコンティーには(流石におさまで上り詰めているので頭は悪くない。あくまでここでいうのは戦闘スタイル)魔法を相手に使われるという概念が今の今まで無かったはずだ。
どんな生き物でも、新しい攻撃に対する対抗をすぐにできるなんてことは無い。
超絶脳筋性のスカコンティーなら尚更だ。
『さ〜て!
始まりますよォ! 我が王国が誇る国家戦略級魔導士、クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン様ヴァーサスっ! 魔王軍半魔人部隊総隊長、スカコンティー選手です!』
試合開始のアナウンスがかかる。
おいちょっと待て、俺がいつスカコンティーを『魔王軍半魔人部隊総隊長』なんていう仰々しい名前のポストにつけた? いや絶対につけてない。ありえない。
『ちなみにこの情報は、魔王軍三大魔王の1人、アヤ・タカナシ様から頂きました!』
おい、魔王軍三大魔王ってなにし。俺知らないんだけど。俺が知らないとことろでどんどん俺の軍の役職の名前ができてきてるんだけど。
そんなことを考えていると、
『はい! ではお二人共前に出てください! ばとるぅ、スタート!』
と、司会が試合開始の合図をし、それと同時にゴングがなる。
一宮君の時の試合ってこんな演出ついてたっけ? と思いながらも、俺は始まった試合を見ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まずスカコンティーが右手に持ったミスリルの棍棒を思い切りクトゥルフの首めがけて右上から斜めに大きく振った。
「申し訳ない。あなたに恨みはないが、我らが王のためにここであなたには負けてもらおう!
クトゥルフ殿!」
……言葉遣いはしっかりしているのに戦闘スタイルは脳筋なんだよなぁ。
もったいない。実は以外にも頭は回るのに。
一方、スカコンティーの棍棒を受けたはずのクトゥルフは全くどうじていない。
というかそもそも当たっていない。
クトゥルフの方に当たる直前で綺麗に止まっているのだ。
「ふーん、これが君の全力なのかい?」
スカコンティーを挑発するようにクトゥルフが言う。
「馬鹿か。我が主の御前で行われる遊戯で最初から全力で戦うなどという恥ずかしい真似をこのスカコンティーが取るわけがなかろう」
さらっと受け流すように発言し、大きく後ろへと跳んだスカコンティー。
その着地点に大きな魔法陣が浮かび上がる。
「だよねー、君は自信のある時の前で僕がはじめから仕掛けておいた魔方陣に引っかかって一撃でやられるような真似なんて、シナイヨネ?」
クトゥルフがそう言った瞬間に会場の温度が一気に下がり、精神体であるはずなのに一部の人は寒さを感じて気絶している。
「氷魔法『冷槍』」
スカコンティーの体を1本の巨大な氷の槍が貫く。
声を上げることも出来ずに槍に刺されたスカコンティーの血が氷の槍の先端を赤く染めている。
「あれれ、一発でやられちゃったかぁ、あはは。手加減したつもりなんだけどなぁ」
そう呟くとクトゥルフは、
「ねぇ、早く解放してよ、その神の力を。まだ本気じゃないんだろう?」
と、スカコンティーに煽りを入れるが、既に気絶してしまっているスカコンティーにはもうそれを聞き入れる力は無かった。
会場全体が呆気に取られた中、かなり遅れて審判が試合終了の合図を出し、スカコンティーとクトゥルフの試合は終了した。
圧倒的な勝利を見せた最強の魔導士は、満面の笑みで観覧席へと帰っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何なんだよあいつ、あのスカコンティーが一撃って。
「......やっぱり、あの人は化け物よ......」
隣にいたステラがまるで怯えるように呟き、先ほど観覧席に来た一宮君も同意の意の頷きを見せている。
圧倒的な力を前に叩き潰された自信の配下の姿を見て呆気に取られた。
ラノベではよくある展開かもしれない。
何かしら対策は取れたかもしれない。
それなのに……
はじめは鬱陶しく思っていたけれど、よくよく考えれば、この世界に来てから初めて自分のことを頼ってきてくれた良い奴だった。
そんな自分の配下が、仲間がやられて、たとえ試合だったとしてもこの怒りが到底収まるとは思えない。
「叩き潰す」
そう呟いて、俺は対クトゥルフ戦の構想を練って、スカコンティーの仇討ちを果たすことに決めた。
待ってろ、お前の敵は俺が討つ。
「あの、なんかその言い方、私が死んだように聞こえるんですが」
「……お前が黙ってればいいシーンだったんだけどな……」
まあ自業自得ってやつだよね。仕方ない。俺が直で話したことがあるわけじゃないし、一宮君に関係があるからと言って、易易とこの状況を助けてあげる優しさは持ち合わせていない。
ていうか、その一宮君が傷つけられたんだからなにか助けてあげるというような義理なんてないよな。
「ふぅ、次はスカコンティーね」
と、ステラが呟く。
そう。次はスカコンティーと国家戦略級魔導士『クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン』の試合だ。
いやぁ、まず勝機はないだろう。いくらスカコンティーが神の力を使うことが出来るからとはいえ、相手も『クトゥルフ』という名を冠している以上、相手も神の力を使ってくる、または引き継いでいる可能性があると考えてもいいだろう。
とういかほぼ確定だな。
この世界に俺たちの世界の神の名が知られているということは、その神の力を持っているか、それに付随する特殊能力、特殊な道具を持っていると考えるのが妥当だ。
今まで体感してきたこの世界は、まさにライトノベルに出てきそうな世界そのもの。
そんな世界において、神の名前が出て関わりがないだなんてことはまずありえない。
これは、スカコンティー、せめて苦しまないように早めにやられろ、と助言したい。
あまり言いたいことではないが、一目巨人とクトゥルフでは、神話的にも能力的にもクトゥルフの方が圧倒的に有利だ。
加えて、あの男は国家戦略級魔導士。
つまり『魔法』が使えるのだ。
この世界に来てから、魔法が使える=普通なのかと思ったが、人間が特別魔法に適正が高かっただけで、ゴブリン、ハイゴブリン、オーガ、オークなどの半魔人は魔法の適性が基本的に低いらしい。
オークはそこを補うために幼少期から英才教育が施されるが、ゴブリン、そしてそこから派生するハイゴブリン、オーガ達はそもそも脳筋性が強い種族なので魔法を使おうという考え方があまりない。
でなければ、わざわざ『ゴブリンメイジ』などと、「私魔法使えますよ〜!」なんてわかりそうな個体名がつくはずがない。
……さらに脳筋の中な脳筋であるスカコンティーには(流石におさまで上り詰めているので頭は悪くない。あくまでここでいうのは戦闘スタイル)魔法を相手に使われるという概念が今の今まで無かったはずだ。
どんな生き物でも、新しい攻撃に対する対抗をすぐにできるなんてことは無い。
超絶脳筋性のスカコンティーなら尚更だ。
『さ〜て!
始まりますよォ! 我が王国が誇る国家戦略級魔導士、クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン様ヴァーサスっ! 魔王軍半魔人部隊総隊長、スカコンティー選手です!』
試合開始のアナウンスがかかる。
おいちょっと待て、俺がいつスカコンティーを『魔王軍半魔人部隊総隊長』なんていう仰々しい名前のポストにつけた? いや絶対につけてない。ありえない。
『ちなみにこの情報は、魔王軍三大魔王の1人、アヤ・タカナシ様から頂きました!』
おい、魔王軍三大魔王ってなにし。俺知らないんだけど。俺が知らないとことろでどんどん俺の軍の役職の名前ができてきてるんだけど。
そんなことを考えていると、
『はい! ではお二人共前に出てください! ばとるぅ、スタート!』
と、司会が試合開始の合図をし、それと同時にゴングがなる。
一宮君の時の試合ってこんな演出ついてたっけ? と思いながらも、俺は始まった試合を見ることにした。
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まずスカコンティーが右手に持ったミスリルの棍棒を思い切りクトゥルフの首めがけて右上から斜めに大きく振った。
「申し訳ない。あなたに恨みはないが、我らが王のためにここであなたには負けてもらおう!
クトゥルフ殿!」
……言葉遣いはしっかりしているのに戦闘スタイルは脳筋なんだよなぁ。
もったいない。実は以外にも頭は回るのに。
一方、スカコンティーの棍棒を受けたはずのクトゥルフは全くどうじていない。
というかそもそも当たっていない。
クトゥルフの方に当たる直前で綺麗に止まっているのだ。
「ふーん、これが君の全力なのかい?」
スカコンティーを挑発するようにクトゥルフが言う。
「馬鹿か。我が主の御前で行われる遊戯で最初から全力で戦うなどという恥ずかしい真似をこのスカコンティーが取るわけがなかろう」
さらっと受け流すように発言し、大きく後ろへと跳んだスカコンティー。
その着地点に大きな魔法陣が浮かび上がる。
「だよねー、君は自信のある時の前で僕がはじめから仕掛けておいた魔方陣に引っかかって一撃でやられるような真似なんて、シナイヨネ?」
クトゥルフがそう言った瞬間に会場の温度が一気に下がり、精神体であるはずなのに一部の人は寒さを感じて気絶している。
「氷魔法『冷槍』」
スカコンティーの体を1本の巨大な氷の槍が貫く。
声を上げることも出来ずに槍に刺されたスカコンティーの血が氷の槍の先端を赤く染めている。
「あれれ、一発でやられちゃったかぁ、あはは。手加減したつもりなんだけどなぁ」
そう呟くとクトゥルフは、
「ねぇ、早く解放してよ、その神の力を。まだ本気じゃないんだろう?」
と、スカコンティーに煽りを入れるが、既に気絶してしまっているスカコンティーにはもうそれを聞き入れる力は無かった。
会場全体が呆気に取られた中、かなり遅れて審判が試合終了の合図を出し、スカコンティーとクトゥルフの試合は終了した。
圧倒的な勝利を見せた最強の魔導士は、満面の笑みで観覧席へと帰っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何なんだよあいつ、あのスカコンティーが一撃って。
「......やっぱり、あの人は化け物よ......」
隣にいたステラがまるで怯えるように呟き、先ほど観覧席に来た一宮君も同意の意の頷きを見せている。
圧倒的な力を前に叩き潰された自信の配下の姿を見て呆気に取られた。
ラノベではよくある展開かもしれない。
何かしら対策は取れたかもしれない。
それなのに……
はじめは鬱陶しく思っていたけれど、よくよく考えれば、この世界に来てから初めて自分のことを頼ってきてくれた良い奴だった。
そんな自分の配下が、仲間がやられて、たとえ試合だったとしてもこの怒りが到底収まるとは思えない。
「叩き潰す」
そう呟いて、俺は対クトゥルフ戦の構想を練って、スカコンティーの仇討ちを果たすことに決めた。
待ってろ、お前の敵は俺が討つ。
「あの、なんかその言い方、私が死んだように聞こえるんですが」
「……お前が黙ってればいいシーンだったんだけどな……」
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