元神様の異世界放浪記(仮

辛味噌

第15話 ある依頼を受けて

「我が主。モノフェーズ男爵を救っていただいたばかりか、気功熊プラナ・ベアをも倒して頂き主に代ってお礼申し上げる」
 え?男爵なのに老朽化してるポンコツ魔導従士マギ・スレイブ乗りなのか?と思わず突っ込みそうになったが……。
 領地の場所的にもいわゆる門閥貴族ではなさそうだが、戦略的にも重要性が高い商都ウィンダリアの隣の領地がこんな貧乏貴族とか…..本来なら東方地域に生息している気功熊プラナ・ベアがこんな場所一匹だけ出没したってあたりも含めて政略絡みで巻き込まれたか?
 思案に耽っている間にメフィリアがモノフェーズ男爵の症状や対処方法を伝えている。大破した魔導従士マギ・スレイブ時空倉庫ストレージに収納して館まで運ぶことになった。

 今夜はモノフェーズ男爵の館に宿泊することになった。男爵の意識は戻ってないが食事と湯浴みを済ませて与えられた客間で寛いでいると使用人からモノフェーズ男爵の意識が戻ったと連絡があり、話がしたいととの事だったので相棒を伴って男爵の書斎へと案内される。

 ソファーに掛ける様に促され腰を下ろす。控えていた女中メイドがお茶をおいていく。手際はあまりよくない。館も含めて貧乏っぽさが滲み出ていたが、使用人もあまり質の高いのを雇えないのだろうか?
「この度は苦境を救っていただき感謝に堪えない」
 モノフェーズ男爵の礼に相棒が答える。見た目も所作も優雅な相棒相手だと貴族との対応も楽である。大抵の者は相棒を見てどこかの貴族の貴公子と勘違いするのである。差し詰め俺はその護衛である。
「偶々通りがかったのだけでしたが、運が良いと言うべきでしょうか」
「私の愛騎も老朽化していたとはいえ、まさか打倒されるとは想定していませんでした。恐ろしい魔物です。ですがそれを一人で討伐したあのドワーフは素晴らしい武勇の持ち主ですな」
 武勇は確かに素晴らしいな。あれ以上の力量の者を探せと言われてそうそう見つかるとは思えないレベルだ。バルドの怖いところは気功闘術を習得した訳では無いにもかかわらず同じようなことを当たり前に熟してしまう所だろうか?流石は本物の妖精族と言うべきかな。
 思案から戻ってみると双方沈黙している。
「実はあなた方にお願いがあるのだが……」
 モノフェーズ男爵の話を聞くことにした。



 与えられた客間に戻ってきて相談タイムだ。
「モノフェーズ男爵の依頼は私個人で済ませてしまおうかと思います」
「また武者修行の旅の途中の某国の貴族の若様って設定で潜り込むのか?」
「それが無難でしょう」
「確かに俺やバルドに貴族の若様は無理だしな。社交界に潜り込むならフェリウスに任せておくか。そういえばいつから行動を起こす?」
「実はもう起こしてます。湯浴み後に胡散臭い間者を見つけたんで、捕まえて3日分ほど記憶を抜いてから暗示をかけてあります」
「仕事受ける前じゃないか」
「そうとも言いますが、何となく予感がしたもので。今から移動を開始します。朝食時にでも男爵には行動開始したと返答しておいてください」
 窓を開けると、真語魔法の飛行フライト隠蔽コンシールを掛けてから飛び立っていった。相棒が居ないと金銭関連の管理と交渉事とか面倒くさいな……。


 朝食後に仕事は請け負ったことを告げ館を発つ。こっちはこっちで別の依頼を済ませなければならない。領地を注意深く観察しつつ商都ウィンダリアへと向かう。
「この土地だけどものすごい痩せてるの。それも人為的というか闇司祭の奇跡の気配を感じるんだよね。モノフェーズ男爵って多大な功績を上げて騎士爵から陞爵しょうしゃくした方だよね?」
 隣接する畑の土を弄りつつメフィリアはそう指摘する。
「そう聞いている」
「多大な功績で得た領地がこれ?嫌がらせか何かなのかな?」
 メフィリアの声にはやや怒気が混じっている。
「手持ちの知識を洗ってみてもこの土地は王家直轄領だった。そこを割譲された形になるはずだから、そんな曰く付きの土地を割譲するとしたら…..」
 凡庸な王と聞くが、直轄領の実態すら理解できない程度の王なのかも知れないな……。そうなるとこの土地を推した誰かはモノフェーズ男爵に個人的な恨みからここを押し付けた?歴史の長い貴族の多くは特権が当たり前で幼稚な自尊心に凝り固まっているのが多いから、大方些細な行動が恨みを買ったとかなのかもしれないな。

「よし!決めた。」
 メフィリアは立ち上がり祈りをはじめる。膨大な神気が周囲を覆う。
「豊穣の女神テレーザよ。この痩せこけた大地に大いなる奇跡を。約束された豊穣プロミス・ハーベスト
 神気が領地全体に行渡る。相変わらず規格外な俺の元女神様だ。
「これで数年は大収穫は間違いないかな。その後は徐々に収穫が落ちてくるけど、その後は当事者達の努力に期待しましょう」
 問題は収穫まで領民が持つかどうかなんだよな。そのための今回の依頼なんだろうが….。
 俺の錬金術で資金援助でもするか。
「我は綴る。創成。第15階梯。奥義。創の位。物質、真理、理解、創造、創成、重量、制約、発動。物質創成インテグレート
 右手が宙に真語を綴り詠唱が完成すると足元に約40センチ四方の黄金に輝く物体が鎮座していた。
「これ何?」
 メフィリアが指さして問う。
「俺の錬金術だな。純度100%の約1トンの金塊だ。売れば….今の相場だと4480万ガルドくらいか?これで当面の資金に……」
「我は綴る。第14階梯。解の位。物体、微塵、発動。分解消去ディスインテグレイト
 俺の説明が終わる前にメフィリアの魔法が完成し、金塊は塵となって消え去った。
「!?」
「ダメに決まってるでしょ」
「いや、お金は大事だぞ」

 俺を見上げるメフィリアが地面を指差して言う。
「ヴァルザス。正座」
「え?なんで?」
「正座」
 なぜか体が勝手に動く……。
「くっ言霊魔術か!だがしかしそう簡単には屈しないぞ」
 神話時代の最高の武人を甘く見るなよ!
「ヴァルザス。正座」
 にっこりと微笑む。




「はい」
 どうやら転生の際に最高の武人としての矜持は捨ててしまったらしい。
「いいですか。(以下略」
 その後農道で、如何にも武人といった大柄の男が身長140センチにも満たない少女に正座させられて半刻ほどお説教されていたと噂になったらしい。死にたい。


 説教後は順調な行程で夕刻の閉門前には商都ウィンダリアに入れた。しかしでかい。この都市ひとつで小国並みあり、街の反対に行くまでに徒歩だと2日前後かかる。8つの市壁で区画割してあり我々が居る場所は西側のメインの市壁から突き出す形で存在する旅人向け区画だ。魔導輸送機マギ・キャリア駐騎場と宿屋、冒険者ギルドの出張所、飲食街と歓楽街がある。半径5キロと小さな都市国家の規模だ。ほとんどの建造物が1000年ほど前に滅びた魔導機器文明時代の当時のものを利用している。
「みんなお疲れ。今夜はここで宿を取って明朝から中央にあるマネイナ商会に向かう」
「ワシは鍛冶ギルドに顔を出したいから明日は単独で行動させてもらうぞ」
 バルドなら1人でも安全だろうしいいか。了承する。
 時間がちょっと遅かった事もあり、中程度の宿の5人部屋しか確保できなかった。併設された食事処で夕飯を済ませる。流石に世界中のものが集まると豪語するだけのことはあり中原では珍しいパスタ料理などもあるし、パンだけ見ても質も種類も多い。何より価格が安い。他では見ない、食べ放題&セルフ方式というスタイルも面白い。ついつい食べ過ぎてしまった。

 巨大都市全体を賄う事が出来る上水網のと魔導機器のお陰で公衆浴場も多い。
 風呂で汗も流し女性陣が出てくるのを待っているとあたりが騒がしくなってきた。魔法の明かりが等間隔に配置されていて路上はそれなりに明るい。かなり先の方だが悲鳴が上がり人のようなモノが宙に舞った。



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