『愛してるゲーム』に負けたらキスするなんて先輩のバカ!
7 金輪際、奏多様には近づかないと誓いなさい!
「あの、あたしですけど。何か御用ですか?」
あたしが、おずおずと手をあげると、その子はギロっと睨みつけると、つかつかと座るあたしの近くまで歩みよると、腕を組んで見下ろして来た。
「そう、あなたが。ただのちんちくりんじゃない。心配して損しましたわ!」
「ちょっと! 梨花がちんちくりんってどういうことよ!? 喧嘩ならあたしが買うわよ!?」
瑠美ちゃんがキレて、机をバンっと叩き、立ち上がる。
「あーらやだ、野蛮ですこと。わたくしは、蒼井梨花に一言釘を刺しに来ただけですから、終わったらすぐに帰りますわ!」
そう言うと、あたしに向き直り、眼力鋭く睨みつけると、言い放つ。
「蒼井梨花! あなた、奏多様とプラネタリウムに行っただけで飽き足らず、毎夜奏多様にご迷惑をかけているでしょう! あーイヤラシイ! 奏多様はわたくし、竜崎茜の婚約者です! 金輪際、奏多様には近づかないと誓いなさい!」
ええ!?
「婚約者ぁ!? 婚約者ならわざわざ発狂して喧嘩売りに来る必要ないじゃない! 梨花と奏多先輩はもう何の関係もないんだから! そーんなに心配する必要があるなら、奏多先輩に直接言ったらどう!?」
瑠美ちゃんが我慢できずに言い返すと、竜崎茜さんはぐぎぎと引きつって固まった。
「瑠美ちゃんっ。言い過ぎだよ! ――でも、本当に、あたし、奏多先輩にはとっくにフラれているし、プラネタリウムには確かに行ったけど、デートって訳じゃないし。その、夜にあたしが迷惑をかけてるっていうのも何がなんだか……」
困惑してあたしが言うと、竜崎茜さんは顔を真っ赤にして怒った。
「まあ! 白々しい! プラネタリウムに一緒に行っておいてデートじゃないですって!? デート以外の何だって言うのよ! 奏多様にちょっかいかけておいて、婚約者には正々堂々と対峙も出来ないなんて、とんだ卑怯者ね! あなた最低よ!」
「そんな――!」
なんでそうなるの!? そこまで言われる覚えはないよ!
さすがのあたしも頭に来て、何か言い返そうと口を開いた。その時、
「茜! こんなとこまで来て、なに考えてんだ!」
「――奏多先輩!」
金髪黒目の奏多先輩が、竜崎茜さんの腕を掴んで振り向かせた。
「奏多様! わたくしを心配して迎えに来て下さったのね! お優しいんだから!」
「ばか、そうじゃない」
奏多先輩の胸に甘えるように飛び込んだ竜崎茜さんに、先輩は困ったように溜息をついた。
「ごめん、梨花。こいつが迷惑かけたな。行くぞ、茜」
そう言って、奏多先輩はあたしを見たあと、竜崎茜さんを連れて部室から去って行った。
あたしは、それを呆然と見送るしか出来なかった。
♡ ♡ ♡
「はあああ!? いまの何!?」
瑠美ちゃんは怒りすぎて両拳を握り締めている。無意識かもしれないけど、ちょっと怖い。瞳ちゃんも怒っていて、ガタンっと音を立ててパイプ椅子に座ると、綾鷲をぐびぐびと飲み干して、机に叩きつけた。
「あったま来た! マジないわー。竜崎茜! しかも、何!? 彼女じゃなくて婚約者だったの!? 奏多先輩あれと結婚すんの!? 趣味おかしい! どうかしてるわ! あれと比べたら絶対梨花のが可愛い!」
瑠美ちゃんも大きく頷いて瞳ちゃんに同意を示してくれた。
「あはは。でも、あの人すごいスタイル良かったみたいだし、美人だったよ。奏多先輩と並ぶと、ファッション誌の広告に使えそうなくらい絵になってたもん。無理もないよ……」
と、自分で言ってて悲しくなって来る。
「もう、奏多先輩なんて絶対なしだわ! これでハッキリして良かった! お言葉通り、二度と会ってあげなくていいよ!」
瑠美ちゃんが塩でもまきそうな顔で言った時、騒ぎを聞きつけた一樹部長が部室に入って来た。
「部長!」
「ごめん、騒がせたみたいだね。竜崎さんにここを教えちゃったの、実は僕なんだ。まさか奏多の婚約者だとは思わなくて。本当にごめんね」
気遣わしげにあたし達をみやる一樹部長。黒の短髪にメガネをかけて、白の半袖シャツにデニムという出で立ちは真面目な一樹先輩らしい。
「いえ、大丈夫です! 特に何もされてませんし」
あたしが慌てて答えると、瑠美ちゃんも答える。
「そうですよ! 悪いのはあの牛乳オンナと奏多先輩であって、一樹先輩は何も知らなかった訳ですから仕方ありません!」
瑠美ちゃん、牛乳オンナって……確かに胸大きかったけどさあ。
しかし、一樹部長は、さらに落ち込んだような顔になって、口を開いた。
「ごめん。実は僕、奏多に婚約者がいることは知ってたんだ。だけど、道を尋ねられて、君たちの友達か誰かだと勘違いしちゃって――もしかしてと気付いて、すぐに奏多を呼んだんだ。本当にごめん!」
拝むように謝られて、あたしは慌ててそれをやめさせるが、瞳ちゃんは一樹部長に身を乗り出して来た。
「ねえ、一樹部長! 奏多先輩があの婚約者と付き合い始めたのっていつですか!? 知ってたら教えて下さい!」
「瞳ちゃん!?」
驚いて瞳ちゃんを見ると、完全に目が座っている。とても怖い。
「だって、奏多先輩はどう考えても梨花に気のある素振りを見せていたのに、いきなり婚約者が現れるなんて、はっきり言って面白くないわ。もし、婚約者がいるのに、梨花をからかっていたんだとしたら、絶対に許せない! 百倍返しにしなくちゃ!」
「い、いいよう、瞳ちゃん! 大げさだよ!」
「よくない! 梨花がよくても、あたし達の気が収まらないわ!」
と、瑠美ちゃんも物騒な笑みを浮かべている。心強いけど、絶対に二人を敵に回したくないな、と密かにあたしは思った。
「で!? 奏多先輩とあの牛乳オンナとは、いつ婚約したんですか!?」
瑠美ちゃんと瞳ちゃんに詰め寄られて、引きつった笑顔を見せながら、一樹部長は口を開いた。
「ええっと、確か――6月の半ばくらいだったかな?」
「6月の半ばって、今年のですか? 昔からの許嫁とかでなく!?」
瑠美ちゃんが詰め寄る。
「うん。もちろんそうだよ! 奏多に許嫁なんていないよ」
「確かな情報なんですか!? 奏多先輩を担いでたって後で分かったら、一樹部長もただじゃすみませんよ!?」
瞳ちゃんが詰め寄る。
「や、やだな~。僕がそんな(怖い)ことする訳ないだろ? 大事な部員にやめられたら困るからね。僕は君たちの味方だから、安心して。ね?」
冷や汗をだらだら流しながら、一樹部長は引きつった笑顔で答えた。
「それもそうね」
と、瑠美ちゃんと瞳ちゃんが一旦引き下がると、一樹部長はほっと溜息をついた。
「6月の半ばって言うと、あたし達が梨花の『モテ女子イメチェン大作戦』の真っ最中じゃない。つまり、プラネタリウムの約束をした時には、奏多先輩に婚約者はいなかったってこと!? だとしても、すぐに婚約するようなオンナがいるのに、遊びの約束するなんて、ましてや断りもせず約束通りプラネタリウムに行くなんて、やっぱり許せない!」
瑠美ちゃんは、また、両拳を白くなるまで握り締めている。
「瑠美、百倍返しの方法は何がいいかしら?」
瞳ちゃんも怪しく笑っている。
すると、一樹部長がまあまあまあ、と二人を取りなすようになだめにかかった。
「そんなに奏多を責めないでやって。あいつも悪気はないんだから」
「はあああ!? 悪気、ありますよ! あるに決まってるじゃないですか!」
あたしが、キレて暴れだしそうな瑠美ちゃんを抱きついて止めると、こわばった表情の一樹部長が慌てて首を振った。
「違うんだ! 政略結婚なんだ! 奏多は竜崎さんと婚約なんてするつもり全くなかったんだよ!
あたしが、おずおずと手をあげると、その子はギロっと睨みつけると、つかつかと座るあたしの近くまで歩みよると、腕を組んで見下ろして来た。
「そう、あなたが。ただのちんちくりんじゃない。心配して損しましたわ!」
「ちょっと! 梨花がちんちくりんってどういうことよ!? 喧嘩ならあたしが買うわよ!?」
瑠美ちゃんがキレて、机をバンっと叩き、立ち上がる。
「あーらやだ、野蛮ですこと。わたくしは、蒼井梨花に一言釘を刺しに来ただけですから、終わったらすぐに帰りますわ!」
そう言うと、あたしに向き直り、眼力鋭く睨みつけると、言い放つ。
「蒼井梨花! あなた、奏多様とプラネタリウムに行っただけで飽き足らず、毎夜奏多様にご迷惑をかけているでしょう! あーイヤラシイ! 奏多様はわたくし、竜崎茜の婚約者です! 金輪際、奏多様には近づかないと誓いなさい!」
ええ!?
「婚約者ぁ!? 婚約者ならわざわざ発狂して喧嘩売りに来る必要ないじゃない! 梨花と奏多先輩はもう何の関係もないんだから! そーんなに心配する必要があるなら、奏多先輩に直接言ったらどう!?」
瑠美ちゃんが我慢できずに言い返すと、竜崎茜さんはぐぎぎと引きつって固まった。
「瑠美ちゃんっ。言い過ぎだよ! ――でも、本当に、あたし、奏多先輩にはとっくにフラれているし、プラネタリウムには確かに行ったけど、デートって訳じゃないし。その、夜にあたしが迷惑をかけてるっていうのも何がなんだか……」
困惑してあたしが言うと、竜崎茜さんは顔を真っ赤にして怒った。
「まあ! 白々しい! プラネタリウムに一緒に行っておいてデートじゃないですって!? デート以外の何だって言うのよ! 奏多様にちょっかいかけておいて、婚約者には正々堂々と対峙も出来ないなんて、とんだ卑怯者ね! あなた最低よ!」
「そんな――!」
なんでそうなるの!? そこまで言われる覚えはないよ!
さすがのあたしも頭に来て、何か言い返そうと口を開いた。その時、
「茜! こんなとこまで来て、なに考えてんだ!」
「――奏多先輩!」
金髪黒目の奏多先輩が、竜崎茜さんの腕を掴んで振り向かせた。
「奏多様! わたくしを心配して迎えに来て下さったのね! お優しいんだから!」
「ばか、そうじゃない」
奏多先輩の胸に甘えるように飛び込んだ竜崎茜さんに、先輩は困ったように溜息をついた。
「ごめん、梨花。こいつが迷惑かけたな。行くぞ、茜」
そう言って、奏多先輩はあたしを見たあと、竜崎茜さんを連れて部室から去って行った。
あたしは、それを呆然と見送るしか出来なかった。
♡ ♡ ♡
「はあああ!? いまの何!?」
瑠美ちゃんは怒りすぎて両拳を握り締めている。無意識かもしれないけど、ちょっと怖い。瞳ちゃんも怒っていて、ガタンっと音を立ててパイプ椅子に座ると、綾鷲をぐびぐびと飲み干して、机に叩きつけた。
「あったま来た! マジないわー。竜崎茜! しかも、何!? 彼女じゃなくて婚約者だったの!? 奏多先輩あれと結婚すんの!? 趣味おかしい! どうかしてるわ! あれと比べたら絶対梨花のが可愛い!」
瑠美ちゃんも大きく頷いて瞳ちゃんに同意を示してくれた。
「あはは。でも、あの人すごいスタイル良かったみたいだし、美人だったよ。奏多先輩と並ぶと、ファッション誌の広告に使えそうなくらい絵になってたもん。無理もないよ……」
と、自分で言ってて悲しくなって来る。
「もう、奏多先輩なんて絶対なしだわ! これでハッキリして良かった! お言葉通り、二度と会ってあげなくていいよ!」
瑠美ちゃんが塩でもまきそうな顔で言った時、騒ぎを聞きつけた一樹部長が部室に入って来た。
「部長!」
「ごめん、騒がせたみたいだね。竜崎さんにここを教えちゃったの、実は僕なんだ。まさか奏多の婚約者だとは思わなくて。本当にごめんね」
気遣わしげにあたし達をみやる一樹部長。黒の短髪にメガネをかけて、白の半袖シャツにデニムという出で立ちは真面目な一樹先輩らしい。
「いえ、大丈夫です! 特に何もされてませんし」
あたしが慌てて答えると、瑠美ちゃんも答える。
「そうですよ! 悪いのはあの牛乳オンナと奏多先輩であって、一樹先輩は何も知らなかった訳ですから仕方ありません!」
瑠美ちゃん、牛乳オンナって……確かに胸大きかったけどさあ。
しかし、一樹部長は、さらに落ち込んだような顔になって、口を開いた。
「ごめん。実は僕、奏多に婚約者がいることは知ってたんだ。だけど、道を尋ねられて、君たちの友達か誰かだと勘違いしちゃって――もしかしてと気付いて、すぐに奏多を呼んだんだ。本当にごめん!」
拝むように謝られて、あたしは慌ててそれをやめさせるが、瞳ちゃんは一樹部長に身を乗り出して来た。
「ねえ、一樹部長! 奏多先輩があの婚約者と付き合い始めたのっていつですか!? 知ってたら教えて下さい!」
「瞳ちゃん!?」
驚いて瞳ちゃんを見ると、完全に目が座っている。とても怖い。
「だって、奏多先輩はどう考えても梨花に気のある素振りを見せていたのに、いきなり婚約者が現れるなんて、はっきり言って面白くないわ。もし、婚約者がいるのに、梨花をからかっていたんだとしたら、絶対に許せない! 百倍返しにしなくちゃ!」
「い、いいよう、瞳ちゃん! 大げさだよ!」
「よくない! 梨花がよくても、あたし達の気が収まらないわ!」
と、瑠美ちゃんも物騒な笑みを浮かべている。心強いけど、絶対に二人を敵に回したくないな、と密かにあたしは思った。
「で!? 奏多先輩とあの牛乳オンナとは、いつ婚約したんですか!?」
瑠美ちゃんと瞳ちゃんに詰め寄られて、引きつった笑顔を見せながら、一樹部長は口を開いた。
「ええっと、確か――6月の半ばくらいだったかな?」
「6月の半ばって、今年のですか? 昔からの許嫁とかでなく!?」
瑠美ちゃんが詰め寄る。
「うん。もちろんそうだよ! 奏多に許嫁なんていないよ」
「確かな情報なんですか!? 奏多先輩を担いでたって後で分かったら、一樹部長もただじゃすみませんよ!?」
瞳ちゃんが詰め寄る。
「や、やだな~。僕がそんな(怖い)ことする訳ないだろ? 大事な部員にやめられたら困るからね。僕は君たちの味方だから、安心して。ね?」
冷や汗をだらだら流しながら、一樹部長は引きつった笑顔で答えた。
「それもそうね」
と、瑠美ちゃんと瞳ちゃんが一旦引き下がると、一樹部長はほっと溜息をついた。
「6月の半ばって言うと、あたし達が梨花の『モテ女子イメチェン大作戦』の真っ最中じゃない。つまり、プラネタリウムの約束をした時には、奏多先輩に婚約者はいなかったってこと!? だとしても、すぐに婚約するようなオンナがいるのに、遊びの約束するなんて、ましてや断りもせず約束通りプラネタリウムに行くなんて、やっぱり許せない!」
瑠美ちゃんは、また、両拳を白くなるまで握り締めている。
「瑠美、百倍返しの方法は何がいいかしら?」
瞳ちゃんも怪しく笑っている。
すると、一樹部長がまあまあまあ、と二人を取りなすようになだめにかかった。
「そんなに奏多を責めないでやって。あいつも悪気はないんだから」
「はあああ!? 悪気、ありますよ! あるに決まってるじゃないですか!」
あたしが、キレて暴れだしそうな瑠美ちゃんを抱きついて止めると、こわばった表情の一樹部長が慌てて首を振った。
「違うんだ! 政略結婚なんだ! 奏多は竜崎さんと婚約なんてするつもり全くなかったんだよ!
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