黒剣の魔王

ニムル

第12話/『神s』

『説明しよう。『神s』とは、この男がむやみやたらに召喚し、契約した神たちの総称である』

「いきなり辛辣だなぁ……」

『そんなことはない。私はそのままのことを言っているぞ? どこに貴様に害を成す要素があるというのだ』

「天然なのかぁ、気づいてないのが腹立つね」

『私が天然だと? 失敬な。貴様はブリテンの王をなんと心得るか』

「天然王アーさんこと、アーサー・ペンドラゴン」

『……貴様、私に殺されても文句は言えんからな』

「無理無理。俺の体、アーさんのエクスカリバー通さなかったじゃん」

『......』

 いきなり意味不明な説明口調で辛辣な内容を俺に吐くやつは、たとえ某国の王様だったって容赦はしないZE☆

「エクスカリバーって、宝剣じゃないの……
それを通さなかったって……アタマオカシイアリエナイコイツナンナノ……」

 あれまステラがおかしくなっちゃった。こういう時は冷蔵庫の中にぶち込んで頭を冷やさせよう。

「ユミルさん、例のアレを」

『御意。『氷雪牢』であるな?』

「そうそう」

「そんな名前からして恐ろしそうなところに連れてこうとするのはやめなさいっ!」

「ちっ、正気に戻りやがったか……」

 勇者パーティが帰ってくる前に、呼び出した神達の能力と性格を把握してできる限り俺に対して好印象を持ってくれるように務めた成果。

 めちゃくちゃ得だね。多分王国軍は洞窟に一歩も足を踏み入れることなく制圧されるだろうね(フラグ)。

 なんせ洞窟の入口は幻を見せられるタイプの神様たちの力で塞がり、さらに森中にゴブリンたちの実態のある幻影を投影してもらっている。

 本物と同じ強さで疲れることも無い。つまり長期戦になったら本物より強いわけで。

 そんな奴らを相手にして、洞窟に来たら入口がありませんでした、さぁどうしましょう。という筋書き。

 さらに幻が貼ってある入口には三万を超えるゴツ神、モンスター連合軍を配置。

 指揮官はアーさんに頼んだ。渋々ながら引き受けてくれたのでまぁよしとしよう。

 流石にそこを突破されることはないと思うが、そこも突破された時のためにロリ神軍団を配備。

 指揮官はロリ神最高位(暫定)のリヴァイアさん(リヴァイアサン)に頼んだ。

 あの人はなんか色々と強いらしいが、いざ戦闘となったら『滾るぜぇ』とか言って大陸を滅ぼしそうなので今回は指揮官で我慢してもらう。

 そして捕まえた王国兵士をポンポンと『氷雪牢』に閉じ込めてくれるのがまたコレ別枠の氷の神sの皆さん。

 ユミルさんを筆頭にポンポン投げ入れてもらいます。襲ってくるやつに慈悲はねぇ、捕虜として永遠にここで働いてもらおうか。

 と、こんな感じで完全な準備がととのったところで、ちゃっかり疲弊した王国軍の皆さんが到着いたしましたー!

 ここからは何もすることがないので透過魔法を使って空中から観戦をしよう。

 あ、姉ちゃんも来た。

「おーっと、ここで光るはスカコンティーの奥義・棍棒槍投コンジョーランスだァ!

幻影をすり抜けて王国軍の第一陣に直撃ぃ!なんと、スカコンティーだけで王国軍の第一陣を壊滅させたァ!?

我々が必要だったのかが問われるレベルです! 解説のあやさん、これはどういうことでしょう!?」

「洞窟の壁の幻影の奥から攻撃することによって、相手の油断を狙って攻撃したのでしょう。彼は意外と頭が良さそうですからね。ただしこれは幻影がないと成立しなかった技、我々の存在意義は十分にあると思われます」

「そうですか、それは良かったです!

おっと!?

いつの間にか王国軍の7陣までもか殲滅及び捕虜として捕獲されています!

王国、いったい何陣まで用意してきているのでしょうか!?

あっ、第8陣が幻影を見破り、通り抜けてきました、これは痛いっ!」

「大損害ですね、流石にスカコンティーさん一人では抑えられませんでしたか」

「スカコンティー、1人本陣へとひた走るっ!」

「おっと、後ろを誰かが射ようとしていますね」

「あれは、王国の左大臣、アルタイルでしょうか」

「多分そうですね、あのハゲヅラは彼以外ありえません」

「いきなりひどいいわれようだぁ!

スカコンティー、左大臣の射た矢を棍棒で跳ね返すっ!

さすがの身体能力ですね、気色悪いったらありゃしない。まだ神の力使ってないみたいですからね」

「あのハゲヅラ、さっきからスカコンティーさんしか狙っていませんね、何かあるのでしょうか?」

「謎ですね……」


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 スカコンティー、死ね、死ね死ね

 この世から消えろ、消え去れ

 私がこの手で葬ってやる

 我が弓にいられて早急に死せ

 われは貴様が生きていることを許してはいない


王国左大臣・ハゲワシのアルタイルはその心に宿した憎悪の矢をスカコンティーに放ち続ける。

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「ん?」

「どうしたの? ゆいちゃん」

「なんかさっきから変な音がしてるんだよ」

「きっと気のせいだって。私には聞こえてないよ?」

 そんな会話をするふたりの背後に土竜のような影がゆっくりと迫りつつあった。

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